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【物語】ありがとう。アリスのクリスマスイブ- アリスの物語3話(タイトル変更1/9)

アリスは生命保険外交員。しゃかしゃかと動き回り、まあまあな成績を出した初年度は友人知人、そのまた知り合いなどたくさんの人との出会いがありました。

なかでも友人からの紹介だった社長は、バレンタイデーにうっかりお誘いしたものだから大きな勘違いをさせたかも。。。この微妙な関係をどうしたものか。紅葉狩り以来、つぎのビッグイベント「クリスマス」をビクビクしながら迎えるという、なんだかなーな12月を過ごしていたのです。


クリスマス1週間前、社長からLineが到着します。「もし埋まってなければ、12月24日にそっちで時間ができる。その時会社の大口の保険の相談をしたい」のだと。

アリス:え、えーと。12月24日?クリスマスイブだよ。大切な人と過ごした方が。。。

社長:「アリスと過ごす以上のイブはないよ😀」 「なんちゃって( ´∀`) 仕事絡みでその日なんだよ。だからまあ気にしないで!」


気にしないでって、そういう問題じゃないよ。。。


イブの予定は特に決めていませんでした。子どもたちは大きくなったし、一緒に過ごしたいと思う特定の人がいるわけでもありません。去年はいくつかの団体からお誘いいただいてクリスマスパーティを掛け持ち参加しましたが、今年はコロナ禍のこんな状況でどの団体もパーティーは見合わせているのかお誘いはなかったのです。


さて、どうしたものか。


紅葉狩り同様、少し考えたけど断る理由が浮かびません。

というより、なんなら仕事に繋がるなら喜んで時間を作りたい、

のが本音です。


その日がクリスマスイブでなければ。。。。。。



さんざん考えたアリス。

背に腹は変えられない。「社長のためなら埋まっていたって空けますよー」なんてリップサービスまで言ってしまいました。


はあ。だからダメなんよね👎😭

サービス精神旺盛な自分が心の底から恨めしいアリスなのです。



さて、クリスマスイブ当日。

アリスの会社に社長が現れました。

一通り保険の説明が終わると、

社長:「よし、じゃあコレで行こう!あとは会社の経理に回すから👍」

って。

アリス心の声:いや、待て待て。こんなに簡単に決めたらいかんでしょ。まずは経理とか総務とかのお偉いさんたちと相談して。。。

社長:「だいじょぶだいじょぶ。オッケーオッケー。」

アリス心の声:それ、一番あかんやつやんなー😅

社長:「そういうことだから‼️ご飯約束してるから、一緒に行くぞ‼︎」

アリス心の声:いや、それは想定外やって。

社長:「同級生紹介するよ。こっちで会社やってるから仲良くなったらいいよ。」



ん? そうなん?

それならこれは、、行くべきだよね。

でも、これは危ないやつではないか? いやそんなことはないのでは?だって紹介してくれるって。それも同級生ってことは信頼できるもんね。


えーい!もう覚悟を決めて行こう❗️もしものことがあったら、それはキッパリ断ればイイし👍


一大決心して出かけた先は、地元で超有名な酒蔵。併設されているホテルの中にあるレストランは、地元の人ぞ知るちょっとレベルの高い会食に使うお店です。

わお!!!この酒造の息子が同級生だったのか!

目をまんまるにして社長を見上げると、「グー👍」ってニッコリ。すごいしたり顔ですねんな。いつも動作が大袈裟な社長健在です。

ちょっと違和感を覚えつつも、アリスは自分を納得させました。




会食の席は、賑やかに美味しく。地酒をいただきつつよくよく吟味された和食をいただきました。仲良し同級生だけあって、楽しい会話が続きあっという間に時間が過ぎて行きました。


