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私が試した難聴治療あれこれ

私の難聴は先天性のもの(先天性感音難聴)ですが、当初から全く聞こえなかった訳ではなく、徐々に進行していくものでした。
ただ、基本的には経過観察のために通院していたので、積極的な治療をしてきたわけではありません。

積極的な治療をしていない=治療法がない、ということでもあるのですが、恐らく現在においても、難聴の進行、それも数年かけて少しずつ悪化するような症状に対して、何らかの治療はないと思います。(漢方薬とか、そういうものはあるのかもしれませんが。)
実際に、私が治療をしていた当時、後10年もしたら新しい治療法が出るかもね、何て言われていましたが、10年以上経った今でも、治療法として標準化されているものは出ていないと思います。

私は右耳を先に失聴したのですが、この失聴は耳鳴りから始まり、調子が悪いなと思っていたら、ある日突然聞こえなくなるというものでした。

この耳鳴りが始まり、聴力検査に影響が出始めた頃から突然聞こえなくなるまで、色々な治療法を試すことになります。

よって私が試した治療法は、耳鳴りや突発性難聴の治療として実際に行われているものです。

1)どんな治療法があるのか

私が試した治療法は主に下記の通りです。

  • ステロイド経口投与

  • ステロイド全身投与

  • ステロイド鼓室内投与

  • 高圧酸素療法

  • メニエール病の治療(イソバイド)

恐らくほとんどの治療法は試していると思います。
これ以外での治療となると、自律神経とか精神的な面に作用させるものかと思います。

私が現在人工内耳であるという事実が、結局のところ上記の治療は効果が出なかったと考えるべきかもしれませんが、中には実際に聞こえが回復し、失聴までの期間を延命したと考えられるものもあります。

2)ステロイド経口投与と全身投与

◆ステロイドは治療方法としてスタンダード

難聴治療、特に突発性難聴の場合はステロイド経口投与がスタンダードだと思います。

私がこの治療を始めたきっかけは「耳鳴り」でした。
右耳に低音の耳鳴りが発現し、聴力検査に影響が出て、聴力が悪化してしまったからです。

そこで、当時の主治医の治療選択が「ステロイドの経口投与」でした。

経口投与なので、調剤薬局で薬をもらって、服用するという単純なものです。
私が処方されたのはプレドニンで、最初を20mgとして、2週間かけて少しずつ減らしていくというものでした。
1日1回だけ、ステロイドを飲むだけですので、治療の負担感がゼロです。
ステロイドの副作用も心配される点ですが、私は全く問題がありませんでした。

◆経口投与の効果はなかった(私の場合)

結論からいえば、ステロイド経口投与のみでは耳鳴りは消失せず、よって聴力の変調も回復することはありませんでした。

ただ、効果がたまたま出なかっただけなのかもしれないということで、時間を空けて、何度か2週間服用のサイクルを繰り返していきましたが、効果はありませんでした。

繰り返し効果が出なかったことや、耳鳴りが結構酷くなっていたこともあって、ステロイド経口投与は中止することとし、次の全身投与に向かうことになります。

注)私は先天性の難聴なので、突発性難聴とは症状等や治療の効果に違いがあるかもしれません。

◆ステロイド全身投与も効果は無かった(私の場合)

ステロイド経口投与を断念し、全身投与に切り替えることにしました。
全身投与は点滴で行うのですが、基本的には入院して行う病院が多いと思います。
私は当時、既に社会人として仕事もしていましたので、何とか通院にならないかと相談し、通院対応が可能な病院を紹介してもらいました。

ステロイド全身投与のために通院することは、非常に大変でした。
週に1回、約90分の点滴で、仕事が終わってから病院に行き、点滴を打つというようなことを2ヶ月程度続けていました。
副作用こそ無かったのですが、通院や点滴の拘束時間、そもそも回復するのかという疑問、様々な感情がゴチャゴチャになって精神的にもキツいものがありました。
点滴を終え、車を運転しながら自宅に戻る際、何度となく辛さから悲しみがこみ上げ暗い気持ちになったのを覚えています。

入院して集中的にやらなきゃダメだったのかな、等色々考えてしまいましたが、ステロイドの治療は私にとって効果がないのだと思い、何をしたら改善するのか、とそんな思いで頭がいっぱいになっていました。

この時26歳。
なす術なく、右耳を失聴してしまうのでした。

3)ステロイド鼓室内投与

◆鼓膜に注射?

