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デザインストラテジストの英語帳(適宜更新)

英語がやばい、英語が

あっという間にJPモルガン・チェース銀行に転職して1ヶ月が過ぎた。仕事としては早くも様々な分野で数年〜数十年先の未来を夢想するプロジェクトを複数リードすることになり、大変充実した日々を送っている。

一方で、チェース銀行のビジネス側のシニアマネジメントやCDO(最高デザイン責任者)に報告したり議論することもあり、英語のスピーキングをもう少しマネジメントレベルとも渡り合えるレベルに上げないとまずい感を感じている。文法というよりは、ビジネス向けの、洗練された単語を使わなければいけないという意味で。
アメリカに来て早3年が過ぎ、やはりオール英語の環境に浸ることで、アメリカに来た最初よりもコミュニケーション力は向上しているものの、伝わればOKの精神でmore longとかまだ平気で言ってしまうので、対マネジメント向けにはもう少し勝負できる英語を話さないといけない。

ということで、灰色ハイジさんの「デザイナーの英語帳」からインスパイアされ、本記事では自分の備忘録的に現在のデザインストラテジスト職において自分が重要だと感じたボキャブラリーを書き残していく。

最終更新: 2021年9月24日

以下、各単語は下記のような構造で私の理解を書いていきます。
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1. 英単語
2. 英英辞書翻訳(Cambridge Dictionaryより)
3. 和訳(ビジネスでよく使う意味合いで記載)
4. 個人的メモ
5. 単語を使う時・言われた時の脳内イメージ(いらすとやより)
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書きながら、私が現在いる職場では脳内イメージがぱっと直感的に浮かぶ単語をよく使っていることに気づいたので、イメージが浮かぶ単語についてはいらすとやのイメージイラストも添付します。

1. 発散させる

ideate
to think of an idea or ideas, to form an idea of a particular thing
アイデアを出す
アイデアを出したい時に、単語もideaが入ってるのでぱっと口にしやすい。とりあえず発散系のアクティビティに使っておけば間違いない。

diverge
to go in different directions from the same point, or to become different
発散する
日本ではよく使われる「発散する」はアメリカだとLet's diverge!とかあまり言わない気がする。英英訳を見ると、異なる方向に進む・迷走する、というニュアンスが出てしまうように思う。そしてideateより理論的っぽく(お堅く)聞こえるように思う。あといつもconverge(収束する)とどっちだったっけなと一瞬考えてワンテンポ間が空いてしまう。アメリカ人もどっちだっけ?と迷っていたほど。

scatter
to move apart in many directions, to throw something in different directions
とっ散らかす
ワークショップで頭の中にあることをとにかく書き殴りましょう!という時。もしくは他者に報告するときにドラフトレベルで自分の頭の中にあることをまず書き出しました!と言いたい時によく使う。

2. 議論を促す

beef up
to add weight, strength, or power to (something)
強化する
ネイティブが使ってて最初意味がわからなかった言葉。牛肉のビーフは筋力という意味もあり、口語的にbeef upで "強化する" となるようだ。ビーフが脳内にぱっと浮かぶので直感的にイメージしやすいイディオム。

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iron out
solve or settle difficulties or problems
調整する、解決する、打開する
これもネイティブっぽいイディオム。アイロンでしわをのばすところから来ている。結構物理的なモノのイメージが湧いてくる単語が(私のチームでは)使われがち。

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3. 未来を思い描く

speculate
to form opinions about something without having the necessary information or facts, to make guesses
思索する
スペキュラティブデザインに触れた者としては好きな単語だけどビジネスで使う機会は少ない。英英辞書だと推測する風味が強いことが分かり、そのためかマネジメントへの報告資料なんかではちょっと使いづらいか。

probe
to search into or examine something
探査する、実験的に試行する
パイロットプロジェクトでまず試しに実践しました、感が伝わるので結構好き。器具としてのプローブや、宇宙を孤独に飛ぶ探査機のイメージと紐付くので直感的に伝わりやすい気がする。

