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夢から目覚めた直後の気分が巧く書けない

 なんとも心地悪く、切ない夢を見て目が覚めた。
 どんな夢だったのかを書いてしまうと、夢の中で自分がいかに心地が悪かったかを事細かに書くことになってしまいそうで、詳細に書く気が起きない。
 読み返すたびに情けなく切ない気分が蘇りそうで、その度に同じ切なさと情けなさを繰り返し味わうことになりそうで、それがもうすでに嫌なのだ。

 夢ぐらい誰だって見るものなのだろうが、目覚めたときにどんな気分だったのかを聞いた覚えがない。「こんな夢を見た」という話にはなっても、それだけで終わってしまう。
 殺されるとか、追いかけられる夢を見たという話はよく聞くけれど(以前は僕もよく見ていた。最近はとんと見なくなった)、その夢から目覚めたときの気持ちはどうだったのか。大抵は「怖かった」という答えで、それ以上に細かいところまで掘り下げないのが夢の話の常なのかもしれない。

 夢から目覚めたときの感覚というのは妙に生々しい。
 夢自体は支離滅裂、矛盾だらけで、唐突に始まって途中で目が覚めて唐突に終わるのが常だけれど、それでも現実味だけはやたらとあって、目覚めた直後——夢の世界がぶった切られた直後の、夢と現実とが地続きになっているような短い時間を的確に書き表すのはなかなか手強そうな気がする。

 ハッピーな夢から目覚めれば、その日は一日中なんだか心が軽かったりするわけだが、逆に今朝の僕のように妙に切ない夢から目覚めると——自分の責任ではないところで様々なことが決まり、僕はただ傍観しているしかない。でも全部を見ていなければならないといった夢だった——、空虚でやるせない感覚に全身を包まれて、起きた瞬間からすでに疲れているというザマである。
 夢は現実世界の自分の気分に少なからず影響してくるのだ。

 だから余計に夢から覚めた直後の気分を的確に書き記して見たいのだけれど、夢自体が実体のない支離滅裂なものだけに、夢の余韻が強く残っている時間の気分は巧く書き表せないのかもしれない。
 今朝、目が覚めた直後、あまりの切なさ、心地の悪さに、この感覚は書き記しておかなければと思ったのだが、試し書きをしてみてもどうにもその瞬間の気分に沿ったものにならずに、放り出してしまった。
 おかげで今は見た夢の内容と目覚めた直後の心地の悪さだけが残ってしまっている。

 それにしてもひどい夢だった。

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