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感じたこと、考えたことなど。
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2021年9月の記事一覧

あの日見た海の色を

 起きた時点で遅刻確定の朝を迎えた私は、重たい足取りで通学路を歩いていた。列車に乗って、私は目を閉じた。学校に行きたくない、学校に行きたくない。そう唱え続けていると、学校の最寄り駅についても足は動かず、目も開けられなかった。いや、足を動かしたくなかったし、目を開けたくなかった。学校に行って、現実を直視するのが怖くて、私はじっと座り続けていた。朝ちゃんと起きるのが難しくなって、学校に行けなくなっていたときだった。  学校の最寄り駅を過ぎてしまって、すぐに次の駅で降りる発想は浮

理不尽な力と、闘っている。

「私は生き抜くために闘っているの。 理不尽な力に屈する気なんて毛頭ない」 草凪みずほ『暁のヨナ』より引用  ふとした瞬間に、この世界はなんて生きづらいんだろうと、思ってしまうことがある。私はこの世界で生きていけるのだろうか、と。誰しもが、純粋な気持ちを持っていたのに、いつの間にかそれを忘れてしまうのは、その人のせいではなく、きっと、世界の仕組みがそうさせてしまっているからなんだと思う(そしてその仕組みが私たちの生活を便利にしている側面もあるから、なんか煮え切らない)。  

【読書記録】答えの行方は

どんなに考えても、 今は答えが出ないことがある。 時間が経たないと、 未来にならないと、 分からない答えがある。 それまでに―― 答えが運ばれてくるまでに、 僕たちは、何を考えるだろう?  これは、『答えが運ばれてくるまでに ~ A book without Answers~ 』という本の一節だ。文章は時雨沢恵一さんが、絵は黒星紅白さんが担当しており、『キノの旅』のタッグで書かれた本だ。  私はこの本を、高校受験の前によく読んでいた。勉強に集中できなくなったとき、自分の部

マッチの火を灯す時

さっき蝋燭を作った時 何かを作ってみる事がはじめてかもしれない自分に気付いた 人の世を動かす根幹のひとつを 俺は知らなかったんだ (椎名橙『それでも世界は美しい』より引用)  祖父母の家に訪れたとき、お仏壇の前にある蝋燭に火を灯すために私はマッチで火をつけた。いつもはチャッカマンで火を灯していたけれど、その日はその近くにチャッカマンやライターがなかったから、マッチを使った。自分でつけたその火を見て、私は上の言葉を思い出したのだった。    ・ ・ ・  私はずっと、マッ