2015年 北海道大学 文系国語 第4問 漢文 攻略ガイド

<注意>

 これは正式な解答や、高度な知識を持った人間の解説ではありません。受験生の一人が、もう一度解く時の参考として書いたものです。これを読んだどなたかに不利益が生じても、私共は一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

 問題を閲覧したい場合は、東進の大学入試問題過去問データベースをご参照ください。


2015年度 北海道大学 文系 前期試験 国語 第4問


解答時間の目安は12〜18分。

「硯与筆墨、…」


 難しい部分がなく読みやすい文章であるため、確実に15点以上を確保したい。

<参考解答/解説>


問1


C:ここにおいて/D:あるひといはく/E:しかりといへども
→基礎的な読みの問題。共通テストレベルで頻出の読ませる単語なので落としたくはない。また、問題文において特に指定をされていないが、歴史的仮名遣いによる解答に注意すること。間違えるポイントとしては、「是」「或」の変則的な読みと「しかりと」を「しかると」としてしまうこと。

問2


ひとりじゅえうのみあいちかからざるなり
→標準的な書き下しの問題。ここで必要となる暗記事項は「独リ〜ノミ」と「不ル〜也」の2つ。「独リ〜ノミ」の送りのノミは普通述語に付するが、今回の場合主語の限定の形で用いられているため、「じゅえう」の後に付する。また、「不ル〜也」は基本事項として否定形「不〜」に「也」が接続する場合「ざるなり」と読む。「寿夭」の「夭」が一般的ではないため読みに苦戦するかもしれないが「妖怪」の「妖」のつくり部であることから推察して「よう」と読み、歴史的仮名遣いの「えう」と解答したい。

問3


なんと角の丸いものの寿命が長く、鋭いものの寿命が短いではないか。
→標準的な現代語訳の問題。ここで必要となる暗記事項は、「豈ニ〜非ズ乎」の1つ。また、「鈍キ者寿ニシテ」と「鋭キ者夭ナルニ」を対として捉えることが必要である。「豈ニ〜セン乎」が疑問反語の意味で「どうして〜」と訳されるが、下に「不」や「非」を伴うことで「なんと〜ではないか」という訳になる。傍線部Bの1文前「其為体也…」で「鈍物」と「鋭者」が筆・墨・硯の例を用いて説明されているので、形状の鋭さの度合いが表現されていることは導出できるはずである。参考までに2020年度版の赤本では「鈍者」を「尖らずずんぐりしているもの」として解答としている。

問4


此:硯のように丸く穏やかで静かなこと /彼:筆のように鋭敏でよく動き回ること
→標準的な指示内容説明の問題。ここで必要となる暗記事項は「寧ロ-A-ストモ、-B-スル無カレ」の1つ。これは「むしろ-A-しても、-B-するな」と訳され、-B-つまり「彼」より-A-つまり「此」に重きが置かれていることが分かる。前文の発言中「寿夭数也…」と後文「不能鈍〜以静為用」から「鋭くあるよりも鈍くいる方が良い」といったニュアンスが取れていれば、鈍鋭を対として取り「此」と「彼」が明確になる。よって、良いとされている「此」は「鈍」で、軽視される「彼」は「鋭」となるため、それぞれを解答欄に収まる程度に説明をすれば良い。字数としては解答用紙の問4の隣の問5を見るに、約12文字2行、つまり約25文字が目安であろう。参考解答には硯や筆のように例を挙げたが不要でも構わないだろう。参考までに2020年度版の赤本では「此」の方は「鈍重で静かなこと」として解答としている。赤本では他年度でも本文中に出てきてない熟語を使って解答することがあるが、本番の試験中に語義の誤った熟語を解答として使用してしまう可能性を考えると無理に熟語に変換する必要はないと考えるが、「彼」の方の「鋭敏」は比較的簡単に使用できるため、その反対の熟語を考えたときに「鈍重」を捻り出すことも不可能ではないとしておく。
 余談だが、初見でこの問題を解いた時に、「此」が「寿夭数也…」で「彼」が「不能鈍〜以静為用」だと勘違いした。だって傍線部Fの直前の「雖然」で接続されていて、「此」が後から来て重要視され(=結論)、「彼」が軽視される「雖然」の直前だと思ったからだ。
---追記---(2022/09/28)
 漢文において指示代名詞が後ろを指すことは不可能であるためこの間違いが間違い足るものであるとわかりました。

