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鰯崎友×born

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鰯崎友の個人note+WEBマガジン bornでの記事、作品をまとめました。
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#本

『線でマンガを読む』さくらももこ

『ちびまる子ちゃん』連載第1回がどんなお話だったか、覚えておられるだろうか。一学期が終わり、明日からは夏休み。学校から帰宅途中のまる子とおねえちゃんが、ひとりのおっさんと遭遇する。 『ちびまる子ちゃん』さくらももこ(集英社)1巻 P.7 子ども相手に他愛のない手品グッズを売りさばいているおっさんなのだが、完全にアウトな業界の人だ。言わずと知れた少女マンガ誌「りぼん」の、連載第1回で、こういうタイプの人間を登場させるというのが、すごい。まあふつうの少女マンガには出てこないだ

【デザインの法則】『流れとかたち』を読む ③

【デザインの法則】『流れとかたち』を読む ②

【デザインの法則】『流れとかたち』を読む ①

【半分だけひっくり返る文字】お子様の自由研究ネタに! ③

(前回までのおさらい) 紙に書かれたこの文字 図1 さかさにすると… 図2 こう。この状態で、鏡の前に立ってみましょう。 すると… 図3 鏡にはこのように、映るんですね~ ところでこれを、私は【半分だけひっくり返る文字】として紹介しましたが、ウソをついてました。図2→図3にいたる過程で、「CHOICE」だけがひっくり返って元の向きに戻ったように見えるのですが、じつはそんなことは起こっていないのです。どういうことか。 わかりやすくするために、文字を加工してみ

なんとなくフーコーを読みます。『監獄の誕生 -監視と処罰-』 第三部 第三章 ⑤

なんとなくフーコーを読みます。『監獄の誕生 -監視と処罰-』 第三部 第三章 ④

なんとなくフーコーを読みます。『監獄の誕生 -監視と処罰-』 第三部 第三章 ③

なんとなくフーコーを読みます。『監獄の誕生 -監視と処罰-』 第三部 第三章 ②

なんとなくフーコーを読みます。『監獄の誕生 -監視と処罰-』 第三部 第三章 ①

線でマンガを読む『コマツ シンヤ』

うだるような暑さのなか、『線でマンガを読む』を書こうと思って本棚を物色していると、いいものを見つけた。コマツ シンヤの『8月のソーダ水』である。ページをめくると、気温が3℃くらい下がったような気分になる。 『8月のソーダ水』 架空の街、翠曜岬を舞台とした連作短編である。主人公のまわりで起こる、ちょっと不思議な出来事を、海のにおいのする青色をふんだんに散りばめた爽やかな筆致でつづったマンガだ。季節は夏だが、今の日本のようなむっとする熱気ではない。パラソルの下で、うたたねした

線でマンガを読む『藤子・F・不二雄』

あらためて読み返してみると、とんでもないエピソードが満載なのだ。「なんでも空港」という、”近くを飛んでいるものならなんでも降りてくる”ひみつ道具を使い、鳥や蝶を集めて遊んでたところまではよかったが、なんとジャンボジェットが引き寄せられて降りてきてしまう。物語は飛行機が不時着する寸前のところで終わるが、このあとどうなっただろう。ふつうに考えれば、大事件である。 『ドラえもん』 また、オンボロ旅館を立て直すためにドラえもんとのび太が奮闘する回では、旅館に食材を買うお金がなく、

『増補 オフサイドはなぜ反則か』レビュー

まるで、地質学者のようだと思う。いや、私はべつだん地質学のことをよく知っているわけではないから、ほんとうは違うのかもしれない。でもイメージとしては、地質学をやっている。地層の断面をみて、そこに残された僅かな化石や層のズレから、ここは何万年も前には海の底だったとか、そういうことを推察する。それを、フットボールでやっているのが、この本の著者、中村敏雄なのだ。 ワールドカップ、日本は負けてしまったが、佳境を迎えた戦いを心待ちにしている方もたくさんいるかと思う。華麗なプレー、ゆずら

線でマンガを読む『古屋兎丸×荒俣宏』

古屋兎丸はマンガ家になる前には美術の教師だったそうだ。絵画の正統的な教養を有するその絵は、人体の質感を細やかに描きだす。表情に線を加えることに禁欲的な作家であり、なまめかしい身体を持つが、感情の読み取れない、人形のような、ヒトであってヒトであらざるようなキャラクターを描いてきた。古屋作品には独特の離人感がある。私の好きなのは、荒俣宏とコラボした『裸体の起源』。 「マザーの花がひらく」。トビウオたちが浮足立っている。それは新たな人が誕生することを意味している。このたびは「嘆き