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みんなで作るプレミアリーグ通信簿 〜レスター編〜

はじめに

 Dan.(小津 那)さんの提案によりご依頼を受けてレスターシティを担当しますオークウェルです。

内容は、『プレミアリーグ通信簿』
ということで、今シーズンのレスターの各選手について完全なる独断と偏見に基づいて評価をしてみました。かといって本当に独断と偏見だけでは面白みがないので、プチ情報的なものを挟んで楽しんで頂けるように工夫したので、良かったら最後までお付き合いください。

 なお対象としているのはプレミアで5試合以上に出場した選手。なのでここにはダニー・ウォード、エルディン・ヤクポビッチ、ダニエル・アマーティ、マティ・ジェームズの4選手は今回は対象外としているので悪しからず。

評価段階は次の通り
S 1シーズンを通して素晴らしい活躍を見せ、かつこの選手の代わりはいないという選手

A シーズンを通して一貫した出来で、素晴らしい活躍をした選手

B+ 良い活躍は見せたけどもう少し安定したパフォーマンスが欲しいから、Aは少しつけられないかなという選手

B 及第点の活躍を見せた選手       

B- 高評価をつけるほど活躍をしたとまでは言い難いけど、反対にC以下だと少し厳しすぎるかなという選手               

C 期待を下回った活躍だったが、Dと比べてまだ改善の余地はありそうな選手

D  残念なパフォーマンスが多く、貢献度が低く、改善の余地が見込めなさそうな選手。(年齢的な衰えも込み)

その中でも良くも悪くも特に印象に残った選手には別にMVP、GREAT、GOOD、BAD、WORSTの評価を、またA以上の働きぶりを見せた選手にはSをつけています。

 7段階の評価基準を設けたのはなるべく選手間において差別化を図るのが狙いです。

長い文章ですが、宜しければ最後までお付き合いください。それではどうぞ! 

GK

カスパー・シュマイケル

評価:A

 15/16シーズンの優勝から4年経っても守護神の座は変わることはない。時よりハイボールの処理という面で弱さが出ることはあるが、セービング面では安定したパフォーマンスでシーズン全体を通してチームの危機を幾度となく救ってきた。

 Goals Preventedという枠内シュート(PKとオウンゴールは除く)から失点数を予測し、実際の失点数と照らし合わせて、どれだけ失点を防いでいるかという指標ではリーグ5位となる+4.0の好成績。(予想よりも4点程度は多く防いでいる計算)

 シーズンを通してリーグ戦全試合に出場し、クリーンシートの数は13でリーグ3位タイというのも十分に納得出来る数字である。プレミアのキャリアをみても15/16シーズンのクリンシート15に次ぐ好成績で、素晴らしいシーズンの1つを送ったと言ってもいいだろう。

 そしてPK戦にも強く、カラバオカップでは2回戦のニューカッスル戦、準々決勝のエバートン戦ではそれぞれ2本のPKセーブ。チームのカラバオカップ準決勝進出に大きく貢献した。

 また彼の進化として足元の技術の向上が挙げられる。クロード・ピュエル就任以降ポゼッション志向になったレスターにおいて、ビルドアップで彼にも足元の能力が求められるようになったものの、特に昨シーズンは相手ファーストラインのプレスを越す対角のフィードが高確率で手前で引っかかり逆にピンチを招くシーンが数多くあった。

 しかし今シーズンはこの面においては技術が上達し、両サイドに対角のフィードはある程度蹴れるようになり、より現代的なGKになってきたと言っていいかもしれない。

 GKというポジションを考えれば現在33歳のシュマイケルは今後2年程は彼のポジションが変わる事はないだろう。

DF

ジョニー・エバンス

評価:S | GREAT |

 今シーズンのエバンスはどの試合でも常に安定したパフォーマンスをみせてくれた。32歳という年齢を感じさせず、常に的確なポジションを取りサイドを攻められBOX内に危険なクロスを上げられても、一切のミスがなく幾度となくピンチを救ってきた。

 そして時折ポジションを捨てでも行うタックルもミスがなく、彼の守備が如何にソリッドであるかというのを体現している。足元の面でもレスターの後方からのビルドアップを支える1人であり、両サイドに散らすロングフィードの制度も高い。以前に彼のことを何故ペップ・グアルディオラが欲しがっているのかよく理解出来る。

