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会社で働く人の実情

私は日頃、経営者の方や社員の方々のお話をお伺いすることが多いのですが、「人」に関するお悩みが実に多いことを実感します。

自分自身に関すること、人間関係に関することは、どの企業様も長年にわたり課題として挙げられています。どこで働こうとどのようにして働こうと、たどり着く基盤は「人間理解」だと考えます。

組織全体が、企業理念やビジョンに向かって進むにはどうしたらいいか。考えも価値感も思いも違う個々が、同じ方向へ進むにはどうしたらいいか。

まずは自分が自分のことをよく知ること。なぜその仕事をしているのか、何が好きで何が強みで何をなし得たいのか、会社に世の中に、どういう形で参加、貢献したいのか。誰に届けたいのか。

働く時間が多くを占める人生の時間。個々の働きがいが生きがいとなったら、自己表現、自己実現へと繋がる可能性も高くなる。楽しみや目標が重なりあうことで、明るく活力ある職場作りへと移行しやすい。

そこにはやはり、自己理解、他者理解、相互理解。人は思考だけでなく心が交わることで、喜び悲しみ、悔しさ、安堵、色々な感情を分かち合うことができる。そういう人間味あふれる関わりをした方が、心豊かな人間関係の土壌を肥やすことができる。

しかしそれは理想であってなかなか難しいと、そこまで望まない人も社風の所も多い。必要最低限のコミュニケーションで目の前の業務をこなしてさえいれば、その日のタスクは終了し、また翌日へ突入して繰り返していけばいい。それはそれで大いに良し。でも私は何だかとても味気なく素っ気なく、面白味に欠ける気がしてならない。どうせなら、清々しい気持ちで朝目覚め、ワクワクして仕事に臨みたい。

そのための前提は、心が整っていること。ケガをしたら絆創膏を貼る、病気になったら手術をする、肉体の傷は手立てが見えやすいから、治し方も見えやすい。

一方、心は。まずは自分が気づかないとどんどん鈍化して、自分を守るために仮面のようなバリアを張り続けることになる。何が嫌で、何が楽しくて、何に心躍るのか。そんなシンプルなことさえもよくわからなくなる。

心という自分だけの大事なセンサーが曇って、自分の羅針盤が機能しなくなる。それが慢性化すると、感情鈍麻、抑うつ状態、うつ病へと深刻化しかねない。自他ともに気づかず、いつの間にか休職や退職へ追いこまれてるケースが実に多いこと。

会社の保健室の私の役割りは、そういった人の早期発見、問題の抽出と共有、改善へ向けての会社への働きかけと、個人への働きかけ。心理的安全性のある職場作りへ向けての底支え。

臆せず保健室の門戸を叩けるように、いつでも頼って駆け込めるように、大きく広くあたたかい気持ちで開けておく。学生の時の保健室のように、何もなくても来てみた、疲れたから休みに来た、さらに力もらいたくて来た、ねぇちょっと聞いて、その一言が言える関係でいたい。何も一般の社員だけでなく、マネジメント層、経営層の人も隔たりなく偏見なく気軽に来てほしいと思う。垣根が低ーい保健室を目指している。

心が整ったら、次は仕事での役割りや目標を見直したり、人生の楽しみを一緒に見出していく。心や思考の取り扱いは誰も教えてくれない。自分を俯瞰する力がない時は、誰かに見守って寄り添ってもらえばいい。自分でできない時は、頼ればいい。頼ったり弱い所をみせるのは、決して恥ずかしいことではない。誰にも見せられないのなら、私の所に来たらいい。

私は第三者として、組織の潤滑油になるような働きかけをこれからもしていきたい。病院なら注射が打てるけど、ここでは愛のカンフル剤注入。そのような形でお役に立てることが、とても嬉しい。働く人はここで働けてほんとに良かったと思えるように、働く場を創った人は、この会社を創ってほんとに良かったと思えるように。

企業の「人」に関する悩み事の専門家
会社の保健室の先生
北島美樹

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