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世界のデザイン理論から

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不定期更新で最先端の世界のデザイン論を発信しています。
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記事一覧

自由のためのデザイン: アメリカの社会とUXに関する覚書

アメリカは自由の国だ。 小さい頃、大人たちからそう聞かされたものだった。 令和生まれの若者は知らないと思うが、その昔、家庭にはテレビという機械があって、アメリカ横断ウルトラクイズという特番のクイズ番組が放送されていた。「ニューヨークに行きたいかァ〜!」とアナウンサーが声高に叫び、一般参加者が知力体力時の運でクイズを勝ち進んでいき、最後は自由の女神をバックに決勝の早押しクイズを行う、そんな番組を見ていた中で、ああ、何かアメリカってすごい国なんだなぁと幼心に思った記憶がある。

【日本代表募集】 2060年・アジアの未来の平和をデザインするワークショップ

国連の政治・平和構築局(UN Political and Peacebuilding Affairs)とユネスコ(UNESCO)共催による「東北アジアにおける未来の平和」という対話セッションに、日本からのデザイナー・モデレーターとして関わっています。現在、週次で国連・ユネスコメンバー・全世界のデザイナーを繋いで企画ミーティングをしています。 今回は「2060年の東北アジアにおける我々の役割」をテーマとして、2060年(40年後!)の世界を担うことになる18-35歳の参加者を

ビューティフル・ドリーマー:パーソンズ美術大学で体得した、22世紀を「夢見る力」

本記事は、世界各地のデザインスクールを卒業したばかりのデザイナーが、その学びを振り返る、Cultibase連載「世界のデザインスクール紀行」に掲載された記事に加筆修正を加えたものです。 経済産業省STUDIO POLICY DESIGNのメンバーが運営するRADIO POLICY DESIGNにて語った、パーソンズ美術大学で学んだ内容を、写真を織り交ぜて補填しています。 ずっと「夢」を見ていたいなんて30代の社会人が言ってるのはだいぶヤバい気もするのだが、大人になるにつれ、

[Designship2020] リアリティをデザインせよ 講演後1人アフタートーク

21世紀のデザイナーに必要なのは、想像力だスペキュラティヴ・デザインの提唱者アンソニー・ダンとフィオナ・レイビー(以下ダン&レイビー)は最近のインタビューでそう答えている。 - 21世紀のデザイナーにとって最も大切なスキルはなんですか? ダン&レイビーは想像力が重要な要素だと信じている。 想像力は「その他のあらゆるスキル・メソッド・アプローチ・そして物語」が湧き出てくる源だとアンソニーは語る。美的なもの、詩的なものと融合することで、想像力は全く異なる代替案や世界観に我々を

S.Candy, C.Potter著 "DESIGN AND FUTURES" には何が書かれているのか

本記事は、カーネギーメロン大学(CMU)の准教授 Stuart Candyが2020年1月に発行した書籍「DESIGN AND FUTURES」の冒頭の方法論「未来を表に出せ!: Turning Foresight Inside Out」を筆者の解釈で読み解くものです。 DESIGN AND FUTURES: デザインと未来2010年代がデザイン思考のブームだったと言うならば、2020年代はビジョンドリブンデザインがブームになると感じている。気候変動や新型ウイルス、経済競争

デザイナーが読むDesigns for the Pluriverse - 多元的なデザインとは何か?

たげん‐てき【多元的】 [形動]物事の要素・根源がいくつもあるさま。「多元的な考え方」⇔一元的。 筆者も参加するデザインリサーチ学会において、2019年4月、SIG Pluriversal Designという専門フォーラムが立ち上がり、にわかに最新のデザインリサーチ界隈ではPluriverse(多元宇宙)という言葉の盛り上がりを感じてきたので、まだ日本ではほぼ語られていないデザイン論ではあるが、本記事でお伝えしたいと思う。 ここで言うPluriversal Designと

トランジションデザインの実践: 京都から2050年の生きがいを夢想する(その2)