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envision
to imagine or expect that something is a likely or desirable possibility in the future
思い描く
数ある「未来を思い描く」系の単語の中でも、英英辞書にdesirableな未来とあるため、ポジティブな未来として使いやすい。ビジョンを形にする en+vision なのがワークショップなどでも使いやすくて良い。個人的には光り輝くポジティブな未来を想像する脳内イメージで使っている。

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forecast
to judge what is likely to happen in the future, based on information you have now
予測する
「今ある情報をもとに」未来に何が起こるのか予想する、という意味で、確たるリサーチ・統計データをもとに先の未来を考えました、という意味で使うことができそう。もう少しクリエイティブな未来系プロジェクトではまず使わないどころか忌み嫌われている。使ったらああ単なる予測ね、とプロジェクトの聞こえ方が途端に陳腐化しそうで。

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predict
to say that an event or action will happen in the future:
予言する
英英辞書だとsayが入っている。未来を口に出してmanifestationするという意味では使えなくはなさそうだが、柔軟性が求められるVUCAの時代にあまり言わない感じ。

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imagine
to form or have a mental picture or idea of something:
to believe that something is probably true:
to think that something exists or is true, although in fact it is not real or true:
想像する
遠い未来を夢想するにあたり一般的に使える一方で、ビジネスではenvisionとかの方が使われる頻度は高いように思う。imagineだと想像してそれで終わり感があるからか。

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dream (v)
to imagine that you have heard, done, or seen something when you have not
夢見る
これもいま、講演や東北大学での授業では遠い未来を「夢見る力」が一番重要として推しているのだが、ビジネスではなかなか使いづらい。夢を見ているだけではなくて、最後現実の、tacticalな文脈に帰ってこなければいけないので、そういう意味でもenvisionあたりをビジネスでは多用した方が良い。

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講演や授業で伝え説いているSocial Dreaming through Design

daydream (v)
to spend time thinking pleasant thoughts about something you would prefer to be doing or something you would like to achieve in the future
空想する
ドリーム系は何か使える単語が無いかと調べている中でdaydream。英英辞書では思ったより良い意味の「空想」として定義されているが、白昼夢・妄想という感じでやはりビジネスでは使いづらいイメージ。

anticipate
to imagine or expect that something will happen
予期する、未来に備える
CDOなど、上のレベルの人たちが未来を語るときに使っていたので追加した。日本語だと「予期する」だが、英英辞書だとexpectが入っており、来たる未来を創造し、そこに対して備える、といった戦略的な意味合いが口語では付与され、結構ビジネスにおいても使われているように思う。

4. 収束させる

converge
to move toward the same point and come closer together or meet
収束させる(1つに)
1つの場所に「収束させる」イメージ。なので1つにしたい時に使いたい。2,3個に「まとめる」時は別の単語を使うか、converge into three ideasとか言ったほうが良い。発散するのdivergeと対になるが、ぱっと口をついて出にくいので下のsynthesizeとかを使いがち。日本語だと発散・収束ってよく言うけどアメリカではあまり使わない気がするのはなぜか。

affinitize
a close similarity between two things, or an attraction or sympathy for someone or something, esp. because of shared characteristics: (affinity [n]より)
似たものをまとめる(1つでも複数でも)
デザインリサーチにおいて、似た付箋をまとめる作業を「Affinity Diagram」というが、そこから動詞化したaffinitizeをアイデアの収束という文脈ではconvergeよりよく使う。そのため、まとめた結果は1つかもしれないし、複数かもしれないニュアンスが含まれる。公式な動詞ではないが、名詞affinityがデザイナーの間で口語化したもの。下の英英翻訳はaffinity (n) より。

