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読書記録2022 (簡略感想羅列版)

 このところ読みっぱなしだったので、記録してあるうちから印象に残ってるものをいくつかかいつまんで。

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『真田騒動』 池波正太郎

真田太平記を通して再読した勢いで、こちらも再読。
短編をいくつも書き上げていって、結果としてそれが長編の習作になるのはレイモンド・チャンドラーも同じで、作風も何も全然違うのに、そうした共通点が面白かった(内容はもちろん)。

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『幸村を討て』 今村翔吾

 真田幸村つながりで、直木賞を獲った今村翔吾の真田モノも読んでみようかと。
 本人がいろいろなところで語っているとおり、池波正太郎は敬愛する先達なわけで、その代表作でもある真田モノを池波フォロワーである作者がどう料理するのかという興味もあった。
 結果としては「なるほど、そう持ってきましたか」という感想。
 決して無理やりひねくり出した強引な妄想でもなく、歴史としては記録されていない事実の中には確かにこういう可能性もあるかもな、と素直に思えるものだった。

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『ナイルに死す』 アガサ・クリスティ

 新訳で中学生の時以来の再読。
 実は比較のために旧訳も手に入れて比べ読みしてみたのだけれど、言葉の使い方がいつの間にか変化していたことに気がついたという始末。言葉は変化するのは当然なんだけれど。
 新訳、読みやすく、ストーリーは言うまでもなく面白かった。

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『人間と機械のあいだ 心はどこにあるのか』 
池上 高志 石黒 浩

 東大の人工生命研究の物理学者と阪大のロボット研究の工学研究者の共著・対談なのだが、似た者同士感が拭えず、話についていくのに苦労するところも。人間と機械のハイブリッドはできても、イコールで結べるものはできない予感がするのは、その差異が言語化不能の部分にあるからなんじゃないかと思っているけれど(個人的な想像として)。
 それでも攻殻機動隊的な——人間を草薙素子化することも、タチコマのようにA.I.が個性を獲得することもありそうな予感がしてしまうから困る。

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『作家の履歴書』 角川書店

 副題の「人気作家が語る……」は正直、風呂敷広げすぎだが(看板に偽りありと言っても過言ではない)、ただの編集者による作家のインタビューなので、暇つぶしには十分だった。大学病院で診察待ちをしている間、飽きずに読めたから、まあその程度の面白さはあるということで。

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『平家物語 犬王の巻』 古川日出男

 映画の公開もあって読むのを迷ったが、これは面白かった。
 平家物語が「翻訳」ならば、本作は「創作」。実在したとされる室町時代の能楽師「犬王」こと道阿弥の物語を創作している。
 平家物語同様に翻訳調で、まるで琵琶法師の語った物語を平家物語と同じく翻訳し直して提示しているかのような仕掛け。
 やっぱり『南無ロックンロール二十一部経』も読まなきゃ仕方がないかなあと迷い中。

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『泣き虫弱虫諸葛孔明 第一部』 酒見賢一

 『墨攻』を何度となく再読していながら、本作は買ったまま積みっぱなしで、ちょっと読んでみるかなと書棚から引っ張り出したのだけれど、なんとなく読むタイミングではなかったようで、1巻目だけ読んで、続きは棚上げにした。
 中国の歴史モノはどういう切り口で扱うかが作家によって違うし、切り口次第で合うか合わないかが別れるものだけれど、どうも三国志については吉川英治版の刷り込みが強すぎて、その辺をクリアしてからじゃないとキツイのかも。実際のところは諸葛孔明も劉備もろくなもんじゃなかったとする酒見賢一の見解の方が近かったように思えるけれど。

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『シャーロック・ホームズの息子』 ブライアン・フリーマントル

 うーん、面白かったけど、やっぱりチャーリー・マフィンのシリーズの方が面白かったかな。ホームズのパスティーシュとしては秀逸な出来だと思う。上手いことフリーマントルの「ホーム」であるスパイ物に引き込んでるし。でもスパイ物ならやっぱり………(あと20回ぐらい続く)という感じが拭えず。面白かったんだけどね。

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