右耳の失聴後、耳鳴りは相変わらず続いており、これを何とかしたいと思い色々ネット等で調べていたのですが、結局は一番大きな病院に行くべきだろうという判断で、紹介状を書いてもらって、大学附属病院に行くことになりました。

今振り返ってみても、この判断が今後の人生に大きな影響を与えることになりました。
信頼できる医師に出会う事ができ、今の私があるのも、その方のおかげだと言っても過言ではありません。

大学病院では、これまでやってきた治療等を一通り説明した後、まだやっていない治療法として「ステロイド鼓室内投与」があるということを教えてもらいました。

経口でもなく、点滴でもなく、直接内耳にステロイドを届けるという点で、何となく効きそうという感じはしますが、鼓膜から注射するという恐ろしいことをサラッと言う医師にとにかくうろたえました。

とは言っても、痛そうだからという理由でやらないということには全くならず、「やります!」と返事をし、新しい治療にトライすることになりました。

  1. 鼓膜に麻酔をかける。

  2. 頭をがっしり固定され、鼓膜から注射。

  3. 注射後は安静必須

  4. 異常がないか診察

  5. 終了

概ね、上記のような流れで進むことになり、トータル1時間かからないくらいでしょうか。

◆とにかく苦痛の治療法

まずは鼓膜に麻酔をかけるのですが、意外と原始的な方法で、横になって、耳の中に液体(生理食塩水?)を注ぎます。
この時点でもうゾワゾワするのですが、我慢して、液体でいっぱいになった耳の中に電極を差し込んで、微量の電気を流して10分ほどじっとしています。
これにより、鼓膜に麻酔をかけていることになるそうです。(痺れさせているということか・・・)
薬を塗る方法もあるようですが、効きが弱いらしく、私は常に電気でした。

麻酔が終わるといよいよ注射です。

最初の緊張感ったら半端なく、耳に注射という信じ難いシチュエーションに震えが止まらないのですが、医師は淡々としかも笑顔で「いきますねー」と、いつもやってるので大丈夫ですよという自信に溢れている表情で、少しは安心したのですが・・・。めちゃ痛い!

麻酔をしているので、鼓膜を突き破ること自体はそれほどではないのですが、中にステロイドを注入している時は、傷口に冷たい流水をかけられているような痛みが続き、しかもステロイドはゆっくり注入しなければならないので、結構な時間続いているような気がします。(実際は数秒なんでしょうけど)

これが終われば、ベッドに横になって安静にします。
注入によって、目眩が発生することもありますし、ステロイドを内耳に行き渡らせるためにも横になって20分程度は安静にしています。

20分程度経過した後、医師がやってきて異常がないことを確認し、終了となります。

ただ、この治療、私の場合は「10日〜14日に1回」を4セットやることがスタンダードで、1回やってすぐに効果が出るというような治療法ではないようです。

◆効果が出る!聴力復活!しかし、、、

真面目に注射に通い、4セットを終え、医師からは「効果が出るまで少し時間がかかると思うので、様子を見ましょう」と言われていました。

最後の4セット目の注射から、約1ヶ月経ったある日、電車に乗っていた時、突然右耳から音が入ってくるようになりました。(突然というパターンは割とよくあるらしいです。)

右耳が失聴してもなお、補聴器は付けていたのですが、その右耳から確実に音が入ってくるようになり、聴力が復活したのです。

病院で聴力検査をしてみると、失聴前の9割程度は聞こえている感じで、「ステロイド鼓室内投与」の治療が、私には有効であったと大変喜びました。
同時に耳鳴りも小さくなり気にならない範囲となり、この治療法は本当に凄いと思いました。

こうして、一定の効果があったことから、私にとって「ステロイド鼓室内投与」は必須の治療法となったのですが、この治療を何度も繰り返していくうちに、遂に効果が出なくなってしまいました。

