明石元二郎とレーニン

2017年に中東欧史研究のティモシー・スナイダー教授が来日した際、ある時期のスターリンはナチス・ドイツよりも日本の動きを過度に警戒していたと発言したのをふと思い出した。その理由は明らかに日露戦争であるが、司馬遼太郎の『坂の上の雲』や大宅壮一の『炎は流れる』において明石元二郎とレーニンは交流していたことになっている。この説については「外務省のラスプーチン」こと佐藤優も資料的な裏付けがないと述べているように、研究者の間では否定されている。しかしながら、この問題に関して、お孫さんに当たる明石元紹氏が中央乃木會主催の講演会「近現代偉人の子孫が語る歴史秘話」の第一回において、シベリアに抑留されていた名越二荒之助の証言を紹介していた。それによると、名越は日本で偶然出会ったロシア人観光客のおばあさんと歴史の話題になった時、「私の父はレーニンや明石と仲が良かったんですよ」と聴いたことがあるそうな。真相は藪の中だが、新史料の発見を待つ他ない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?