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CMDB(構成管理データベース)について知っておくべきこと

今回のテーマは、当社のコア領域であるITサービスマネジメントの重要な要素の一つである、CMDB(構成管理データベース)です。

CMDBはここ数年でコンサルティングの引き合いが増え、最近参加したITサービスマネジメント関連のイベントでもホットなトピックになってきていると感じています。

一方で、CMDBはまだ十分に理解されていないことも多いので、当社の知見をもとにCMDBについて知っておくべきことをまとめます。


CMDBを理解するための7つのQ&A

本記事では、読者の方が理解を深めていただけるよう、CMDBに関する7つの質問に回答する形で進めていきたいと思います。
それでは、始めていきます。

Q1.そもそもCMDBって何?

CMDBは、「Configuration Management Database」の略であり、ITサービスの提供に必要となる構成要素(「構成アイテム」と言います)の情報を一元的に管理するデータベースです。構成アイテムの例には、サービス、アプリケーション、NW機器、クライアントPCなどが挙げられます。
CMDBは、個々の構成アイテムの属性情報だけでなく、構成アイテム間の関係性も管理します。

CMDBの基本概念

Q2.CMDBは管理台帳と何が違うの?

ITサービスマネジメントの実務で利用されている各種の管理台帳は、基本的には一部の構成アイテムの属性情報を管理するものであり、厳密な意味ではCMDBとは言えません。
CMDBと管理台帳を分けるカギになるのは「関係性の管理」です。CMDBでは、構成アイテム同士(例:サービスとサーバー)の関係性だけでなく、インシデントや変更などのチケットのレコードと構成情報を紐づけることができます。
この関係性の管理により、CMDBは、管理台帳によって可能になる「システムの視点」からの管理だけでなく、「サービスの視点」から構成情報を管理することができるようになります。

Q3.CMDBって必須なの?

ITサービスの提供において、構成管理は必須のプロセスです。一方で、(厳密な意味での)CMDBが必須になるかどうかはその「目的」に依存します
当社では、以下のような目的の実現が求められている場合には、CMDBは必須になると考えます。

  • (ITの安定運用だけでなく)より直接的にビジネスに貢献する

  • (システムの視点だけではなく)「利用者の視点」「サービスの視点」でITサービスを管理する

  • IT以外の組織も含む、複数の組織、チームで構成情報を活用する

  • ITサービスマネジメントプロセスをより高度化する

  • 構成管理のデータを活用して、継続的にサービスを改善する

Q4.CMDBがあると何が嬉しいの?

CMDBの活用により得られる利点の例として、以下が挙げられます。

  • インシデント、問題の早期解決

  • 変更に伴う障害リスクの低減(影響範囲の可視化)

  • 保有しているIT資産の可視化

  • 無駄なIT資産コストの削減

  • セキュリティ脆弱性対応の迅速化

  • ITシステムの更改の計画の精緻化

  • 改善のための様々な管理データの収集・蓄積

  • サービス視点でのIT環境の理解の向上 等

その他にも、CMDBをどのような目的で使うかによって、様々な利点を得られます
注意しなければいけないのは、CMDBを構築すればこれらの利点をすべて享受できるわけではないという点です。

Q5.CMDBには具体的にどんな活用方法があるの?

CMDBの活用方法(ユースケース)は多岐にわたります。
以下にステークホルダーごとに、代表的なユースケースを挙げてみます。

  • ユーザー(ITシステムの利用者)

    • ITシステムの障害による業務影響を早期に知る

  • 運用エンジニア

    • システムの変更を計画する際に、変更による影響を正しく評価する

    • 構成アイテムの関係性や履歴情報をもとに、トラブルシューティングや原因分析の時間を短縮する

  • 運用マネージャー、チームリーダー

    • 障害時に早期にビジネスへの影響範囲を特定し、関係する部門に状況を早期に報告する

    • 構成アイテムの障害履歴から改善アクションを特定し、継続的改善につなげる

  • サービスデスクのエージェント

    • ユーザーが利用している資産情報や他の障害情報をもとに、問合せを迅速に解決する

  • セキュリティ部門

    • 管理している構成アイテムの潜在的なリスクや脆弱性を特定する

    • セキュリティの脆弱性が検出された構成アイテムをリストアップする

  • IT企画・管理部門

    • IT資産のライフサイクルの管理を計画に基づいて実施する

    • ソフトウェアライセンス等のIT資産のコストを適切に管理する

Q6.CMDBの構築・活用は難しいの?

「CMDBプロジェクト」は他のITサービスマネジメントプロセスの導入と比較すると、非常に難しいです。ITサービスマネジメントが一般に広まってから20年以上が経っていますが、依然としてCMDBの構築がトピックとして挙がることがそのことを裏付けています。
難しい理由を挙げると数限りないのですが、代表的なものを以下に挙げます。

  • マネジメントの理解を得にくい

    • 効果が直接的に見えにくい(IT部門のためのプロジェクトと見られがち)

    • 効果が出るまでに時間がかかる

    • 自動化のためのツールの初期コストが多くかかる

  • 構築・維持に多くのコストがかかる

    • CMDBの構築だけでなく、維持にもコストがかかる

    • 自動化で実現できる範囲はまだ限定的であり、手動対応が必要

    • プロセスに欠陥があるとデータの信頼性がなくなり、短期間で陳腐化

  • 関係者(ステークホルダー)が多い

    • 関係者によって得られる利点に差があり、モチベーションがまちまち

    • 関係者毎にCMDBを利用する目的が異なり、共通認識が持ちにくい

    • 構成情報を登録・更新する部門が多岐に渡るため、統制がとりにくい

Q7.CMDBの構築・運用に成功するためには?

Q6の回答のようにCMDBの構築・導入には困難を伴いますが、多くの利点があるため、チャレンジする価値は十分にあると考えます。
当社が考えるCMDBの構築・運用に成功するためのポイントは以下の通りです。

  • 明確な目的の定義(「CMDB構築プロジェクト」にならないように)

  • フェーズド・アプローチで段階的に進める(無理せず要件を割り切る)

  • マネジメントと現場双方のコミットメントの獲得・維持

  • 関係者の十分な稼働の確保

  • データの正確性を維持するための厳格なプロセスの確立

  • 関係者向けの十分な教育とトレーニングの実施(特にプロセス)

  • ITSMツールの持つベストプラクティスの活用(例:ServiceNowのCSDM)

  • データの収集・更新を自動化するソリューションの有効活用

おわりに

いかがでしたか?
本記事の内容が、これからCMDBの活用に取り組む実践者の方の参考になれば幸いです。

当社では、今回のテーマであるCMDBの構築・活用支援を含む、ITサービスマネジメントをコアにしたコンサルティングサービスを提供しています。アドバイザリーやコンサルティングなど、皆様の組織の状況に合わせて最適なご提案が可能です。
是非お問い合わせください。

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