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子供を騙すレンタルショップの策略

これは僕が小学校高学年くらいの時の話である。

この頃になると周りの友達も子供向けの童謡や好きなアニメの歌じゃなくバンドやアイドルの曲を聴きはじめるようになり、iPodやウォークマンを買う人も出てき始めていた。
その影響もあってか僕も家だけじゃなく出かけるときも自分の好きな音楽を聴きたいと思うようになった。当時まだスマホもiPodも持っていなかったため、僕は持っていたゲーム機のPSPに自分の好きな音楽をダウンロードして聴いていた。
レンタルショップでCDを借りてきて、それをパソコンに取り込んでそこからPSPに入れていたので時間も労力もかかる。どこでも好きなところでダウンロードできるなんて夢みたいな話だった。

その頃僕は親の影響もあってL'Arc〜en〜Cielやユニコーン、BOOWYなどにハマっていた。中でもB'zを、親世代はもちろん自分の周りでも結構好きな人がいたので特によく聴いていた。

ある時、B'zの「いつかのメリークリスマス」がとても好きになりなんとかして自分のPSPに入れたいと思った。
親に頼んで車でレンタルショップまで行き、B'zのアルバムを探していたのだが、レンタルショップでよくあるバーコードのシールのせいでほとんどのCDがそのアルバムに収録されている曲が見えなくなっていた。
僕はいつかのメリークリスマスほど有名な曲なら適当にベストアルバムなんか借りておけば大体入っているだろうと考えていたため借りるCDを事前に決めておらず、スマホもないためその場で調べることもできないので最悪シングルを借りようかと思っていたその時、1枚だけ確実にいつかのメリークリスマスが入っているCDを見つけた。
そのCDは裏面全体に収録曲が並べられていたのでバーコードで隠れていなかったのである。表面を見ると英語で「S〜〜SS」と大きく書かれていた。まだ小学生で英語はほとんど勉強していなかったのでなんと書いてあるかよくわからなかった。
しかしそこで家にあったコブクロのアルバムを思い出した。そのタイトルは「オール シングルス ベスト」で、当時のコブクロのシングル曲が多数収録されたものだった。
そのシングルスという単語に大きく書かれているSから始まる単語がとても似ていた。
ということはこれもB'zのオール シングルス ベストでいつかのメリークリスマス以外にもいろいろなヒット曲が入っていると思い、そのCDを借りることにした。

CDを借りて車に乗り、早速車のプレイヤーに借りてきたB'zのアルバムを入れ、いつかのメリークリスマスをかけてみた。
再生するとおなじみのどこか寂しげなイントロが始まりギターのこれまたなんとも言い表し難い哀愁漂う前奏が流れた。なんだか思ってたより前奏が長いなと思った。すると曲調が変わり突然サビがはじまった。まだAメロにも入っていないのに。しかしそれまでにフルでいつかのメリークリスマスを聴いたことがなかったのでそういうサビから始まるタイプの曲なのかと思った。だが、そのサビもなんだか思ってたより高音でメロディーもなんか違う。というか声が小さい。
そこで隣に座っていた親が「それはカラオケバージョンなんじゃないか」と言ってきた。親は流石にテレビなどでフルで聴いたことがあるのでおかしいと気づいていた。
僕はCDが2枚組になっていてカラオケバージョンの方を入れてしまったのかと思ってケースを開いたが、やはり1枚しか入っていない。再生する曲の順番が間違っていたのかとも思ったがそれも違う。
どういうことだと思いCDジャケットを見ていると親が「それ、SONGLESSって書いてあるじゃん」と言った。
そんなことがあるのか。なんとボーカル抜きのソングレスバージョンという松本孝弘のギターのうまさを楽しむCDを借りてしまった。すぐに戻って借り直したかったが、1週間のレンタルで他のCDも何枚か借りていたため1週間いつかのメリークリスマスはおあずけだ。何かの間違いじゃないかと思って何度か聴き直したが他の曲もやはり全てボーカルが入っていない。あまりにもショックだったためせっかくレンタルしたのにパソコンに取り込みすらしなかった。

そして次の週、CDを返すためにもう一度レンタルショップに行き、事前に調べて確実に入っているとわかっていたウルトラベストというなんとも置きにいったCDを借りた。

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