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Affinity Diagramming / Mapping

synthesize
to put separate facts, etc. together to form a single piece of work:
統合する(1つに)
異なるものを1つにまとめる、という意味でビジネスでも使いやすい。アイデア、意見、無形のものに使うことが多いか。英英辞書では「1つにする」と書かれているので、「1つに」まとめるのか、「複数の塊に」まとめるのかで、英語では正確には単語を使い分ける必要がある。

unify
to bring separate parts of something together so that they are one:
統一する(1つに)
個人的には、synthesizeは1つにまとめようとするプロセスが、unifyは1つにまとめられた結果が強調されるイメージ。だからワークショップではさあまとめましょう!というプロセスを強調するためsynthesizeを個人的には推したい。

integrate
to mix with and join society or a group of people, often changing to suit their way of life, habits, and customs:
to combine two or more things in order to become more effective:
(大きなものを)統合する(基本的には1つに)
英英辞書を見るとintegrateもまとめる系で使ってもおかしくはない感じ。synthesizeよりも大きいもの(システム・組織)に使った方がいい気がする。

orchestrate
to plan and organize something carefully and sometimes secretly in order to achieve a desired result:
(調和をとりながら)統合する(基本的には1つに)
個人的には非常に好きな単語。オーケストラの脳内イメージと結びつき、異なるものを巧みに調和をとりながらまとめる感じが出るので、積極的に使っていきたい。イメージと結びつきやすい単語はやはり共通のイメージが持ちやすいので、アメリカのような多様な人種と働く環境ではより重要。

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harmonize
to bring ideas, feelings, or actions into agreement, or to be a pleasing combination of different parts:
調和させる(基本的には1つに)
イメージとして、今ある既存のもの・状態のところに、新しいものを入れ込んでバランスを取る、という感じ。harmonizeは異なるものが調和されてそれで終わり、orchestrateは異なるものが統合され、その結果として新たなアウトプットが生まれてくる(まさにオーケストラのように)感じがするからか、感覚としてorchestrateよりも「おとなしい」気がしてあまり使わない。日本人の感覚の「調和」とは英語は少し違う感覚。むしろorchestrateの邦訳に上記の意味を上手く与えたい。

organize
to make the necessary plans for something to happen; arrange:
to do or arrange something according to a particular system:
整理する(1つにでも複数にでも)
統合するというよりは散らかったアイデアを整理する・まとめる時に使う。要約する(summarize)とは整理の方向性が違う。

theorize
to develop a set of ideas about something:
理論化する
学会に出せるレベルの理論を構築する、みたいなレベルの時に。ビジネスではあまり出てこない。

streamline
[shape] to shape something so that it moves as easily as possible through air or water
[improve] to change something so that it works better, esp. by making it simpler
無駄を削ぎ落とす
流線型にする、から無駄を削ぎ落としてシンプルにする、という意味で、冗長なスライドやアイデア、組織に至るまで広く使える。自分のこれまでの辞書には無かったが、アメリカ人の同僚が使っていてかっこいいと思ったのでパクった。やはり脳内イメージが浮かんでくる単語は好き。

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streamlineの脳内イメージ

populate
to have a place in
集める、結集する
直訳だと(人を国などに)入植させるという意味だが、アイデアや成果物を1つの場所に集めましょう!という意味で、ネイティブがよく使っている。

articulate
to explain in words, esp. to express something clearly:
明確にする
これもアメリカ人が使ってて良いなと思った単語。曖昧な状態やぼんやりしたイメージ(まだ言葉になっていない状態)から、明確に言語化・可視化しましょう、と言いたい時に使う。ちなみにArticulating design decisionsはチェース銀行のCDOから推薦書として全員に配られたほど、デザイナー必読の一冊。(日本語:デザインの伝え方)

5. 魂を込める

embody
to have and show particular qualities or ideas; represent:
具現化する
em + bodyのような質量を感じる単語は、アイデアを具体的な形にして魂を込めるイメージが湧いてくるので大好き。物理的なモノじゃなくても、アプリとかでもいざ具現化する、形にするここぞというときに使っていきたい。

materialize
(of ideas and wishes) to become real or true:
If a person or object materializes, it appears suddenly:
実現する
マテリアライズもembodyと同じように使ってたけど、英英辞書を見ると(カタチにすることで)「実現する」の風味の方が強いことに気づいた。それだったらrealizeでいいような気がする。

crystallize
(of a substance) to turn into a crystal or crystals
結晶化させる
これも磨きに磨き上げて最後想いを結晶化させる時に、ここぞの場面で使いたい。あまり言い過ぎたらダメな単語。

