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2022/08/16

暑い夏の夜です。私はクーラーをガンガンに稼働させた部屋で気持ちよくソファに寝転んでいました。ダラダラとSNSを見て、それは退屈で幸せな時間でした。ふと付けっぱなしの誰も見ていないTVからハキーム君の声が聞こえました。先日の世界陸上で日本人初の男子100m決勝に残っためちゃめちゃ足の速い選手です。私も彼ほどではないけどスプリンターとして同じトラックに立っていたことがあります。走力も練習量も志も半端な私と同じ競技場に彼はいたのです。私は彼の走りを見た時に、それはもう「アレは天の才だアレは」と思ったんです。あんな天の才に僕ちゃん勝てるわけない。そう本気で思いました。

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確かにあの速さは才能の力もあるかもしれない。けれどもTVに映るハキーム君の姿を見て、その走りは天の才の一言で片付けて済む小さなもんじゃねえなと私は思いました。彼の尋常じゃない努力と志は、今の日本の陸上業界を"温室"と呼び「そんなんで世界で勝てるわけw」と切り捨てます。それはそこらの24歳の若造のビッグマウスではなく、彼は若いうちから本気で陸上と向き合い、高校を卒業して世界の猛者が集まる環境に飛び込み、温室な島国とは比べものにならない痛みと苦しみを伴う練習を猛者たちとぶつかりながら何年も積んできたからこそ、マジで切り捨てゴメンな強い言葉が出てきたんだと思います。私は彼を天才と片付けてしまったあの頃の自分を恨みました。自分とは比べ物にならない何かを天才の一言で片付けてしまうこと、それは罪です。天才と言われた相手がどう思うかなんて勝手に誰かが決めるのは疑問ですが、天才と片付けた本人はその時点で納得しその後の挑戦や成長に滞りが起きがちではないですか。私はそのタイプで、あれは天才だ、と天才にぶつかった分野は悉く停滞or挫折しています。この問題は自分に「簡単に納得するな」と言い聞かせてみるのが一つ手なんじゃないかと今は思ってます。もっと考えろ。結論を急ぐな。考えろ、待て、考えろ!あー!ちょっと納得した。ここですよね。差は。そして私はソファから起き上がって少しいつもより丁寧に歯を磨きました。


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