 またエバンスのリーダーシップも素晴らしくチーム内では一切の不平を言うことなく、今シーズンブレイクしたソユンクも彼から色々な事を教わってもらっていると明かしており、エバンスの存在無しにはソユンクの活躍は無かったかもしれない。

 ロジャースからの信頼も厚く、彼のことを話すときはいつも「怪我さえなければ今でも間違いなくユナイテッドでプレーしていたし、プレミアのどこのチームでもプレーできるだろう」と語る。今シーズン、エバンスがケガをせずリーグ戦全試合に出場したことが、チームの堅守を支える大きな要因であった。

 ただ1つ気になる点としてはリーグ戦再開後にファール数が急増した事。リーグ中断前までの29試合でファールの回数はたったの16回だったのに対し、リーグ戦が再開した30節から最終節までの9試合だけで19回と増加。

 再開後のパフオーマンス自体はチームが不調に喘ぐ中で、エバンスは数少なく一貫性のある出来を示し続けたのは事実だが、不用意なファールも目立っていた。最終節での退場もシーズン当初のエバンスならあそこまでのレイトタックルをしていなかったのではないだろうか。

 現在32歳であるエバンスだが、EL、そしてミッドウィークのゲームが増える来シーズンのプレミアを考えると、なるべく休みを挟みながら試合で使っていたほうが、年齢的な面から考えるとより長持ちするのではないかと感じている。

チャングラル・ソユンク

評価:S | GREAT |

 移籍当初は英語もまとまに話せず、コミュニケーションを取る事さえままらなかった選手がここまでになるとは思ってなかった。

 マグワイア移籍後のプレシーズンマッチでエバンスとソユンクのCBを組ませ、ロジャースが「これで行ける」と判断して始まった今シーズン。マグワイア程の空中戦での強さはないにしても、マグワイアにはない機動力を兼ね備えている為カバーリングエリアがかなり広い。またピンチの場面では体を張ったシュートブロックでチームのピンチを救ってきた。

 そして現代のCBにより求められるようになっている足元の技術が非常に高く、相手のプレスを軽やかに交わし、ロングフィードも出せるまさに現代的なCBである。

 個人的にはCBが実質3枚しかいない中でエバンスを休ませる為に、カップ戦の試合もヘロヘロになりながらも怪我無く出続けてくれる点もポイントが高い。

 今年の躍進はエバンスの存在であったり、守備面を担当するコロ・トゥーレコーチとの二人三脚の指導が大きい。特にコロ・トゥーレとは映像を使いながらの居残り練習を頻繁にやっていると明かしており、フルシーズンをこなす上で大きな支えに。

 そしてファンからも愛されているいるのか彼のチャントはマグワイアのチャントを改変したもので、歌詞にはWe don’t need you We’ve got Söyüncü (俺たちにはソユンクがいるからマグワイアなんて要らないさ)とまさにソユンクの活躍を反映したチャント。

まだ移籍してから2年目ではあるが、現在ソユンクとは契約延長交渉を行っており、いずれ彼とは契約延長が発表されるだろう。

 エバンスとエンデディと共に守備のセンターラインとして欠けてはならないピースの1人に一気に成長し、酷使されながらもよく頑張ってきてくれたのでS評価。

ウェズ・モーガン

評価:D

 35歳という年齢もあり衰えが顕著に見え始め、立ち位置も第3CBとしての位置づけになり出場機会も大幅に減ってきたモーガン。

 EAから査定されたpace29という数値はあながち否定できないようで、特に今年はスピードについていけずに裏のスペースをあっさり取られることが多くなってきたのが大きな懸念材料。

   カップ戦やリード時での終盤の守備固めで起用が主だが、3バックの真ん中でプレーすることが多く、彼のカバーリング範囲の狭さ(特に背後)をあっる程度カバー出来ているからか、失点につながるプレーはなかったにせよ、彼が出場すればするほどファンの寿命は削られていく。

 日本のレスターファンはプレー面でプレミアのレベルはもう厳しいと感じる場面が多いと思っているが、現地のファンと現場は何故かそこまで彼のプレーレベルに対してそこまで懸念しておらず、この溝は一生埋まることがないのだろうなと痛感させられる。

