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狙いを定めて

昔から、地図を見るのが苦手だった。とある場所の地図を、自分が今向いている方向がどこなのかを探るためにぐるぐると回していたら「地図読めない人はそうやって回すらしいよ」と友人に言われた記憶がある。

けれど、最近になって、地図がそこまで苦手に感じなくなった。地図が読めるようになるためにしたことは特にないけれど、不思議と読めるようになっていた。たぶんそれは、地図の中にある情報に、狙いを定めることができるようになったからだと思う。

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人は、3つまではすぐに視覚的に個数を数えられるらしい。一方、4つ以上となると、数える必要性が出てきたり、ぱっと出されてすぐに個数を理解することは難しいそうだ。だからこそ、漢数字も3は「三」だが4は「四」になり、ローマ数字は「Ⅲ」から「Ⅳ」になる。人間が焦点を絞れるのは3つまで、ということなのかもしれない。

そう考えてみると、私の地図の読み方も、なんだかそれと同じような感じがしてくる。昔は、地図を読むときに必要な情報以外のところも読み取っていたように思う。ここにこんなお店があるんだ、この地図はこういう色使いをするんだ…。そして、自分がわからない用語も理解しようとしていた。例えば、東西南北や○m先といった表現。言われてもすぐに理解できない情報は、その時の自分にとって大切な情報とは言えないのかもしれない。それならもうその情報は当てにしなければいいのだと気づいたのはつい最近だ。

大体、どの出口から出て、右左どちらに曲がるのかを覚えておけば、あとはその場の雰囲気でわかるようになる。地図をみるよりも、辺りを見回していた方が案外案内が出ていたりする。自分が理解できるだけの情報に絞って地図を読むと、なんとわかりやすいことだろう。

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地図を読めるようになって嬉しい気持ちと、「どうにもならん!わしゃ、どこにいるんじゃい!」となるモヤモヤがなくなって寂しい気持ちがある。地図を読むときは狙いを定めて。けれど、たまには迷って冒険もしたい。狙いを定めることができるようになったので、うまく使い分けて歩いていきたい。

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