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3話:調停はとんでもない方向へ・・・。

調停1日目は、お互いの要求をただ話すだけで終わってしまった。
本当は、養育費とか娘の親権の事を話す予定だったのに・・・。
長くなりそうだなぁ、離婚調停。
長くなると、半年とか一年とかかかるって書いてあったなぁ。
深いため息をつきながら、今回の調停で話した時のメモに目を落とす。

次の調停の時には、慰謝料の請求が話の争点だと思った。
養育費とか親権とか、話できそうにないな。
時間ばっかりかけて、こっちの体力削っていくのが目的っぽいし。
今後の対策を練って、次に繋げていこう。
絶対、娘の親権は私が取るんだ!
小さくガッツポーズをして、娘を迎えに向かった。

「あの、婚姻費用ってどうしていますか?」
再度、法テラスの相談員である弁護士さんに聞かれた。
「婚姻費用・・・?何ですそれ」
私の返答に、弁護士さんが『あ、知らなかったのか』って顔をする。
「婚姻費用は衣食住の費用のほか,出産費,医療費,未成熟子の養育費,教育費,相当の交際費などのおよそ夫婦が生活していくために必要な費用が含まれると考えられているんですよ。」
「・・・へえ、そうなんですね」
「ちなみに、あなたは仕事をしていないので旦那さんが婚姻費用を全額負担するんですよ。そういった費用って頂いてませんか?」
「全くないですね。」
私の答えに、『うーん』と弁護士さんが私が作成した資料を見ながら
「ちょっと養育費とか親権の前に、婚姻費用の支払いについて話した方がいいかも知れませんね。」
「え・・・。」
私は弁護士さんの言葉に、嫌な顔をしてしまった。
弁護士さんは私の頭の中を見ているかのように
「・・・今、嫌だなって思いましたね」
「すみません。時間がかかるし、正直どうでもいいかなって思ってしまいました。」
こないだは、私がモラハラをしてのだからと慰謝料を請求してきた。それに対して家計簿やら資料を参考にしながら反論をしたら、話し合いがストップしてしまった事を弁護士さんに話した。
「なるほど。でも、あちらが慰謝料と言ってきたのであれば・・・婚姻費用に関して請求してくるとは思わないかも知れないですよ。あちら側に牽制かける意味でも言ってみましょう。」
「・・・そうですね・・・婚姻費用に関しても意見してみます。」
私が渋々弁護士さんの意見を、メモに書き込んでいるのを見ながら
「もう時間が無くなって来てしまったので、これで今日は最後になりますが・・・おそらくなんですけど、この調停は2回で終わると思っています。解決までに1ヶ月追加でかかってしまいますが、悔いの残らないように話し合いを進めた方がいいですよ。」
「え?そんなに早く解決するものですか?」
弁護士さんは、大きく頷いて
「ええ。今回のケースは旦那さん側がかなり不利になっています。親権に関しては
あなたが取ることになると思いますよ。頑張って下さい。」

調停2回目。
今回は私の方が先に呼び出しをされた。前回、相手方の話で終わってしまったからなんだろう。
「前回のお話では、相手方があなたに慰謝料請求をされていたんですが。あなたから、婚姻時にかなりの金額を負担している事もあり、請求を取り下げるそうです。」
「あ、そうですか・・・。」
まあ、こちらも払う気なんて無かったしね。サッサと引き下がってくれて良かった。
「では、私の方も相手方に請求があるんですが、宜しいですか?」
調停委員さんが、私の方を見た。
「どうぞ。前回は全くお話が聞けませんでしたから。」
深呼吸をして、弁護士さんと話をして来た内容を書いたメモを参考にしながら
感情を出さないように、落ち着いて言葉を紡いでいった。
「今回、調停中とはいえ婚姻費用の請求を相手方に行いたいんです。あと、娘の児童手当が相手方の銀行に、振り込まれているはずなんですが。養育していない方に振り込まれているのが正直納得いかないっていうか。」
「そうですね。お仕事されてないですよね。今現在は?」
「今も就職活動中ですね。母と姉に援助してもらっているんですけど・・・。無理ですかね。」
調停委員さんが資料を確認している。
「婚姻費用は相手方が全額負担する事になりますね。相手方さんにもお話ししてみますね。」
「お願いします、あと、児童手当の件も」
「それに関しては、市に手続きをして下さい。支給された分に関しては難しいと思いますよ。」
「そうなんですか?」
私の問いかけに、男性の調停委員さんが
「児童手当に関しては離婚協議中の場合、児童と同居している方が優先となるんですけど・・手続きの遅れで支給をし直してくれるとは、聞いたことがないので・・・。」
「ああ、そうですか」
まあ、児童手当に関してはダメもとで言ってみただけだし。
もう、消えてしまっているでしょうね。
「他に、何かありますか?」
「前回話をしたことなんですけど、彼に投資をしたという3千万ですが。あれは父の生命保険なんです。慰謝料の請求はそちらが取り下げると言っても、こちら側は取下げる事できませんので、支払いに関してどうして言っていただけるのか確認して下さい。」
婚姻費用と言われて仕舞えばそれまでなのだけど。
あくまで、父の生命保険を食い潰されたと思うのは当然だ。
元夫が通勤に使っているバイクも、あれは父の生命保険が入っている通帳から勝手に引き出して購入している。
このバイクの購入金額だけでも取り返したい。
「あ、できれば一括で返して欲しいと伝えて下さい。」
分割で返金してもらったところで、途中で振り込まれなくなるのが目に見えている。
「わかりました。では相手方にお伝えしますので、控え室でお待ちください。」

控え室で待っていると前回同様、義母の怒鳴り声が聞こえてくる。
・・毎回毎回、恥ずかしくないのか。あの人たちは。
多分、バイクの代金請求するなら、やっぱり慰謝料支払って言ってくるんだろうなぁ・・・。

本当に後1回で、調停終わるのか?

「相手方が、バイクの金額は全額一括でお返しするそうです。その件も調停調書に記載しますね。」
あれ・・・。何だか拍子抜け。
絶対、支払わないって言ってくると思ったのに。
「児童手当に関しては、受け取ってしまっているので市に返金しますとのことでしたので、後ほど市に申請を行って下さい。」
「ああ、そうですか。わかりました」

何だか、嫌な予感がする。
こんなにアッサリ引き下がるなんて、何かある。

「そこで、相手方が要求して来たことがございますのでお伝えしますね」
調停委員さんがメモに目を落とす。
「請求したものを取下げる代わりに、娘さんの親権を要求したいとのことです。
娘さんと同居をする事・その場合の養育費を貴方に請求したいとの事でした。」


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