 それでもピッチ内外でのリーダーシップの面をロジャースは非常に高く評価しており、今シーズンいっぱいで契約満了となるモーガンであったが6月18日にフクスと共に契約延長を果たした。

 外部の人間にとって彼のリーダシップがどれほどあるか分からない部分が多いが、5月2日には自らが率先して英国内の医療従事者に対する差別、偏見を撲滅するキャンペーンに参加しているのを見ると、彼のリーダシップの強さや人間性の面での影響力が一定程度あるのは推測出来る。

 契約延長を果たしたモーガンだが、本人は大学時代に経営学を学んでいたこともあって、将来的にはスポーツマネジメントの分野に興味があるという話だが、逆にコーチ業には大して興味がないらしく選手兼任コーチとして使えないのは痛手か。

 レスターでの残りのキャリアは刻一刻と短くなっているのは間違いないが、自慢のリーダーシップでピッチ内外でチームを引っ張っていってほしい所。

ライアン・ベネット

評価:C

 冬の移籍市場最終日にウルブズからローン移籍(買取オプション付き)で獲得してきたCB。だが、この補強は一時的な策で、レスターはベネットを取るには取ったものの、完全移籍で獲得するつもりなど毛頭なかった。

 その為、チームは試合出場によって自動的に発動する買取オプションを避けるべく彼を使うことをとにかく拒み続けた。

 しかし、ウルブズに精通するジャーナリスト、ティム・スピアーズ氏によればそもそも買取オプションはベネットが5試合先発起用されると発動されるシステムとなっていた。

 先発起用が買取オプションの発生の条件だったにも関わらず、ベネットが出場可能となった27節のマンチェスターシティ戦から32節のエバートン戦まで1試合のベンチ入りした以外は全てメンバー外。買い取らないにしても途中出場で使う分には全く問題がなかったのに、そのような起用法さえもしなかった理由は不明である。

 そんな中で33節のクリスタルパレス戦でようやく初出場し、トータルで5試合に出場。スタメン起用も3試合に留め、買い取りオプションの発生は華麗に回避した。

 前置きが長くなったが、5試合でのベネットに対する端的な感想を述べると、思ってたより3倍動けなかったが、思ってたより3倍足元が上手いということになる。

 まず前者の部分についてはウルブズ時代にここまで露骨にスピードで剥がされるシーンというのが全く印象になかったから驚いたということ。 37節のスパーズ戦ではカウンター対応でソンフンミンに1対1を2度仕掛けられ、2度とも最終的にはスピードで交わされて失点を許した。これが大きな批判を浴び、スタメン出場ではあったが前半45分で途中交代となった。

 ソンフンミンというリーグ屈指のスピードスターと対峙するのは簡単ではないのだが、3バックの右CBをやるのならやはり一定程度のスピードは欲しい。彼のスピードを考えると右CBより中央の方が向いているのではないかと感じた。

 そして後者に関してはこれもウルブズ時代の評価であるが、ウルブズはコーディとネべスというリーグトップクラスの展開力を持つ選手がいる為、彼が足元で貢献しているという印象はそこまでなかった。

 そういう意味でレスターに来て大丈夫なのかと不安になったが、意外と相手の背後に出すロングフィードが上手くてかなり驚いたという印象。しかも、サイドへ展開するパスも出していたので尚更驚いた。

 なお現在ベネットは既にウルブズに戻っている。ウルブズ自体との契約も残り1年で、再び移籍先を探すことになりそうだが、彼の今後の活躍を心より祈っている。

ベン・チルウェル

評価:C

 今シーズンのチルウェルは攻撃時では不用意なボールロストや判断ミスが多く目立ち、クロスの質も低下。守備においても対人対応の不味さも現れるように。1月から2月にかけてはチーム自体が調子を落としたこともありファンからはボールを持てばブーイングを浴び、スケープゴート扱いに。

 ただ1つチルウェルに関して擁護するなら決して良い調子ではないのにも関わらず、彼がほぼ試合に出続けたこと。今年の低パフォーマンスでもイングランド代表に選ばれ、代表ウィークも彼が休む事なく試合に出続ないといけない状態に。

