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怪#11-1(こども)


今、思えば
怖いもの知らずで
子どもだったなぁ

テレビやネットの影響で
そんな場所に
行くだけでなく

何か起こること

話題になるようなこと

興奮すること

後先考えずに
ハプニングが
起こって欲しいと
期待して撮っていた


「噂」を聞きつけては
みんなで夜中に行き
得意になっていたんだ

そんな
僕たちの体験談を
お話ししようか


友達の博の
親父さんは
兄が二人いたんだが
子どものころに
亡くなっていた

俺たちが通っていた
小学校の横を
川が流れており
今でこそ整備されているが
親父さんたちが子供の時代は
川のほとりまで自由に下りて
釣りが出来るよう
百メーター置きに
階段すらあった

1級河川に
数えられる大きさなので
でかい鯉などが釣れたんだ

いつもは穏やかで
子どもの遊び場でもあったが
ひとたび台風が来ると
上流にダムがあることも
重なって
放水されると
急激に水かさが増し
危険水位になることも
通例だったらしい

当時、博の親父さんは就学前
上の二人の兄ちゃんは
小学2~3年ぐらい

小学校の川向かい
要するに
川を隔てて
対岸の川っぺりに家があった

墓石屋の商売をしており
店先の両脇には狛犬のように
名前が彫られていない
納骨堂が見本として
ドーンと置かれていた

その日は台風一過で
雨は止んでいた

でも、川の水量は
ダムの放水直後で
道路の高さまで
わずか1mほどに増していた

商売で忙しい両親に変わり
いつも、楽しい遊び場として
馴染んだ場所への
気安さ、油断
子どもならではの
危機感のなさが災いし

珍しさも手伝った

慣れた階段をしたに下り
数段で触れるとこまで
来ている水


いつものように・・・・


それっきり

長男は居なくなりました


探しても
目撃者もいませんでした

のどかな田舎で起きた
行方不明事件

誘拐など、あらゆる
可能性を考慮して
警察だけでなく
地元の消防団
青年団、父兄会
手を尽くしても
わかりませんでした

悲観にくれた町は
全体が暗雲に覆われたように
静まりかえった

数日後
数十キロ離れた
川が海に流れ出る
河口付近で
子供らしき亡骸が
橋脚に引っかかっていると
一報が入り

微かに留めた着衣から
長男だと判明

町の悲しみは
頂点に達しました

これを教訓に
川への危険教育が
為されたのは
言うまでもありません

そして
幼子をなくした両親には
大きな同情が集まりました


しかし時間というものは
諸刃の剣です

被害者家族と
人々から
悲しみを癒す働きが
あります



同時に危機感も
薄れさせていきました

加えて
長年親しまれてきた
川での釣りや遊戯は
簡単に滅することはなく
しばらくすると
またぞろ、ぼちぼち
人が集まりだしたのです

ところが

今年の梅雨時期
あってはならないことが
再び繰り返されて
しまったのです

次男の姿が消えました

梅雨の豪雨後
ダムの放水
急激な水位の上昇
嫌な符号が
揃いすぎています


今回は初めから
河口付近から遡るように
捜索が始まり

案の定、ほどなく
次男は発見されましたが
今度は、両親へ
非難が集中しました

同じような状況で
我が子が二人も
続けて亡くなったこと
に対して
「ほったらかし」を
責められたのです


非難の視線に
耐え切れなくなり
商売をたたみ
隣町に引っ越しました

当初は一斉に
攻め立てていた人々でしたが
少し時間がたつと
おかしな噂が
囁かれ始めたのです

墓石屋という
商売のせいで
「陰」の気が集まり
幼い子供に

当たったのだ・・・と



毎日の重ねから私なりの 「思い」を綴っております 少しでも「あなたの」琴線に 触れるものがあれば幸いです 読んで下さり、ありがとうございます