かつての五日市の特産品、黒八丈を甦らせる 糸工房「森」・主人 森 博さん
糸工房「森」は、元は昭和17年に創業した絹糸屋。今も手術用の絹糸などを製作しています。
三代目の森博さんは、35年程前に町史から五日市が泥染めの名産地であったことを知りました。かつて盛んだった黒八丈がなぜ廃れたのか?「それが世の流れ」という考えが嫌で、黒八丈の復活への挑戦を決意したそうです。
「黒八丈」とは、江戸時代に全国的な人気を誇った秋川流域の絹織物で、八丈島の「黄八丈」、奄美大島の「大島紬」と並ぶ泥染めの一種。ヤシャブシの木の実と秋川の泥を使って染め上げます。
染めに使用するヤシャブシの木は五日市に多くみられ、その実に含まれるタンニンと化合する鉄分は、五日市の泥に多く含まれます。その二つが化合して黒色に染まる理論はわかるけれど、実はいつ頃のものを使用するのか、泥を掬う方法をどうするかなど、試行錯誤を繰り返しました。
地元の物を使用して作品を作りたい、地元を盛り上げたい、という森さんの熱い想いが実を結び、数年かかってようやく渋い中にも照りがあり、深みのある色合いの見事な黒八丈が完成しました。
今では五日市の特産品として、江戸の粋がわかる方々に愛されています。昨年にはNHKワールドで海外放映され、五日市の黒八丈というブランドが世界に知れ渡りました。
地元を愛する森さんのもう一つの活動に、増戸地区の「紫つつじの里構想」があります。この活動は、紫つつじ(ミツバツツジ)を街中に植えようという、市の観光協会事業として始まりました。現在は増戸地区の住民の活動に委ねられ、40人ほどの里親さんが種から苗を育て上げて、住民に差し上げたり、街路に植えたりしているそうです。
増戸地区にたくさん紫つつじを植えて、通りに人の流れを作りたい、という努力が花開き、街が活性化することを願っています。
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