 代表は左SBが元々人材不足のところにルーク・ショーが怪我続きということもあるが、クラブレベルにおいてボロボロの状態の彼を出し続ける事が果たして適切な判断であったのかは疑問である。ここまで来るともはやチルウェル以前に「使う側」の責任ではないかと感じる。試合に出し続けることで調子を上げてもらう意図があったのかもしれないが、結果論だが休み休みで使う判断の方が良かったかもしれない。

 実際24節のウェストハム戦ではその前のリーグ戦で休みを与えられた中で、シーズンの中では比較的良いパフォーマンスを示していた。このことからそれまでフィジカルだけでなく、頭や心という点でも相当の疲労があったのではないかと推測している。

 去就で言えば、クラブとしては本人に残留の意思がなく、かつ適切な額のオファーが来れば放出するだろう。そしてこれはいずれ現実になるであろう。EL出場となったこと、パンデミックによるチームの財政面から、補強の資金捻出のために個人的には放出希望だ。

 ましてや左SBで悩んでいるチームがBIG6で同時に2つも存在しているのだから、これとない売り時であると感じている。だが、どのような結果になるにせよ、彼がまだ23歳で成長の余地はいくらでもあるという事実は変わらない。

クリスティアン・フクス

 15/16の優勝メンバーのフクスはここ数年ベン・チルウェルにレギュラーの座を奪われてはいるが、チルウェルのバックアップとしての役割は非常にありがたい存在だ。

 イングランドには単身赴任で来ており、アメリカに奥さんと子供を残して生活をしている為、元々昨シーズンの時点で家族がいるアメリカに戻るためにレスターを退団する事が既定路線だった。だが、モーガンと同じくロジャースが彼の事を高く評価しており、要請を受けて1年契約で残留。

 今シーズンも引き続き主にチルウェルのバックアッパーとして、カップ戦やチルウェルが怪我等で欠場時には常に安定したパフォーマンスを披露。そして元々CBでプレーしてたこともあり、CBの層が薄いチーム事情や利き足が左ということもあって、3バック時には左CBを務めるなど複数ポジションを質を持ってこなせる点もポイントが高い。

 出番は限られているが、何1つ不満を言わずに「チルウェルの成長をサポートをしたい」と語る真のプロフェッショナル。今シーズンもフクスの事を高く評価しているロジャースが契約延長を望んでいて、事実6月18日にモーガンとヤクポビッチと共に1年の契約延長にサインした。

 本来なら1年前の段階でアメリカに帰っていたはずで、成長期の子供達と共に生活出来ないのはかなり胸が痛いはず。そんな状況の中で2年連続でチームのわがままを聞いてくれたフクスには感謝してもしきれない気持ちでいっぱいである。

 真のプロフェッショナルは今後もレスターで目立たないかもしれないが、若きチームを支える1人になるのは間違いない。

リカルド・ペレイラ

評価:S | GREAT |

 巷ではアーノルドとワンビサカどちらが優秀かの議論で頻繁に”紛争”が起こるが、多くの人間はリカルドの名前を挙げることはない。リーグ全体でどの右SBが優秀かの話をするなら彼の名前を忘れてもらっては困る。

 まず守備での対人守備の強さは素晴らしいものがあり、彼が抜かれる事はほぼない。タックル数は119を数え、リーグ9試合欠場したにも関わらず、エンデディに次ぐリーグ3位の数字を記録。

 そして攻撃面でもSBながらチームトップのドリブル能力を誇り、右サイドを崩して彼がサイドorハーフスペースからペナルティエリア内までオーバーラップで駆け上がり、ラストパスを送るシーンもよく見られる。

 レスターには彼ほどドリブル突破など個の能力で剥がせる選手がいないので、彼を1列前で使えという声もファンの中ではよく上がり、こういう意見が多く出るのは彼の能力の高さが現れている証。これほど攻守両面でハイレベルのプレーが出来るのは貴重である。

 ただ懸念材料なのは29節のヴィラ戦で右膝前十字靭帯断裂の大怪我を負った事。全治4ヶ月~6ヶ月とされており、本人は順調にリハビリをこなしているようだが、復帰したとしてもトップパフォーマンスが中々戻らないという事態が起きるのではないのかと不安である。

 レスターでのここ2シーズンの活躍によって19年11月にはポルトガル代表にも選出。そこで代表初ゴールを決めるなど今後のキャリアはクラブレベルに留まらない明るい未来が待っているはず。そしてEUROの延期は彼に取っても間違いなく大きな追い風になるだろう。

