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短編小説と呼ばせて

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2,000文字程度の作品です。短文で読みやすく仕上げています。
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#ショートショート

3月:ママが教えてくれたいちご餅【短編小説】1400文字

「やっぱり、出れなかった・・・」 ママの白い軽自動車の助手席に座ってドアを閉めると、外で同じ…

イツキ 彩
1年前
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3月:エクレアまでの階段は続く【短編小説】1200文字

「いってらっしゃい。では、お願いしますー」 「はーい。いってきまーす」 9時半。 幼稚園バ…

イツキ 彩
1年前
26

2月:いつの間にかあなたのためにクッキーを【短編小説】1300文字

「お疲れ様です。どうぞこちらにおかけください」 怪我人の手当てをするわけでも、ましてや実…

イツキ 彩
1年前
26

2月:フロランタンは時を越えて【短編小説】2200文字

「前から・・・綺麗な人だと、思っていました」 真っ直ぐに私を見つめるヘーゼルアイは、いつの間…

イツキ 彩
1年前
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2月:祝福のシュークリーム【短編小説】1300文字

「好きだよ」 桃色の唇がうっすらと開いた。4文字で蕾が花開くような、甘い囁き。 あぁ!この…

イツキ 彩
1年前
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1月:炊き込みご飯より愛を込めて【短編小説】1200文字

「せっかくだから、お父さんが作ったやつ、食べたいな」 年に一度の帰省した娘に言われたら、…

イツキ 彩
1年前
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1月:シンお雑煮【短編小説】1400文字

離婚をするなら12月と決めていた。 否応にも清々しさと、気持ちを新たにさせようとする風がどことなく吹く1月。 ズルズルと余韻を引きずるのは好きじゃない。 パッと結婚したように、パッと独身に戻ろうと思った。 住んでいたのは彼名義の部屋だったのでちょうどよかった。 既に新しい部屋は借りていたので、有休をつかってコソコソと荷物を運んだ。彼は本棚からごっそり本が無くなって部屋に穴が開いていようと、服が減ってクローゼットの中の見晴らしが良くなっていようと、何も尋ねてこなかった。 お互

玉子焼きと天気雨【短編小説】2000文字

9月24日(土) 十津川教授、おはようございます。 僕は昨日から三上にある、あのゲストハウ…

イツキ 彩
2年前
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雑炊と片時雨【短編小説】1800文字

「これでいっか」 ユウキは冷凍庫からラップに包まれてカチコチになったごはんのかたまりを2…

イツキ 彩
2年前
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ミネストローネとそぞろ雨【短編小説】1800文字

銀色の大きな観音開きの扉を開くと、そこは想像して創造するための世界が広がっていた。 周り…

イツキ 彩
2年前
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おにぎりと細雨【短編小説】2000文字

風呂上り、ヒノキの香りに包まれながらノドを潤すためにキッチンへと向かう。 このゲストハウ…

イツキ 彩
2年前
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パンとにわか雨【短編小説】1800文字

強力粉の山の対角に、三温糖と塩。 バターはできれば小さくカットして入れ、牛乳を注ぐ。 仕上…

イツキ 彩
2年前
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僕のお手本【短編小説】1200文字

白くて甘いもちもちした空気を吸い込む。毎朝の日課だ。 「おばあちゃんのとこ、持って行くね…

イツキ 彩
2年前
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【ピリカ文庫】それ、似合ってますよ【短編小説】2600文字

「ユメ!おい!ダメだって!もぉ~!!」 薄黄緑色の柔らかな芝生を白くてすっと伸びた脚が駆けていく。 時々僕の方を振り返って追ってきていることを確かめてくれるが立ち止まることはなく、また前を向いて駆けていく。 「待って!ユメ、待って!」 聞こえているはずなのに待ってはくれない。 最後に振り返って首をかしげ、薄暗い茂みの中に入っていった。 「おーい・・・」 ユメは連れ出してくれる人をいつも静かに待っている。 自分からどこかに行きたいと主張はしないが、行った先では誰よりも駆け弾み、