マスクをかぶってキャラクターをばら撒く-『スパイダーマン:スパイダーバース』雑感

 過日、新宿のTOHOシネマズで『スパイダーマン:スパイダーバース』を鑑賞した。字幕版2Dである。アカデミー賞の長編アニメーション部門の栄冠をとった本作、どうも日本ではそれほどのヒットには恵まれていないようで、何番だったか忘れたがスクリーンはそこまで大きくない。ちなみに少し前にルカ版『サスぺリア』を観たのも同じスクリーンだったと記憶しているが、となりのスクリーンが4DX用なので時折り地鳴りのように振動が伝わってくる。なんだか不気味なので、ホラー映画を観るにはおすすめだ。

 さて、『スパイダーバース』。傑作である。以上。私はシャッポを脱ぎました。白旗もあげた。そういって終わってしまっても良い面白さだったのだが、少しばかり雑感を記したくも思う。観終えたあとになにかと考えてみたくなる。そういう種類の鑑賞体験だったからだ。
 
 とはいえ、その清新なアニメーションの素晴らしさについてはいちいち自分が語るまでもなく、もっと適任のひとがいるにも決まっているのだから、もう少し別のことに目を向けておく。以下、ストーリーの詳細に踏み込むようことはないが、主題に関わるようなセリフには言及してしまうだろうから、本作を未見で、かつネタバレを気にする向きは、読み進めるか否かについておのおの判断して欲しい。

 私のような手合いが『スパイダーバース』に触れた時に、アニメーションとしてのものすごさ(ほんとうにものすごいので必見である)とは別に興奮させられるのは、はっきりとヒップホップカルチャーに根差している点なのは、そりゃそうだ、というところである。ビギーの「Hypnotize」が流れだし、思わずシートに腰を据えたまま頭をゆらしてしまったところで姿を見せる、主人公のおじさんが若干2pac似だったりするのも楽しい。ちなみにサントラ収録のオリジナル曲ではDUCKWRTH & Shaboozey の「Start a Riot」が気に入っている。

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