キライでいいもん!
キライでいいもん!
こうくんは、にんじんがだいきらい
茹でても、
煮ても、
焼いても、
かわいーくしても、
食べようとしません。
さらにさらに、
小さくしてまぜても、
ジュースにしても、
あまーいキャロットケーキでも、
ぜったいぜったい口にしません。
「せっかく作ってくれたのに」
「えいようがたらなくなるよ」
「もったいないなぁ」
いろいろいわれますが、こうくんはへっちゃらです。
「ほかのたべものでえいようをとるし、だれかにあげちゃうし、べつにたべなくったっていいもん!キライでいいんだもん!」
このちょうしです。
その夜
こうくんがお布団に入ると、
お月様の光がカーテンのあいだからまっすぐ入ってきました
まぶしくて目をこすると、
そこにはにんじんの妖精がうかんでいました。
ねぇこうくん、ぼくのこと、そんなにキライなの?
妖精は、悲しそうに俯いています。
キライだ、キライ!大キライ!
キライでわるい?しょうがないじゃん、キライなものは、キライなんだもん。
こうくんは、お布団にもぐってしまいました
いいよ、キライでいいよ
たしかに、にんじんを食べなくても他のお野菜でえいようがとれるし、ほかのだれかにあげれば、もったいなくないかもしれないね
でもね
キライよりひとつ、スキが多い方が、きっと楽しいと思うよ
妖精は、にこっと笑って言いました。
キライでもいいよ
ねぇ、でももし大キライから、ちょっとだけスキになってくれたら、そしたらうれしいな
こうくんは、お布団からすこし顔を出してみましたが、もう妖精はいませんでした。
月の光だけが、やさしく残っています。
目が覚めると、お月様は眠ったようで、太陽が元気にのぼっています
今日はとてもいい天気です
朝ごはんは、パンと、卵と、レタスと、あら、にんじんがあります。
「わ、にんじんだ」
こうくんのお顔は、曇り空です。
「ぼく、キライなのに」
「キライ、だけど…
一口だけ、今日は一口たべてみようかな」
こうくんは、ゆうきをだして、それ!っとにんじんをひと切れ、お口にいれました
もぐもぐもぐもぐ
もぐもぐもぐもぐ
ごくん
うん
やっぱりあんまりスキじゃないや
でも
がんばって食べたよ
思ったより、悪くないかも
もっとがんばったら、いつかちょっとだけ、スキになれるかも
こうくんは、なんだかはれやかな気分になりました
それはお空のせい、なのかな?
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