2012年6月23日「太陽と地球の関係についての新しい解釈」


 僕の友達が、太陽についてこんなことを言っていた。


 「白い透き通った人差し指を想像してほしいんだ。白く、しなやかな、傷や汚れが一つもない絹のような人差し指。爪はダイヤモンドのように輝いていて、なめるとこの世のものとは思えないほどおいしい果物の味がする。人差し指をたどっていくと白い腕、白い肩、そして腕のいい彫刻家が100人ほど集まっても作れやしないほど美しい造型をした顔がそこにはある。彼女はもう一方の腕で頬杖をついて、かすかに微笑みながら人差し指をかざしている。彼女は椅子に座って、古びた机の上に置かれた何かを眺めている。「何か」は地球儀だ。そして、よくみると彼女の白い人差し指の先には火がともっている。風に吹かれても、雨に濡れても決して消えることがない、燐と気高く燃え続ける火が。彼女はその火のともった人差し指を地球儀の周りで回転させている。ゆっくりと、同じ速度で、同じコースを、飽きることもなく、何度も何度も。僕は地球と太陽の関係はこのようなものだと思うんだ。


 …すなわち、その人差し指にともっている火が太陽で、地球儀が僕らの住んでいるこの星そのものなんだ。僕たちは女神の気だるい微笑みの中で、照らされ、はぐくまれているんだ。」

「それは何かの小説の話かい?もしそれを本気で言っているんだとしたら君は…」

「もちろんわかってる!太陽という恒星があり、地球や他の惑星がそのまわりを回っているのだということは知っているよ!ただ僕は…そういう解釈をしてみたいと思っただけなんだ。別にこれを本気で信じていて、他の人にも信じてもらおうと思っているわけじゃないんだ。」

「じゃあなんでそれを僕に話したの?」

「それは…あれだよ。君は友達だから、こういうばかばかしい話をしても、聞いてくれると思ったんだ。当たり前の雑談にも飽き飽きしたところじゃないかとも思ったしね!お気に召さなかったのなら、謝るよ。」

「謝る必要なんてないよ。すごく面白い話だった。地動説だって、地球以外の星や宇宙全てが動いていると考えてみれば天動説と変わりがないもの。君の考えだってそう間違っているともいえないよ。…それにしても女神か。君の物語で行くと、夜明けというのは女神に指をさされていく過程、ということなんだね。それはとてもロマンティックじゃないか。」

もちろんこの話は嘘だ。僕にそんな話をしてくれた友達なんて存在しない。しかし太陽と地球の関係についての、こんな解釈があってもいいのではないかと僕はおもう。

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