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[Designship2020] リアリティをデザインせよ 講演後1人アフタートーク

21世紀のデザイナーに必要なのは、想像力だ

スペキュラティヴ・デザインの提唱者アンソニー・ダンとフィオナ・レイビー(以下ダン&レイビー)は最近のインタビューでそう答えている。

- 21世紀のデザイナーにとって最も大切なスキルはなんですか?

ダン&レイビーは想像力が重要な要素だと信じている。
想像力は「その他のあらゆるスキル・メソッド・アプローチ・そして物語」が湧き出てくる源だとアンソニーは語る。美的なもの、詩的なものと融合することで、想像力は全く異なる代替案や世界観に我々を導いてくれる。

「私達は、より曖昧で、ぼんやりしていて、詩的なものに興味が向いている。それらは"スキル"ではなく、おそらく感性のようなものだろう。非常に複雑で、動的な政治的・技術的アイデアと融合して使われる必要があるが。」

- So what is the most important skill for the designer of the ХХI century? Dunne & Raby believe imagination is the key factor. It is the foundation from which “a whole set of other skills, methods, approaches, and narratives can spring from,” says Anthony. Combined with aesthetics and poetics, imagination can lead to really genuinely radical alternatives. “For us, there is a shift into the more fuzzy, soft, and poetic. I would not call them ‘skills,’ but maybe sensitivities and sensibilities that need to be coupled with very complex, fast-moving political and technological ideas.”

彼らはもはや、「スペキュラティヴ」とは言っておらず、現在はパーソンズ美術大学で「Designed Realites Studio」という新たな試みを模索している。

今回、Designship2020に登壇させていただき、ダン&レイビーが模索している最新の活動、そして21世紀のデザイナーに必要な態度とは何か、という非常に大きなテーマで、NYから遠隔で講演した。

講演資料。スライドだけでも何となくわかるよう現場で使用したものから一部加筆修正。

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グラレコもたくさん描いていただきました!Miroでもたくさんコメントをいただき、ありがとうございました!

Designed Realities Studioの取り組みに関する詳細や、パーソンズ美術大学で体得したことなどについては、別の記事にも寄稿させて頂いているので、よろしければぜひこちらも。

デザインの射程は、ますます広がっていく

今回、冒頭のライゾマ齋藤精一さんのキーノートスピーチ「脱境界」の後に私の講演となったのだが、人新世、SDGs、越境力など、デザインのカンファレンスでは珍しいキーワードやトピックがいくつも共通していたのは非常に面白かった。QAセッションでもそうしたビッグワードに応えていくデザイナーのスキルについて齋藤さんと議論でき、私も多くを学ばせていただいた。

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デザインというには広義な話をしたように思うが、もはやプロダクトから体験、行動、政策、文化に至るまで、あらゆるものがデザインの射程に入ってきている、入らざるをえなくなってきていると感じている。それは21世紀に入り、モノの豊かさは充足したのに、なぜか明るい未来が見えない・・。そうした漠々とした不安感や焦燥感が、デザインに希望を求めている。そうした状況のように思える。

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アメリカでは既に、2015年にカーネギーメロン大学デザイン学部からトランジションデザインという理論が提唱され、デザインが社会システムごとよい方向へ変えていくための鍵を握る、と強く主張し、そうした超広義・学際的なデザイナーを育てる新たな理論を提唱している。

そうした状況に対し、デザイナーがどう貢献するか、何が切り口となるかはおそらく答えは単一ではないと思うが、私はその切り口の一つが想像力だと信じている。

まだ見ぬ世界や生きたい世界を個人発露、もしくは他の専門家との議論により鮮やかに想像し、それをデザインの力で、言説ではなく、具体的なカタチを伴って人に伝えたり、議論したりして、組織や社会を良い方向へ導いていける能力は、21世紀に求められるスキルであり、デザイナーが持つ唯一無二の職能であると思う。

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それでも、広義のデザインの未来は狭義のデザインにある

世界とか社会とか、めちゃくちゃでかい話をしてしまったが、そういう超マクロレベルと、人間・個人・その人の内面世界といった、超ミクロレベルを両方横断できることがこれからのデザイナーには求められてくるだろう。海外ではデザインを通した研究(Research through Design)と言われることもあったり、デザイン人類学(Design Anthropology)なんて言葉も出始めている。

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デザインという言葉の定義はどんどん広がっているし、ますますどこからどこまでがデザインなのかは不明瞭になるだろう。「XXデザイナー」と名乗る人も増えると思うが、ダン&レイビーから受け取ったことは、最終的にはデザイナーはデザインを通して、人に伝達可能なかたちで、美しく、机に並べることが求められる。「ここではなく、いまでもない」世界のイメージや、抽象的なスローガンを、(狭義の)デザインをもって具体的に可視化し伝達できることの価値は、変わることはない。それが伝えたかったことだ。

でもそれは今更あえて言うことでもない。抽象的でもやっとしたものを具体的に、見える形で伝える。それはデザイナーが元来やってきたことであり、確固としたデザインスキルを持っていれば、世界や社会レベルに接続できるタイミングがいずれ来る。だから今デザイナーの方、デザイナーを目指している方は希望を持って大丈夫だ。

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世界にヒントを与える(World Hiniting)という単語は、ダンが先日NEC未来創造会議講演でも語っていた。

そんな中、私がおそらく21世紀、生涯かけてやっていかなければいけないことは、そうした「世界を良くする」という超大きな視点でデザイナーが活躍できる「時代」を作っていくことだと思っている。政治家や、企業のトップにならないとそのレイヤーの仕事はできないなんてことはもう時代遅れにしていきたい。個人レベルでも行動できることはたくさんあると思っており、現在は日米でビジョンデザインに関する教育やプロジェクトを始めている。

言えないものも多いのだが、最近だと、東北大学工学部の高橋信先生にお声がけ頂き、トランジションデザインで工学部の未来を夢想する提案が学内グランプリを受賞し、今後、想像力で東北大の未来を変えていくプロジェクトを実現していくことになった。

令和生まれの赤ちゃんは、普通にいったら22世紀を生きることになるので、ちょっとでも良い22世紀を残してあげたい、というのが私の究極の意志であり、願いでもある。

こないだミレニアムとか言ってたのにもう気づけば21世紀も中盤に差し掛かろうとしている。22世紀の種を播くには頃合いだ。そういう時間軸で物事を見ている。
20世紀は夢があった、21世紀は夢が無かった、なんて後世語り継がれたら嫌なので、遠い遥かなる誰かのためのデザインということを、これからも考えて活動していきたいと思っている。

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今回は素晴らしい機会をいただき、本当にありがとうございました!

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