【学生Fエンジン開発】最初のゴールは走る車両を作ること

※初めての方はぜひ「はじめに」からご覧ください

学生フォーミュラ歴が浅く、車検を通過した事がない、または完走経験が無いチームには、まずは走行できる車両を完成させるために注力する事をアドバイスしたいと思います。

エンジン改造と聞いて圧縮比の変更やハイリフトカムの導入、過給などいかにもモータースポーツな改造を想像する方も多いかと思います。学生フォーミュラにおいてはそれら改造の前段階として、レギュレーションに合致する給排気系を設計・製作し、特性が変わった給排気系に合わせてECUのマッチングを取る、という行程があります。
以下の内容は、エンジンを車両に搭載し、走行可能な状態に持っていく事を何よりも優先し、その後最低限レギュレーションを満足させるというアプローチです。

Step1. 排気系を作る

バイクのエンジンをフォーミュラカーに載せ替えるため、排気系の新規作成は必須となります。現時点ではあまり深く考えずに、車両レイアウトを重視すれば良いでしょう。排気管径も、ベース車両よりも太ければまず問題になりません。
車両に載る排気系が作れたら吸気系は純正のままで車両走行をやってみてもいいと思います。吸気系をレギュレーション対応させようとすると、ECUにも手を入れないといけないため、まずは純正エンジンがどれくらい走れるのかを体感しておくのは有用です。

Step2.吸気系を作る

レギュレーションにより、スロットルバルブ下流にリストリクタ設置が義務づけられます。また複数のスロットルバルブを装備することは認められていないため、2気筒以上の多気筒エンジンは吸気を合流させサージタンクを設ける必要があります。これらの改造を施すと、純正状態からエンジンへの吸入空気量が変化し、純正ECUのセッティングではエンジンがうまく制御出来なくなります。

単気筒エンジンであれば純正吸気系にリストリクタを追加するだけでも構わないと思います。リストリクタにより空気の流れがチョークする領域以外は純正のECUで運転できるはずです。

Step3.ECUセッティング


 ECUはインジェクタ噴射量の制御と、点火タイミングの制御を行っています。バイクのECUでは吸気圧センサと吸気スロットル開度センサを使って、エンジンに入る空気量を予測し、それに合わせたガソリン噴射量、点火タイミングを決定しています。(これらのパラメータを適合値と呼びます)
 これら純正ECUの適合値は純正吸気レイアウトに合わせて決められた物なので、吸気の形状が変化するとうまくエンジンを運転できなくなります。例えば、リストリクタを装備するとスロットル全開時にエンジンが吸える空気量が減るので、純正ECUの適合値ではガソリン噴射量が多くなり燃料過多となり最悪の場合は運転不可能となります。
 前述の通り、単気筒エンジンであればStep2で最低限レギュレーションを満たし走行可能な状態に持っていけますが、多気筒エンジンではECUのセッティングは避けられません。ここは非常に長くなるので詳細は別記事としてまとめたいと思います。



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