イチローの引退会見で笑った。

（前略）人に喜んでもらえることが一番の喜びに変わってきた。その点で、ファンの方の存在なしには、自分のエネルギーはまったく生まれないと思います。え、おかしなこと言ってます、僕？　大丈夫ですか？（会場笑）

──イチロー選手が貫いたものとは。

野球のことを愛したことだと思います。これは変わることはなかったですね。おかしなこと言ってます、僕？　大丈夫？（会場笑）

（前略）やっぱりプロ野球でそれなりに苦しんだ人間でないと、草野球を楽しめないのではないかと思うので。これからは、そんな野球をやってみたいなという思いですね。おかしなことを言ってます、僕？　大丈夫？

──イチロー選手は、何になるんですか。

何になるんだろうね。そもそもカタカナのイチローってどうなるんですかね。「元カタカナのイチロー」みたいになるんですかね。あれ、どうなんだろ。「元イチロー」って変だよね。いやイチローだし、僕。音が一朗だから。書くときどうなるのかな。どうしよっか。

記者があまりにテンプレで内容の薄い質問ばかり投げかけたあげく、イチローの頭が混乱する、という結果に……
これは笑った。ほんとうに混乱しているか、わざと煙に巻いているか。イチローは大人気ない。大人なら、お約束ね、といって頓珍漢な質問にも涙を流しながらありきたりの答えでかえしてやるものだが、イチローは、「そんなくだらない質問でいいの？」とでもいわんばかりだ。

そんな質の低いやりとりを続けてきて、さすがにダレてきたみたいで、「元カタカナのイチロー」がどうのといって自らしょうもない話へ脱線してゆく。このへんがかっこいいんじゃないかな。相手の程度を見極めて、怒るでもなく、周到に話の腰を折っていくイチロー。怪我の功名とはいえ、クレバーでおもしろい、これこそイチロー！という姿が見られてよかった。