あの銀河から見て
いつもより高い位置にある月
どんどんと塗り替えていく記憶と
また解けた靴紐
靴底が擦れて削れていくほど
思い出の賞味期限が近いことを悟る
最寄りから家までの帰り道
北風が寒く感じる
あんなに長かった夏も
気づけばもう終わり
好きだった居酒屋があった空き地も
新築の建物が出来上がっている
踏み潰されたカメムシと
握りつぶしたタクシーの領収書
君が眠っていた毛布
本当にここにいたのは夢かと思う
ふと考える
生き方を考え直したら
あなたみたいになれたのか
傷つけてきた人の顔だけ黒く塗りつぶし
光のある方へだけ歩いていく自分と
後方に消えていく街路樹と椿の花
秋の匂いもすぐ消えた
庇いきれないほどの自分の過ちに
よっかかりおんぶと抱っこをしてもらい
先を目指すフリをしながら
思い出をなぞる
このまま遠くに行けたら
もっと近づけるのに