【私情】色のない心
帰りの電車で言葉を書くのが、日課になっている
千代田線の終電車に向かう地下道
終末のような静けさと白々しさ
爆音の耳栓に頼らないと
いろんな言葉が聞こえてきそうで
大きな声を出したくなる
時について歌う歌も、時間と共に廃れていき
愛について歌う歌に、愛想を尽かされ、
毎日を表現するための心の活動が
少しずつbpmを落としていき、
ああこうして人は死ぬんだと
手に取るようにわかる
人は容易く心と口にする
まるでそれが手のひらにあるかのように
本当はそこにはないよ
いつもより自分の足音が大きく聞こえたり、
いつもより人の話が耳に入ってきたり、
いつもよりお米が美味しく食べられたり、
斜陽に揺れる小さなキクに、道で潰れたネズミに、
何かしてあげられたらと、思った時
それは急に鼻の奥、
眉間の少し下あたりに浮かび上がる
その違和感に、小さな筋肉の繊維が緊張し、
大きな筋肉は脱力し、
優しい言葉に変えたかった思いたちが、
雫となり鼻とか目とか口とかから出て、
なんとなくわかるんだよ
これが心かと
でもまたそれは
君にとっては心じゃなかったりして
それが難しいから人が愛おしく
知りたいからまたぶつかり合い
逃げて離れていくあの背中を見ながら
また明日とつぶやく
それがまた心と表現されて
なんか1人で何役も、名俳優なんだよね
僕の心はどこにあるか
あなたに預けているかもしれない
だから、他人の心無い言葉に傷付かず、
押しつぶされそうな黒い圧からするっとすり抜け、
意気揚々と階段をひとつ飛ばしで登れたりする
あなたからの優しさに触れた時
あなたに預けた心はあったかくて
鼻息を立て寝落ちる
あなたからの意地悪に晒された時
あなたに預けた心はつめたくて
周りを巻き込む氷河になる
ただそれが心地よく整ったりするサウナ的なね
好きな色が溢れる季節になっていく
僕は心にその色をあげたいと思う