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こみあげるものの理由

つかめそうで、つかめなかった。
私の身体を通して、こみあげてきたものの正体と、理由。

朝の光。ツンとした空気。昨日の雨の足跡。世界がキラキラしている。

通勤に時間をかける生活。
最後の道のりは、駅から職場までの河川敷を歩く。
「悪くないな」と思う。そして、最後の道のりは好きだ。

通勤する人たち、通学する人たち、風にゆれる草花、鳥たち。

「今日もあの人は下がり眉毛だな」
「今日はあの人とここですれ違った」
「やっぱりあの人はいつも笑顔だな」
「あ、花が変わってる、おはよう」
「鳥さん楽しそう」

ポケットに手を突っ込んで、風を感じながら、空気を肺に入れる。
吐く息とともに、体が沈む。

そうやって、全部を感じている。それが好き。
全部がいっしょに居てくれているようで。
世界は大きくて、隣にある。

泣きそうになった。何かが私の内側に現われた。
それがこみあげてくるんだけど、ただ震えと涙を誘うだけで、
理由はさっぱりわからない。

今日も世界が私を通して何かを表現しようとしている。
その流れを感じるだけでホッとする。私たちはひとりではない。


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