きちんと紹介していただき、今後もお仕事で繋がっていけそうな感触です。


なんて素敵なイブなんでしょう。


そろそろお暇の時間と、アリスは社長に心から感謝の気持ちを伝え、同級生の酒蔵の息子ともう1人建設関係の会社の社長にも心からのご挨拶をしました。


酒蔵の息子:「今日は記念にうちのスイート予約を入れたから。ゆっくり過ごしてね」

社長:「おー!!それはありがたい。酒蔵のホテルのスイートはいっかい泊まってみたいとおもっていたんだよ〜〜😀」

建設屋の社長:「うんうん、ゆっくりしてって!俺らはもう少し呑んで帰るから」

アリス:「え、いや、その。そんな。もったいない。みなさんどうぞご一緒に。。」

酒蔵の息子:「いいからいいから、遠慮しないで!こいつはこんな洒落たとこに自分で連れていくことはないだろうから。ゆっくりゆっくり。」

アリス:「わ、すみません。ありがとうございます。」


アリスは何も言えず、酒蔵の息子の調子に合わせるしか思いつきません。

社長といえば、いつもの満面のえみ。😀



酒蔵の息子にエスコートされた社長とアリス。勇足気味の社長と重い足を引づるように進むアリス。

キッパリ断ればいいと一大決心してきたけれど、今はその決心を発動するシチュエーションではないよね。今じゃないけど、きっと発動できるはず。

そう言い聞かせてエレベーターホールへ向かいました。



最上階のスイートルームは、なんと夜景の素晴らしいこと。思わずうっとり眺めていると社長がキリンのオーガニックワインを持って近づいてきました。そうそう、酒蔵の息子がキリンのオーガニックワインがオススメだって言ってたっけ。。

社長:「今日は無理言ってごめんね。付き合ってくれてありがとう。」

潮らしくそんなことを言われると、キッパリの一大決心はなかなか発動できません。でもここで発動しないでどうする。自分に言い聞かせてみるも、社長のメンツも考えるとなー。なかなか発動できません。

社長とワインで乾杯し、綺麗な夜景を眺めていると、ふとこのままでももしかしていいのかも?同級生は問題ない人たちばかりのようだし。ちょっとズレたところはあるけど悪い人ではない。仕事もしっかりやっているし。申し分ないと言えば申し分ない。いやもったいないほどかしら。


アリスが逡巡しているあいだ、社長はゆっくりと満足した様子でワインを呑んでいました。

と、次の瞬間

社長:「なんか今日は飲み過ぎたな。美味しいお酒だった。やっぱりアリスと一緒に呑むのが一番だ!」

と、そそくさとベッドに入ったかと思うと、グースカいびきをかきはじめました。


😵😵ひゃー、かみさまほとけさま、ありがとうございます。これ、帰っていいってことですよね!

そーっと飲みかけのグラスをテーブルに戻すと、そこには社長が書いたメモが。


今日はありがとう。調子を合わせてもらって感謝してるよ。急なことでごめんね。おうちに帰ってゆっくり休んで。グッナイ😘


アリスの心の声:えっ!これはどういうこと?なんだった?

とにかく帰っていいということだ。夢だったとかになる前に早く帰ろう。




翌日、社長からLineが入ってました。実は付き合ってる女性がいると豪語した手前、一緒に呑もうという誘いを断れなかったのだと。おかげで面目が立った。あとは適当に話をズラしていくから大丈夫だと。


Lineを読んだアリスは思ったのです。どこの部分が本当でどこの部分が装飾されているのかハッキリしないけれど、社長がアリスの気持ちを測り、困らないように気遣ってくれたのだと。そして今後も良い関係でいられるよう配慮してくれたのだろうと。


こうして、アリスのクリスマスイブはありがとうでいっぱいの日になったのでした。



アリスの物語2話はこちらです。


この記事はこちらの企画に参加しました。

#2020クリスマスアドベントカレンダーをつくろう特別編


今日も最後まで読んでくださりありがとうございます! これからもていねいに描きますのでまた遊びに来てくださいね。