テングナイト見参!

「ヘイ、ポール。テングというジャパンのヨーカイを知っているかい?」

白衣のジョンがケースから何かを取り出しながら、背中越しにポールに問いかける。

知らない、ポールは乱雑に物が積まれたジョンの机を眺めながら返事をする。

小汚い研究室のひび割れた合成皮革のソファに腰掛け、ぬるくなった安酒を呷る。

ひさびさの再会だというのに、ひどくチープな歓迎にポールは退屈し始めていた。

不満の念を混めながらジョンに問い返す。

「それで?そのテングって何だ?」

「ヨーカイだよ、ポール。ジャパンってのは災害がよく起こるんだ。地震、洪水、山火事、タイフーン。人間の力の及ばない自然の力ってやつさ。それをヨーカイという架空の、所謂フェアリーの仕業だとして畏れ、敬ってきたんだ」

そう言いながらジョンはポールに奇怪な仮面を手渡した。

赤い顔、険しい目つき、そして長い鼻の。

内部に何か機械が組込まれているようで、ずっしりと重い。

「僕が作ったんだ。これで君もテングになれる」

「娯楽用ドラッグでもやってんのか?」

興味ないね、とジョンにテングの仮面を突き返す。

「まぁまぁ、見ててくれよ。お代わりのジン・バックがご所望だろ?」

ジョンは愉しげに声を踊らせ、テングの仮面を装着する。

そして、仮面の額にあるスイッチらしきボタンを押しながら三度唱えた。

ジン・バックをポールに持っていく。
ジン・バックをポールに持っていく。
ジン・バックをポールに持っていく。

その瞬間、テングの仮面をつけたジョンが一陣の風となって消え去った。

「おい、その仮面は…」

一体なんなんだ、そうポールが言い終えるやいなや、突如眼前に冷えたジン・バックが現れた。

得意気なジョンとともに。

「この仮面に仕込んだ装置が脳に特殊な電気を流して、人間の能力を爆発的に高めるんだ」

そして再びポールにテングの仮面を差し出し言った。

「俺たちヒーローになれるぜ!ヨーカイヒーロー・テングナイトに!」

【続く】

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