見出し画像

5話:最終局面…?

首や腕を引っ掻かれ流血したあの日は、多分自分も興奮状態だったんだと思う。
痛みは感じなかったし、何より家に帰って普通に夕飯の支度ができたから。
(家族はすごいドン引きしていたけどね)

次の日。
首=腫れて色変わる。
腕=腫れて熱持ってる。
そして、そのせいか発熱。

3日間寝込みました・・・。
義妹・絶対許さん。
昔から可愛がってくれる近所のおばさんには、「どうしたのそれ!」って
聞かれたけど「でかい猫にやられた」と誤魔化した。

裁判でも同じなのだけど、調停中は相手を悪く言う事・そして喧嘩を売る事
喧嘩を買うことをしないように、弁護士さんからアドバイスを受けていたので
私は調停が終わるまでは、今現在調停中だと言う事は勿論。
どこで聞かれているのか分からないから、元夫や義家族の悪口は言わないように
心がけていた。(今はSNSなんてもってのほか)

熱に浮かされた3日間を過ごした後は、前回同様に法テラスで
今度の相談をしに行った。
私の姿を見るなり弁護士さんは
「・・・いやぁ・・・やられましたねぇ・・・」
としか、言えなかった。
「まあ、でかい猫にやられたと思ってます。」
「あの日、実は違う事件で裁判所にいたんですけど大騒ぎでしたもんね。大丈夫じゃ無いでしょうが、大丈夫ですか?」
「はらわた煮えくり帰って、気持ちが悪くなってます。何とかあいつらをギャフンと言わせたいです!」
私の言葉に今まで堅っ苦しい雰囲気で話をしていた弁護士さんが吹き出した。
「そうですね。ギャフンと言わせましょう。」

調停3日目
前回怪我をしたけれど、調停の日程変更はしなかった。
熱を出したのも3日間で済んだし、傷も・・・少し目立っていたけど調停の日までには治っていたので。
調停室に呼ばれてすぐに
「前回は大変でしたね。大丈夫でしたか?」
「大丈夫かと言われれば、大丈夫ではなかったですが。」
今日、この場が最後に戦いの場になる。
「その事も含めて、早速お話に移りましょう。娘も一緒なので。」

弁護士さんから、今回の調停は3回で終わると言われていた。
そのために娘を連れてきたのだ。
多分、相手方は請求した事を全て撤回しなくてはいけないだろう。
何故なら裁判では無いけれど、調停期間中に私に損害を与えた。
このことで、元夫は調停委員さんの心証が悪い。
たとえ中立の立場であっても、人間だ。
審判に少しでも左右する。
私が望んでいる騒ぎではなかったけど、私に取っては追い風になった。
この3回目で一気にカタをつけてやる!

「前回の調停後に起きた騒ぎに関してですが、もし相手方がその事を気にされているようなら、診療代と帰りのタクシー代、そして娘の一時保育が延長になってしまったので、その支払いをお願いします。」
私の言葉に調停委員さんが、少し驚いた様子で
「それだけでいいんですか?」
「はい。彼女の行動は今回の調停に関係はありませんから。」
別で制裁喰らわせるからね。
「では、前回のお話なんですが・・・。婚姻費用に関して支払いをするとの事と、娘さんの親権は貴方に譲ると言っていました。」
「わかりました。」
冷静に受け答えしているようで、心の中では『いよおっし!!』とガッツポーズをしていた。目的の一つは達成できた。
さあ、残りは養育費だけなんだけど。
「で、養育費に関してなんですけど。相手方が月額4万円は出せないって仰ってまして。」
・・・・は?
やばい、頭痛がしてきた。
「どう言う事ですかね。算訂表を確認して、今現在の給与で4万円は支払えると判断しているんですけど。」
「今就業している仕事はいずれ辞めてしまった時、またコンビニのアルバイトに戻る可能性がある為と仰ってますね。」
何だ、その理由…。
「今後一切、娘さんに面会しないし、貴方達に干渉しないので支払い自体を行いたくないって仰ってるんです。」
「それって法律的に認められてるんですか?」
「結論として、養育費の支払いは法律上の義務です。なので認められませんよってお伝えしてるんですけど」

離婚した後、子どもの監護教育をしない親(この場合元夫)は、収入に応じて、子どもの監護教育ををする親(この場合、私)に対して、子どもの監護費用の分担として、子どもの養育費を支払う法律上の義務があるのは、図書館だったり法テラスの弁護士さんにも言われた。

始めは私も『受け取りたくない』って相談してる弁護士さん達に言った。
でも。『それは娘さんの権利なんだよ』って言われて。
確かに、私一人じゃ娘の教育費を賄えない時期が絶対来る。
特殊な学校に進みたいと言われたらそれまでだ。
1万円でも良いから、養育費を支払って貰おうって決めていたんだけど。

なんだろう。
コンビニバイトになるから払えないとか…逃れる気満々なのが、無性に腹が立つ!

「じゃあまず、養育費は義務だという事をお伝え頂いて。幾らなら支払いできるのか聞いていただけますか?」

そう言って相手方に交代するために控え室に戻る。

控え室の椅子に深く腰掛け、娘を抱っこしながらデカいため息をついた。

養育費支払いを拒否するのは分かってた。分かっていたけど…!
何で、ここまで自分中心なんだ?
収入が少なくなるから支払いできないとか…。
百歩譲って金額低くして欲しいなら許せた。
種付けだけして、『カンケーねーし』って自分の責任放棄かよ!
私がイライラしてるのが伝わったのか娘がくずり始めた。
「ああ、ごめんね。もうちょっとだから。終わったらお散歩行こうね」
背中をトントンしてなだめたら、すぐに眠りについてくれた。

聞き分けが恐ろしく良いんだよなぁ…。普通赤ちゃんって大変だって聞いたんだけど。泣かないし…。
自分の置かれてる状況が、分かっているのかな。

そんな事をぼんやり考えながら、窓の外を眺めて待っていると、再度調停室に呼ばれた。

「月額5千円でしたら、支払いができると仰ってます。」

子供の小遣いかよ。
あからさまにイラッとした表情を出してしまった。

「あ、最低でも1万円ですよってお伝えしてます。渋られましたが…」

「大変申し訳ないのですが、1万円を渋る理由って聞いてますか?」

「ええ、将来的に働けなくなったら月1万円すら支払いが出来ない可能性が高いと仰ってます。」

…踏み倒す気満々じゃないか。
どうする?月5千円でもいいって伝える?向こうの意見を跳ね除けているばっかりだから、養育費に関しては条件を飲む?

月額5千円って、今だと保育園1日分しかならない。まだマシだと思うべき?

グルグル思考を巡らせている時、「ちょっといいですか?」と男性調停委員さんが私に話しかけてきた。

「最低金額の1万円で養育費を支払ってもらう事を決めたとします。将来支払いが滞る場合は調停調書を元に請求する事や差押も可能になりますよ。」

その言葉に他の調停委員さんも

「そうですね…支払いに関しての調停を申立できますから。」
「月額1万円というのは、かなり最低金額なので…正直貰っても変わらない金額ですが、1万円だけでも養育費請求はした方が良いです。」

最低金額ってめっちゃ言ってくるな。

「わかりました。月額5千円は流石に馬鹿にしてんのかって感じなので。月額1万円は譲らないってお伝え下さい。」

「じゃあ、その様にお伝えします。またお呼びしますので控え室でお待ち下さい。」

何回も立ったり座ったりで、もう帰りたかったが、今日は何故か帰してもらえない。

この日が調停の決着になるのかも知れないと、感じていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?