 その為にもまずは焦らず怪我を治してもらい、彼のトップパフォーマンスが戻るのを心の底から願うばかりだ。

ジェームズ・ジャスティン

評価:A | GOOD |

 ダニー・シンプソンの退団により右SBのバックアッパーが居なくなった為に、League one(3部)のルートン・タウンからやってきた20歳のプレーヤー。

 3部から個人昇格してきたこともあり、プレミアの環境になれる為の適応が必要であった為、当初は出番が限られていたが、出た試合では常に印象的なパフォーマンスを示してくれた。

 右SBのバックアッパー的な立ち位置ではあるが、左SBやボランチ(ルートンでの出始めはボランチが本職)でもプレーする事が可能で、28節のアストン・ヴィラ戦では怪我をしたチルウェルの代わりに左SBでスタメン出場。これはフクスではヴィラのウインガー達にスピード面で後手を踏むと判断したロジャースがスピードのあるジャスティンを起用したのだが、まさにこれが的中。

 自慢のスピードで守備対応も不味い対応も一切なく、攻撃では左ウイングを務めたバーンズとの連携はお見事で、バーンズがボールを持てばオフザボールで背後に走りだす動きでバーンズにスペースを作り出したりと、バーンズと初めて組んだとは思えない連携の良さを披露。

 ロジャースは元々ジャスティンを「オフザボールの動きはチームトップクラス」であると高く評価しており、彼の強みがまさにそのままヴィラ戦で現れていた。

 そして元ルートン監督のミック・ハーフォード氏もジャスティンを「攻守両面で現代的なSBとしての強みを兼ね備え、プレミアでやっていけるスピードと強さがある。そして中盤ではタイトなスペースでも巧みにボールを扱い、逆足も器用に扱える」と強く太鼓判を押す。

 リーグ戦再開後は負傷したリカルドに代わって右SBをこなすだけでなく、チームが3バックを採用した時には右CBとしてプレー。後方からのビルドアップに貢献しつつ時には攻撃参加もするなど、Sheffild unitedのオコネル顔負けのオーバーラップを披露。

 数か月前にお父さんを病気で亡くしており、リーグ再開後は精神的に非常にタフであったと想像するが、複数のポジションを質をもってこなしていたメンタリティーは賞賛に値する。

 一応A評価にはしたが、彼に即戦力となる働きを少なくとも今シーズンは求めていないし、今シーズンは適応の年という事を考えればここで評価を付けるのは少し時期尚早な気もするが、来シーズン以降も様々なポジションでの活躍を期待したい。

MF

エルフレッド・エンデディ

評価:S | MVP |

 今のレスターで一番居なくなって困るのは間違いなくエンデディだろう。彼が居るいないではチームが大きく変わってしまう。レスターにとってそれほどの価値があり、重要な選手である。

 そもそものボール奪取能力は非常に高くタックル数はリーグ2位の128。1位のワン・ビサカに僅かながら及ばず、3年連続タックル王の称号は逃したが、多い時には1試合で8回程タックルをするのがもはや恒例行事。

 4-1-4-1のボランチでフィルター役として機能し、そしてエンデディがいる事によって彼より前に居るポジションの選手達が安心して攻守両面で前に飛び出すことが出来る。

 そして過小評価されがちなのが足元面。レスターの後方からのビルドアップでは大抵2CB+エンデディ、時に+左SBをメインにして作るが、前線へ送るパスはマークで消されていなければ必ずエンデディを経由し、前線へと展開される。両サイドそして前線に展開力のある彼がいてレスターの攻撃は初めて成り立つのである。

 レスターのオープンプレーの攻撃は約2割がエンデディから始まるのだが、これはリーグ2番目の数字で、この数字は如何に攻守両面において彼の存在が重要なのかを示しているだろう。(彼のボール奪取機会が多く、そこから攻撃が始まるというのもあるが)

 痛恨だったのはエンデディが1月に練習中右膝の怪我で戦列を離れたことで、これと同時にチームの成績は急降下。彼が出場しなかった5試合で得られた勝ち点はわずか2。

 これは守備面での影響が大きかった訳ではなく、主に代わりとして出場したハムザ・チョードリーがパスを出せずにビルドアップが成立せず、それまでの攻撃の組立が不可能であったことが主な要因。欠場した5試合での得点数は4点に留まり、特に2月は4試合中3試合で完封負けを喫するなど改めて彼の存在感が浮き彫りとなった。

