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ここは何処でもない何処か。六立方メートルほどある真っ白に塗装された、何もないコンクリート部屋には少女が一人立っている。黒髪のショートボブ。整った顔に綺麗な漆黒の瞳。艶のある唇に色白の肌。黒いワンピースを着ては裸足。右手には黒のブレスレットを付けている。 「今日もパーソナリティー・ネットワークは生気溌剌でありますね」 すると突然少女は、両手で握り拳を作りながら地団駄を踏み、髪を掻きむしりながら唸り声をあげる。まるで怒濤乱舞の立ち振る舞いである。 「くっそぉぉ、むっかつく!
1 現在の時刻は午後十時。ここは三法市と呼ばれる地域。 三法市中央区にある三法大公園の中で、男性が一人息を切らして走り回っている。何かを探しているような素振りで男性は走っている。 「はぁ、はぁ。美幸、どこだ。どこにいるんだ」 男性の名前は津野田紘という。 紘が探しているのは恋人である弓川美幸であった。美幸は二週間前に行方不明となり、紘は警察に捜索願いを届けていた。紘はこの二週間、不安と戦いながら美幸の身の安全を願う日々を送っていた。今日の午後八時。二週