もりのなか【超短編小説】
はじめは、なんにもなかった。風も水も太陽の光も、なんにもなかったが、あるとき、小さなひずみがうまれ、それがだんだん大きくなっていった。そのひずみから、あるとき、醤油がこぼれおちた。醤油はなんにもない空間にじわじわと広がり、やがて大きなシミをつくった。はじめにできた大きなシミは、4つの足の生き物の形をしていて、自分のからだから醤油をぽたぽた落としながら、そこらじゅうを跳んで、走り回った。生き物の体からこぼれた醤油は、魚の形となり、虫の形となり、ヒトの形となった。ヒトは、はじめの