ステロイド鼓室内投与を何度か繰り返して、効果がなくなるということは普通にあるようで、これまた個人差の話だそうです。
最初は効果が無かったが、何回か繰り返すと効果が出たりとか、結局のところ、ステロイド自体、効きはするけど何で効くのかは不透明な部分も多いのだと思います。

ちなみに右耳には何度か繰り返し効果がありましたが、左耳には全く効果はありませんでした。

ステロイド鼓室内投与は非常に試す価値のある治療だと思います。
少しでも回復の可能性があるなら、痛いのも我慢できます。(私は両耳で通算100発程度は注射をしています。)

他に痛くなくて、効く治療法があればな・・・と思う毎日です。

◆治療法はまだまだ模索中?

ステロイドの治療ですが、急性感音難聴の治療において実際の医療現場で第1選択となっているようです。
ただ、経口投与、全身投与、鼓室内投与で明確な違いがあるかどうかの証明には至っていないのが実情のようです。
もっと詳しい情報を知りたい方はこちらをどうぞ。

私にとって、たまたま身体に合った治療法が「ステロイド鼓室内投与」であった、というだけなのかもしれませんが、難聴治療として試す価値のある治療法であることは間違いないと思います。

4)高気圧酸素療法

◆高気圧酸素療法も有名

突発性難聴の治療について色々調べると出てくるのが、「高気圧酸素療法」です。
ステロイドの治療と同じくらい、ネット上では目にするかもしれません。

高気圧酸素療法とは、気密したタンクの中で酸素の圧力を大気圧以上にあげ、血液中に溶けている酸素の量を増やし、身体の隅々まで酸素を行き渡らせて、体内の低酸素状態を改善するものです。

「高気圧酸素療法」は突発性難聴の治療として、保険適用になっており、必要に応じて医師から治療を推奨されることになるのですが、設備が結構ヘビーなので、そこそこ大きな病院でなければ、この治療をやっていないということはあると思います。
もちろん、治療に必要であれば、設備のある病院に紹介してくれるとは思います。

◆高気圧酸素療法の感想

私にとって、「高気圧酸素療法」は効果がありませんでした。

ステロイド鼓室内投与の効果がなくなったタイミングで、併用する形で高気圧酸素療法を開始したのですが、結局効果はありませんでした。
このタイミングでの治療開始が遅かったのか、身体に合わなかっただけなのかは全く分かりません。
そもそも先天性難聴でもありますし、突発性難聴との違いはあるのだろうと思いますが、私には効果が無かったというのが結論です。

治療自体ですが、それほど苦痛に感じることはないです。
大きなカプセル状の部屋に入って、じっとしているだけです。
入室の際には、所持品は全てロッカーに入れます。普通にレントゲンやCTを撮影する時と同じような感じでしょうか。
病院によっては着替えるところもあるようですが、私は私服で入室していました。

治療が開始される(気圧が高くなってくる)と、気圧の変化を伴うので、つばを飲んだり、あくびをしたりと耳抜きをすることが必要です。(飛行機に乗ったらやりますよね?)これが出来ないと結構大変です。耳が痛くなってきます。
あとは約1時間くらい、じっとしていなきゃならないので、暇だなーという感じですが、病院によっては本等を持ち込んでも良いところもあるそうです。
たまに起こる気圧の変化による妙な感覚をやり過ごすことができれば治療によって痛い思いをするということはありません。

治療中はもちろん部屋に一人なのですが、監視カメラがあって、モニターで治療中の患者の様子をきちんと見てくれています。
何かあったらモニターに向かって身振り手振りしてくださいね、と言われますし、向こうからの指示はスピーカーで流れます。(難聴者にはボードに書いてくれたりするので、配慮してくれます。)

とにかく時間を要する治療法なので、病院に来て、診察・治療・会計となると、結構な時間が経っています。(2時間以上はかかりました。)
社会人でこれを継続的にやるっていうのも大変だなと思いますが、難聴治療のためなら、です。

まとめ

以上が私のやってきた難聴治療になります。

医療は日進月歩ですし、新しい治療法により聞こえが回復するようになることを期待するばかりです。

皆さんの参考になれば幸いです。

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