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読書記録

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個人的な読後連想の記録
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2022年2月の記事一覧

読書記録2022 『小説家になって億を稼ごう』 松岡圭祐

 小説家という職業は稼げる職業なのか否か。  出版不況と言われて久しく、大学生の1ヶ月間の読書量は長く右肩下がりが続いている中で「億を稼ごう」と言われてもにわかには信じがたいという人が大多数だと思う。  僕が風変わりなのか、タイトルを見ただけで「まあやりようによっては1億ぐらいなら届くかもしれないよな」と、特に違和感もなく納得していた。  まず重要なのが、本書が億越え作家になるための小説作法ではないということだ。大きく3つに分かれる内容の1つのブロックを使って小説の書き方に

読書記録2022 「スーパー猫の日」編

 猫好きである。  小説家になりたいと思う気持ちの半分ぐらいは「猫を飼えるから」という願望が占めていると言っても間違いではない。  過去には家の庭に野良が居着いたこともあったのだけれど(この話を語ろうとすると、それはすなわち母への恨み言と繰り言を羅列することになるので割愛するが)、「うちで猫を飼ってます」と胸を張って言えるほどの経験がない。  とはいえ、何から何まで猫ファーストというような —— 猫の置物を飾るとか、猫がデザインされているものをとりあえず選ぶというような ——

読書記録2022 『平家物語』 古川日出男

 昨年、配信されたアニメの『平家物語』の評判もあってか、京極夏彦かと思うほどの厚さだというのに、人気があるらしい。  かく言う自分もアニメを見て学生の頃以来に平家物語を読む気になったわけだが、昔読んだ古典全集の中の現代文訳と注記がセットになった「ザ・古典」の平家物語よりずっと読みやすかった。  物語が成立した頃の姿は琵琶法師の語り —— 耳で聞くものだったわけで、読んで愉しむものではなく、音曲だった。いまでいえば講談のようなものがいちばん身近かもしれない。  古川さんの現代

読書記録2022 『猫を棄てる』 村上春樹、他、作家が父を語った作品3冊

 このところ諸々調子が上がらず、本は資料読みみたいな読み方しかできなくなっていた。  床から伸びた「積ん読」本の塔を整理していたら、買ったまま読むのを忘れていた村上春樹の『猫を棄てる』が出てきたので、「この程度の厚みならば……」と本を開いてみた。一気読みだった。  本作は小説ではなかったけれど、「小説読めない期」に入っている今には具合の良い自分語りだった。  息子が父を語るというのは独特のものがあると、世にある数多くの息子の一人として思う。  どう言えば心の内に残るものに近