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リッツ・カールトンで朝食を 1.

※こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

数日前、紅茶専門店ラ・メランジェの松宮さんから「一緒に朝食を食べに行きませんかー?リッツ・カールトン」というお誘いを受けた。

この松宮さんとのお付き合いもかれこれ20年近くになる。
日本にいる時間よりも海外にいる方が長いのでは、と思う松宮さんは、お茶全般の先生でありながら京都はもちろん国内外の食やお店に精通されていて、いつも楽しいお話を聞かせてくださる食の先生のお一人。
これまでもフレンチ、イタリアン、和食、中華、カレー・・・といろんなお店へ、出不精なぼくを連れ出してくださった。

今回は初の朝食、それも天下のリッツ・カールトンさんときた。
ぼくがリッツ・カールトンさんへ行くのは、これで4度目になる。もちろん宿泊なんてしたことはない。いつも目指すはホテル内にあるピエール・エルメさんで、スタッフの誕生日ケーキやホワイトデーのお菓子を買うことが目的だった。

ピエール・エルメさんが京都にできると知ったときは、本当に嬉しかった。
ところがそれが「リッツ・カールトン内へ出店」と知ったとき、ぼくは愕然とした。

行けない・・・ぼくには敷居が高すぎて入れないじゃないか・・・

新宿にいるときならスタッフや知人にプレゼントをしたいと思えば、伊勢丹新宿店さんにピエール・エルメさんがある。
それでもぼくは少々の緊張感を伴って尻込み気味に行くのに、よりによってリッツ・カールトンさんの中って・・・せめて伊勢丹京都店さんにしてくれよ、と思ったものだった。
こういった事情からぼくは、ピエール・エルメさんがオープンしてからも噂を聞くばかりで行きたいと思いつつ行けずにいた。

スタッフの誕生日が近づいたある日、ぼくはリッツ・カールトンさんへ向かうことを決めた。もう敢然と決意したと言ってもいい。
なぜ、ぼくは尻込みをしていたリッツ・カールトンさんへ行くことにしたのか。

評判を聞いていたということもある。
でもそれ以上の理由として、スタッフの中には美味しいケーキ屋さんがあると必ず食べに行くという強者もいて、その子はぼくなんかよりも美味しいお店に詳しい。ぼくの思いつくお店で買ってきたところで恐らくそのお店のケーキは既に経験済みと考えられる。喜んでくれるだろうけれど、それではインパクトがない。
もうこうなるとぼくの頭の中では、ピエール・エルメさんしかない、という思いに駆られる。

なんてたって ”世界一のパティシエ” ”パティスリー界のピカソ” と賞賛されるピエール・エルメさんである。美味しくないわけがない。
それにいろんなお店へ行っているスタッフでもさすがにピエール・エルメさんのお菓子を口にする機会はあまりないと思われる。
やはり少々お高いということもあるし、なんせ京都のピエール・エルメさんがあるのは、あの敷居の高い天下のリッツ・カールトンさんの中なのだから。

PIERRE HERMÉ PARISと書かれた箱を見た瞬間のスタッフの表情を想像してみる。

「ピエール・エルメですか!?超すごい!大人!」

 もう行くしかない 。

つづく


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