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rationale (n)
the reasons or intentions for a particular set of thoughts or actions:
理論的根拠
結構今の職場ではよく求められる単語。私は理論とかを超えた「魂」と解釈している。

ethos (n)
the set of beliefs, ideas, etc. about the social behaviour and relationships of a person or group:
精神・魂
上の単語とも通じるが、デザインはプロダクトやビジョンに魂を込める仕事だと思っている。自分の直属の上司(デザインディレクター)がこの単語をよく発するのは個人的には非常に好きな部分である。NYで働いていても、魂のルフランが脳内を流れている。

6. 人を導く

ask
to speak or write to someone saying that you want them to do something, to give you something, or to allow you to do something:
お願いする
アメリカでマネージャーとなったので、人を導いていくふるまいも必要になってきた。結構ソフトスキル(話し方、肯定、ポジティブワード)がアメリカでは重要な気がするのだが、重要な単語をここではまとめておく。
askはジェネラルに立場関係なく何かやって欲しい時、仕事をお願いしたい時など、万能に使える。want to ask (人) to do-の構文。

suggest
to mention an idea, possible plan, or action for other people to consider:
(やんわりと)提案する
askよりちょっと「やってほしい度」が高まる。結構アメリカ人にどういうタイミングでどこまで言っていいのか、まだその辺の距離を測りかねている。(誰か詳しい人に教えてもらいたい)

recommend
to suggest that someone or something would be good or suitable for a particular job or purpose, or to suggest that a particular action should be done:
(割と強く)提案する
日本語だと推薦するだが、ビジネスでrecommend もしくはhighly recommendなんて人から言われたら「やれ」と同義である。

urge / push
to strongly advise or try to persuade someone to do a particular thing:
やれ
ここまで来てしまうとかなり強め(怒ってる)な印象。あまり言いたくも言われたくもない言葉である。

need / request
お願いする
一方で request (人) to do とかは一見強めに見えるが、because(理由)と共に述べられることでビジネスではよく用いられるように思う。重要なことは「〜な事情があるので、〜をしてほしい」という正当性を持って主張・お願いをすることである。別にこれはアメリカに限った話ではなく、社会人としてのコアスキルのように思うが。

6. その他 大企業に入って気をつけていること

pronouns (he/she/they)を間違えないようにする
アメリカではメールの署名などにpronouns(呼び名?)を付けるのが一般的で、男性はhe、女性はsheでは必ずしもないことがあるので、呼び名を間違えないように気を付けている。たまに会話の中で「彼らに頼もう」という話になり、誰だ彼らって?と思っていたらpronounsがtheyのメンバー(単数)だった、というのは間違えやすいので本当にやめてほしい。

それに伴い、皆を呼ぶ時に Hey guys! というのも最近はやめた方がよいというのも聞き、all, everyone, folks, team の単語を使うようにしている。

feelとthinkを間違えないようにする
最近読んだ Nonviolent Communication という、英語での誰も傷つけないコミュニケーションのための本にて、多くの気づきがあったのだが、その1つが自分の正しい状態を伝えるため、feelとthinkを間違えないようにする、というものだった。

I feel I will be busy. なんてよく言ってしまいがちだが、feelはhappyやangryなど、感情を表す形容詞が後ろに来ないといけない。この文はI think I will be busy. が正しい。feel(感じた)なのかthink(考えた)なのか、この程度の文ならどちらでも伝わるが、自分の思考・感情・状態を正しく相手に伝えるために、こうした簡単な単語から正していかないといけないと襟を正したところである。この本は非常に良い本なのでどこかでまたまとめるかもしれない。

また何か気づきがあれば、適宜追加していきます。
(そう言っておいて追加した試しはない)

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