まだ世界でも実践例の少ない、文化をデザインするトランジションデザインのケーススタディについて、その1では背景と理論についてお伝えしてきましたが、本記事では前回に引き続き、実践した成果、参加型セッションの詳細、およびトランジションデザインと21世紀のデザイナーの展望をお伝えしたいと思います。 2021年追記 本プロジェクトは論文として、国際学会Design Research Societyが主催したPIVOT2020にて、日本初のトランジションデザインの事例として発表を行いま

トランジションデザインの実践: 京都から2050年の生きがいを夢想する(その1)

米カーネギーメロン大学デザイン学部が2015年に提唱した、トランジションデザインという新しいデザイン論について、本noteでは度々記事を発信してきました(文化をデザインするTransition Design その1 その2)。 この夏、京都工芸繊維大学KYOTO Design Labにて、招聘デザインリサーチャーとして活動する(関連記事その1 その2)中で、京都という歴史都市で、まだ世界でもほとんどケーススタディの無い、トランジションデザインの実践に挑戦していたので、本記事

デザインアプローチまとめ 2019

「XXデザイン」というデザイン論が増えてきたので、各アプローチの違いを自分なりに整理してみました。随時更新していきたいと思います。(最終更新日:2019/7) 各アプローチのモデル図は、典型的なプロセスを描いており、それが唯一のモデルと限定しているわけではありません。様々なアプローチやリサーチメソッドの融合や進化も日々行われており、各アプローチが変化・進化していくことを期待しています。 1. フォアキャスティング系過去〜現在を起点に未来を考えるアプローチ。 1.1. デザ

「問いを立てるデザイン」が出てきてるけど、

どんな「問い」を立てたらいいんでしょう・・? なんて元も子もない書き出しをしてしまったこの文も「問い」だし、「なんで空は青いの?」という子供のはてなも、「どうしたら売上が上がるんだ?」という大人の課題も「問い」だ。もはや最近問い問い言いすぎてゲシュタルト崩壊起こし始めてきたレベル。問題解決から問題提起へ、と言われ始めてるけど、毎日の「晩御飯何にしよう?」の自問自答から、壮大な「死後の世界ってあるんだろうか?」の思考実験まで、世界は大小様々な問いで満ちていて、どんな問いが「良

クリティカル・デザイン思考

21世紀はシンギュラリティや地球規模の厄介な問題(Wicked Problem)に我々は直面することになり、今とは全く異なる生き方・考え方が求められる世紀になる。今目の前に見えている問題に近視眼的に応急処置するのではなく、来る22世紀を荒廃したディストピアにしないために、将来の社会や人間のビジョンを思い描く力が必要だ。 そのような思いからパーソンズに来て、まさにここではデザイン思考などの体系立った授業はほとんどなく、Critical Design, Strategic Fo

21世紀のためのデザイン

本記事は、パーソンズ x コロンビア大共催による、オムニバス式名物講座 "Design For This Century" の内容をダイジェストでお届けするものです。 「ようやく」と言うべきか、「あっという間」と言うべきか、アメリカに来て最初のタームが無事終了したので、冬休みの間に学んだことや自分の新しいデザインの「レンズ」を、忘れないうちに書き留めておきたい。 この記事では今学期の授業の一つ「Design For This Century」の内容をかいつまんでお届けする

ダークマターと、「死を赦す」デザイン

今回の記事は社会システムや行政サービス等の複雑系のデザイン論になるが、ロンドンのコミュニティデザインNPO: Worldwide International Global Solutions (WIGS) のディレクター Jo Harringtonと先日議論する機会があり、いくつか面白いトピックがあったので書き留めておく。 元々ロンドンのGoldsmiths Collegeで教鞭を取っていたJo ソーシャル・イマジネーションJoらが提唱しているのは、気候変動や移民問題、自

「インタラクション」とは何か? vol.1

本記事は、Human Computer Interaction(HCI)の国際学会「CHI 2017」にて、コペンハーゲン大学のHornbæk氏とアールト大学のOulasvirta氏が発表した "What Is Interaction?" を私が翻訳・独自に解釈したものです。 「インタラクション」という単語は定義されていないそう言われてみれば…と思う、2017年に発表された衝撃的なタイトルの論文をパーソンズの授業の中で読んだので、簡単に私の理解を書いておきたいと思う。 「