学振の手取りと税金の話

 3度目の申請で日本学術振興会(学振)の特別研究員に採用内定されたので,税金等でいくらかかるのか計算してみた.なるべく他のブログではなく国や自治体(筆者は福岡市在住)のサイトを参照した.

(2021年10月4日 追記)
2.1のケースにおいて,学振1年目の場合は勤労学生控除が適用されることについて追記しました.

 まずは手取りの話.月額換算で手元にいくら残るのかを計算してみた.2つのパターンがあり,研究遂行費と呼ばれる経費を計上するかしないかで分かれる.経費分は課税される所得(課税所得)から引かれるので課税額が減るという仕組み.研究遂行費の上限は研究奨励金(学振からの給与と思って良い.月額20万×12か月=年額240万)の3割.3割まで行かなかったら追徴課税が課されるが,とはいえ年額数万程度だと思うので言葉の響きほど重たくはない(追徴課税って言葉は脱税のニュースぐらいでしか聞かないのでビビりがち).

1.手取りはいくら?

1.1 研究遂行費を満額計上した場合

研究奨励金(給与収入) 2,400,000円/年
所得税額(源泉徴収)*1 -32,040円/年
国民健康保険料*2 -186,800円/年
国民年金*3 -199,320円/年
住民税*4,※1 -7168円/年

手取り 1,974,672円/年(/12か月=164,556円/月)

ということで手取りは月16.5万円ほどという計算.後述するが,確定申告すれば差し引かれた税金の内いくらかは戻ってくるみたい(約3万円).

1.2 研究遂行費を一切計上しなかった場合

研究奨励金(給与収入) 2,400,000円/年
所得税額(源泉徴収)*1 -57,120円/年
国民健康保険料*2 -186,800円/年
国民年金*3 -199,320円/年
住民税*4,※1 -78,888円/年

手取り 1,877,872円/年(/12か月=156,489円/月)

ということで手取りは15.5万円ほどという計算.経費を計上できなかった分,課税所得が増えるので所得税と住民税が重くのしかかってくるという計算.とはいえ,こちらも確定申告すれば約2万円ほど戻ってくるようである.

2.確定申告したら払った税金の一部が返ってくる?

 何とかして手取りを増やせないかと思い,どれくらいの税金を取り返せるのかを簡単に計算してみた.税金は元々の給料から様々な控除*5を差し引いた課税所得という金額から計算される.

2.1 研究遂行費を満額計上した場合

 以下,全て年額計算.
収入金額 2,400,000円
研究遂行費(研究奨励金×3割) -720,000円
給与所得控除*5,※2 -800,000円
基礎控除*6 -480,000円
社会保険料控除(国民健康保険料+国民年金) -383,320円

課税所得(所得金額-控除額) 16,680円
所得税*7(課税所得×5%) 834円

つまり,本体収める必要のある所得税は834円なので,源泉徴収された所得税との差額(32,040円-834円=31,206円)が手元に戻ってくることになると思われる.

(追記1)
学振1年目であれば,収入金額は4月~12月の9か月分の給料=1,800,000円から,研究遂行費=-540,000円と給与所得控除*7=-620,000円を差し引いた所得金額が640,000円となり,75万円以下となるので勤労学生控除*8=-270,000円が適用される.そうすると課税所得はマイナスとなるので所得税は0円となり,源泉徴収された所得税全額が戻ってくる計算となる.

2.2 研究遂行費を一切計上しなかった場合

収入金額 2,400,000円
研究遂行費 0円
給与所得控除*5,※2 -800,000円
基礎控除*6 -480,000円
社会保険料控除(国民健康保険料+国民年金) -386,120円
課税所得(所得金額-控除額) 733,880円
所得税*7(課税所得×5%) 36,694円

つまり,この所得税と1.1の源泉徴収された所得税の差額(57,120円-36,694円=20,426円)が手元に戻ってくる金額になると思われる.

3. まとめ

 以上,簡単にではあるが手取りや税額がいくらになるのか計算してみた.こうしてみると,年間で2,3万円返ってくるのであれば確定申告はした方がよさそうだ.また,控除対象になる研究遂行費も積極的に使っていきたいので,研究にかかった経費の領収書等はしっかり管理していこうと思う.
 何か間違い等あればコメント等で指摘して頂けると幸いである.

参考
*1:日本学術振興会特別研究員 遵守事項および諸手続の手引
*2:福岡市 令和3年度 国民健康保険料の保険料率
  福岡市の年間保険料の試算
*3:日本年金機構
*4:福岡市 個人市民税
*5:国税庁 給与所得控除所得税法別表第五(給与収入240万円)所得税法別表第五(給与収入180万円)
*6:国税庁 基礎控除
*7:国税庁 所得税の税率
*8:国税庁 勤労学生控除

注意
※1:住民税は前年度の収入で算出されるが,ここでは前年に同じ収入があったと仮定して計算している.
※2:給与所得控除は給与収入が660万円以下の場合は別表の通りになり,240万円の場合は給与所得控除後の給与等の金額が160万円となるので80万円差し引いている.(追記分)180万円の場合は給与所得控除後の給与等の金額が118万円となるので62万円差し引いている.