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1話:調停スタート・どんな事を言われても冷静に・・・なんて無理でした。

結婚するのは勢いでできるけれど、離婚するのはかなり体力がいる。
身体的な体力は勿論。金銭面での体力も必要になる。
これから離婚をしようとしている人は、少なからず金銭の援助をしてくれる人を探しておいた方がいい。
私が行なった調停の方法は、あまり褒められた物ではないってことを最初に言っておく。

私は離婚をするために協議離婚という選択は初めから無かった。
協議離婚を行おうとして、明らかに向こうが有利に進むことが目に見えて分かっていた。

実は、元夫は実家がある市の市議会議員と縁がある。昔通っていた武道教室の会長なんだとか。

そこで私は考えた。

協議離婚で、その市議会議員がしゃしゃり出て来る可能性があるのなら
始めから選択しない方が良い。

であるなら、私が行うべき離婚に向けての戦いの場は調停離婚という場だった。
調停離婚でも市議会議員が絡んでくるのは予想がつく。
しかし、当事者と調停委員という全く関係ない人たちが間に入って話し合いを進めてくれる。
たとえ弁護士が加入してきても私の希望が通る可能性がある。
こう見えてディベートは得意分野で会社でも重宝されてきたのだ。

 最終目的だけ果たさればいい。そのための準備を少しずつ始めた。

私は離婚調停を申し立てる前に【法テラス】にお世話になった。
ここでは弁護士さんと直接話が出来るだけでなく、料金がかからないという私の様な金銭体力が無い人たちに大きな味方だ。
何回でも相談できるので、対策を練るのに大いに助かった。
多分、ここに通っていなかったら私は調停で最終目的も果たせなかったと思う。
ある程度準備ができたら、実際に裁判所に調停申立書を提出しに行った

離婚調停は申立書という必要書類を記入して、返信用の切手・申立手数料の印紙があれば数刻で終わる。
しかも、裁判所の中で全て事足りてしまうので『申立します!』っていうと、『はい、これ書いて〜』『はい、これ買ってきて〜』って感じで手続きが終わってしまう。
とんとん拍子で進んでしまうので、正直拍子抜けしてしまった。

でも、私は調停申立書を作成するのに時間がかかってしまい、半日かかった。
調停申し立てには、なぜ離婚したいのか理由を書く欄がある。
簡単に丸をつけていくだけなので、複数あっても構わないのだけど、自分が許せない・嫌だと思う事を丸つけていく。
ここまでは簡単だった。
養育費も算定表を参考にして、記入をして関係解消したい事を、書いていけば良い訳だったから。

でも一番大変だったのは、付属書類だった。
私のように不貞行為ではない場合、白黒付けにくいから調停委員も判断がしにくいと言われた。
なので、私はこれまで元夫や義家族にやられた事を日記に書いていたので、それを参考に付属書類を書き上げようと記帳室で黙々と作成していたんだけど…。
書いていううちに悔しさや悲しさが込み上げてきて裁判所の記帳室隅で声を殺して泣いた。
そんなこともあり、半日潰してしまったのだった。

時間はかかってメンタルも追い打ちを喰らったけど、申立は完了。

調停を申し立てると、相手にその事が伝わる。
手紙が裁判所から行くことで、調停を起こされたんだと、相手は初めて知ることになる。
実際に裁判所に呼ばれるのは申し立てをしてから1ヶ月くらい。
その間は準備期間になる。
申し立てをする前に相談した【法テラス】の弁護士さんは
『調停では弁護士を連れていくことはあまり無いこと。だから弁護士は連れて行かなくていいと思う』
と言われていたので、調停に必要な資料の作成を行なってその日を待った。

調停当日。
私は早めに裁判所についた。
そこで見たのは元夫は、両親と弁護士を3人連れて、裁判所に来ている姿だった。
その様子を見て【法テラス】の相談に乗ってくれた弁護士さんの言葉を思い出した。

『調停で弁護士を連れていくのは、あまりない。だから弁護士は連れて行かなくていいと思う。ただ、相手方はおそらく弁護士を連れてくると思いますよ。自分達が行なっていた行為が正当性である事を押し通すために。』

望むところだ。
どうせ、自分の言葉で戦う自信がないから連れてきたんだ。
自分の言葉を使って調停に挑んでしまうと、自分がモラハラである事が調停委員にばれてしまうから。
そして、自分達がいかに正当であることを調停委員に植え付け、私の希望を跳ね除ける為だろう。

「情けない男・・・」

私は、誰にも聞こえない様にポツリとつぶやいた後、控え室に行く為、元夫達の横を通り過ぎた。

調停申立書にはアレコレ書いているが、これも相談した弁護士さんの作戦をそのまま流用したものだ。

本当の目的は2つ。

1つ目は養育費。
申立書には6万円を希望すると記入した。
しかし、養育費算定表を見ると4万円が一番最低ライン。
元夫は4万円も出すわけがないと、わかっていた。
おそらく支払わないと言ってくるだろう。そんな事はさせない。
どんなに金額が安くても、娘が将来学びたい事がある時の学費にしたい。最低ラインでも1万円は支払ってもらえないと困る。

2つ目は、娘の親権を私にする事。元夫に娘を預けて育ててもらう事も有りだと思った。
一番気にかかるのは食事。
調べたところだとスーパーの惣菜を買ってくるかケータリングを多く利用している事。
レトルト食品は毎日の様に使っているし、インスタント麺を食べない日は無いと報告を受けていた。
マトモに食事が作れない家庭に安心して預ける事は出来ないと判断したからだ。

そして、前にも書いているけれど、元夫が弁護士を連れてくることは分かっていた。
これは調べさせたわけではない。
今までの行動パターンを考えればわかる事。
元夫の家庭は、物事を大きくするのが大好きな人達の集まりだ。
実母の噂話にしても婚姻生活で起こったイザコザを思い出すと、
自分が言われた事・やられた事に対して話を盛りに盛って、自分達がいかに被害を受けているかを周りに訴えるのが上手い。
だから依頼した弁護士にも自分達が有利になる様にしか話をしていない筈と読んでいた。
私は考えられる相手方の要求を考えて、それに対しての反論の材料を何パターンも予想して用意してきた。

何を言われても、落ち着いて冷静に受け答えをする事。弁護士さんにコレも教わった事だ。

調停の場に呼ばれ、恭しく挨拶をした。挨拶後は再度控えの間に戻る。

最初は申し立てをした私ではなくて、相手が私の書いた申立書を参考に話を聞いていくからだ。
調停委員がお互いの言葉を伝えて交渉していく。それが調停の場になる。

「お待たせしました、次にお話を伺います。どうぞ部屋にお越しください。」
「はい。」

部屋に入って浅く腰をかける。
背筋を伸ばして深呼吸をして、調停委員さんに向き直る。

さぁ、なんて言ってきたのな・・・。

調停委員さんは、さっき聞いた事をまとめた用紙を見返してコソコソ話をしている。
どうしよう。
もしかしたら私にとって、かなり不利になっているのかも。
緊張で私の体が強張る。息が浅くなっていくのが分かった。
一人の調停委員さんが、私の方をチラリと見て

「先ほど相手方のお話を伺いました。ええと、なんというか・・・。申立書にあった事は事実ではなくて、モラハラを受けたのは相手方様の方と仰ってまして・・・。」
「は、はあああああああああ!?」

冷静とはどこに行ってしまったのでしょうか。
考えてもしなかった展開に弁護士さんがくれたアドバイスはあっという間に、すっ飛んでしまったのでした。


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