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奈美悦子さんのこと

機会があったら書きたいとずっと思っていたことを書こうと思います。

私は転職歴が多くて色々な業界を覗き見してきました。で、これはとある飲食店のチェーン店の本部の仕事をしていた時の話です。

私はマスコミ取材の窓口みたいなことをしていて、雑誌やテレビの取材の対応を任されていました。当時はぐるなびや食べログなども無く、ホットペッパーがようやくオンラインになろうかという時期だったので、店の様子が媒体に出るのは本当に効果がありました。最近でもテレビに出るというので食材を何百人分用意したけど放映されなかったために無駄になったとか、いろいろ騒動になっていますが、その気持はわかります。テレビの効果って本当にすごいんです。

この仕事のおかげでたくさんのタレントさんを間近で見ることができました。

そんな中、私が忘れられないのが女優の奈美悦子さんです。

おそらくご本人は覚えておられないと思います。

とあるバラエティ番組の企画で「屋台料理の1番を決める」という内容の番組があって、私たちの店もエントリーすることになりました。屋台のセットが組まれ、そこで調理したものをタレントさんたちがそれぞれ食べにいらして、最後に1等賞を決める、という段取りです。

ほとんどのタレントさんは、皆さん気を使ってくださったのですが、奈美さんは中でもことのほか気さくに声をかけてくださって、料理もおいしいおいしいと言って笑顔で食べてくださいました。しかもカメラが止まったあとでもきちんと最後まで残さず召し上がられて、食器と箸もきちんと揃えて調理スタッフへの労いの言葉と共に返してくださいました。

今はどうかわかりませんが、当時私が見た限りでは大部分のタレントさんが収録が済んでしまうとそこで食べるのを辞めてしまうのが常でした。もちろん私たちの店の料理は高カロリーでしたし、食レポが重なっているならすべての料理を完食するわけにもいかない、仕事ですからそれはわかります。私もそこを責めるつもりはありません。

ただそれだけに奈美さんの完食と振る舞いにはとても感心したのを覚えています。私は自分が飲食店を利用するときには完食を心がけ、食後は食器を整え、会計時にごちそうさまでしたの一言を添えるようにしていますが、この習慣はこの時の奈美さんの振る舞いを手本としています。

この話には続きがあります。

この収録があった日のほんの数日後でした。奈美さんが記者会見を開き、ご自身が難病に苦しまれていることを公にしました。掌蹠膿疱症性骨関節炎。今は食事療法等でかなり快方に向かわれているとのことでしたが、この会見を開かれた当時は女優業を断念しなければならないほどの状態で毎日激痛に襲われていたといいます。数日前の収録で笑顔でコテコテの屋台食を完食していたはずなのに…。

実は奈美さんの病気が大したことなく、話題作りで記者会見を開いたのか、病気を隠して収録の現場で元気なふりをしていたのか、私にはわかりません。そう疑いたくなるほど収録時の奈美さんは朗らかだったのです。

しかし当時の奈美さんがわざわざ難病のふりをして会見を開くほど話題を欲していたとは到底思えません。おそらくご病気を押して収録に参加されていたのだと思います。すごい方です。

一方的な思い込みかもしれませんが、私は今でも彼女を尊敬しています。

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