問5


寿命とは運命であるが、鋭くよく動く墨や筆とは違い、年を超えて用いられる硯のように尖らずに落ち着いていれば、丸く穏やかになり長生きをすることができる。(75文字)
→一般的な全体を踏まえた上での説明問題。ここで必要となる暗記事項は「是ヲ以テ」の1つ。読みが「ここをもって」であることに注意。「だから、〜」の原因理由の意味で訳す。問5の問題文にあるように「是以」で「長生きできる」ことがまとめられている。したがって問4の該当箇所を一文にまとめ、また全体を通して対比されてきた「筆・墨」と「硯」を用いて具体化し、人生論的に説明すればよい。前文に出てくる「体」と「用」の概念も取り入れて書く必要もあるだろう。つまり、「寿夭数也…」殻を要約すればある程度解答の形になる。解答の要素としては、「寿夭数也」を根拠に「寿命は運命である」という前書きが1要素、「筆之寿以日計〜硯之寿以世計」を根拠に「(墨の償却単位である月よりも長い)年単位で用いられる硯のように」という硯の性格の説明が1要素、「其為体也〜動者夭乎」を根拠に「(硯よりも)鋭敏に動く墨や筆」が1要素として計3要素を前半部とし、硯を以て「体」を説明し「尖らず動かない」ことを人の動作性質の事と捉え「尖らず落ち着いて」として1要素、同じく「用」を説明し「丸く穏やか」と人の性格として1要素として計2要素として後半部として解答を構成すればよいだろう。ちなみに「体」は本体・実体、「用」は作用(働き)の熟語として捉えるのが適し、互いに対義語となっている。これをどうやって捉え、解答に織り込むかがこの問題のキーポイントではないだろうか。参考解答では「体」「用」を硯に焦点を当てたが、硯と筆・墨の両者に焦点を当てた解答を書くには字数の制限に厳しいものがあるだろう。

<感想考察>


 比較的簡単な問題であった。ご存知の通り、北大国語の150点のうち漢文は25点満点だと推定されているので、今回の小問の各得点は、問1が各1点の計3点、問2が3点、問3が5点、問4が各3点の計6点、問5が8点で合計25点と予測する。殆どの大学が各問の点数を公表しないので過去問を解いていてもどれくらいの点数になるかわからないことが、結構不安になったりする。そんな時の参考になればいい。この各得点は東進、代ゼミ、河合、駿台の北大模試の得点からある程度平均化や問題傾向と合わせて算出したものであり、あくまでも一個人が勝手に作ったものなので、当てにしてはならない。
 毎度のことであるが、問1の読みの問題は落としてはならない。また、書き下しで読みのわからない単語が出てきても、同じ字が他の漢字の一部であったり、熟語として用いられてないか考えることが正答を出す一歩に繋がる。現代語訳は所謂"句形"の変則型から出題されることが多いので同じ字を使った別パターンの暗記も漏らしてはならない。説明問題は前後や全体を見ることで何を解答に入れる必要があるのか、解答根拠はどこなのかを正確に捉えて解答を作れば、ある程度の減点で済むだろう。
 最後になるが、北大の漢文で20点以上を取れば共通テストをひっくり返せるほどに大きく合格に近づくことは間違い無いだろう。

<参考資料>


教学社 2020年版 北海道大学文系前期日程
河合出版 らくらくマスター漢文句形と単語

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?