 エンデディが1人居ると居ないとでは大きくチームが変わる。彼はそれくらいの存在なのだ。彼の活躍と不在時の穴の大きさという意味でMVPに選ばせてもらった。

パピィー・メンディ

評価:C

 昨シーズンのピュエル政権下ではエンデディと2ボランチを組むことが多かったメンディだが、1ボランチの起用をメインとするロジャース就任以降は出番が減少傾向に。今シーズンはエンデディとチョウドリーに続くボランチ3番手という扱いで、プレミアの過密日程が始まる12月末までの出番は1試合のみだった。

 そこから過密日程のターンオーバー要因やエンデディの負傷により、チョウドリーを差し置いてスタメンで使われる事もあったが、1月29日のウェストハム戦で膝を負傷。約1ヶ月程の離脱をしてしまったのはその後一時的に復帰したエンデディが再び離脱したこともあり、その結果2月は本職ボランチがチョードリーしか居ない状態となったのはチームとして痛手だった。

 個人的には彼が離脱しなければエンデディの穴を完全に埋める事にはならないにせよ、失速した2月の2分2敗という数字は多少変わったのではないかなと思う。

 契約自体は今シーズンまでで、退団が濃厚とされていたのだが、コロナウイルスによるチームの財政的な影響でここ最近状況は一変。契約延長の話が出始めており、ロジャースも「契約の話を続けている。彼は我々のスカッドにとってとても重要なメンバーで、キープしたい選手の1人」と語っている。

   財政的な影響を持ち出されると致し方ない部分はあるが、出来ればメンディーではなく、エンデディの控えとして相応しい最低限の守備能力と展開力を持つボランチが欲しいのが本心。

 一方メンディーの去就自体はここに来てカタール行きの噂が出るなどまだまだ不透明。チームはメンディーを残したいということだが、もし彼が移籍するにしても、クラブはこの機会をエンデディのバックアップを獲得する絶好のチャンスとして捉えなければならない。

ハムザ・チョードリー

評価:C | BAD 

 試合中継を見れば人目で分かるアフロヘアーが特徴のレスターアカデミー出身のプレーヤー。

 今シーズンは一応エンデディのバックアッパーとしての役割を担っていたが、これまで述べてきたようにいざエンデディが負傷した時には残念ながらバックアップの役割をうまく果たすことは出来なかった。

 その原因として攻撃を組み立てるには彼の足元の技術が足りないという部分。エンデディ離脱直後の22節サウサンプトン戦ではエンデディが居た時と同じ形でビルドアップをしようとした結果、彼1人で攻撃を全く組み立てる事が出来ず、攻撃に大きな停滞感をもたらした。

 これを解決する為にIHの2人(ティーレマンス、マディソン、プラート)の内1人がチョウドリーの横まで落ちてきてビルドアップをサポートするシステムに変更。

 だがこれにより、好調時のようにIHがサイドに顔出してSBとwingerの3人での人数をかけた攻撃の組立が不可能に。また局面を打開出来る個を持つ選手がレスターにはいないので1月から2月にかけて大きな失速を招く原因ともなった。

 そしてタックルの判断もまだまだの部分があり、時に相手選手を大きく削ってケガをさせることもあった為、相手チームの監督から批判されることもあった。

 ただ一概に彼の責任と言えない点があり、それは彼自体がローン先も含めてコンスタントにプレー時間を確保出来たシーズンが殆どない所。上記のような判断ミスも恐らくここが影響しているのではないかと推測している。

 この先十分な経験を積めないままエンデディのバックアッパーでいると弊害が大きく、大きな変化がない限りは彼の成長は見込めないのではないかと感じている。それでは今後のキャリアにも大きな影響を及ぼしかねないと感じるので、ローン移籍も含めてどの選択が彼の為になるか適切な判断が必要である。

 バックアッパーの役割を果たせなかったという意味でのBADと今後の成長がある(ないかもしれない)と期待を含めてC評価。

ジェームズ・マディソン

評価:A

 2シーズンを目を迎えたマディソンであるが、今シーズンは様々な点で真価が見て取れる。昨シーズンはオープンプレーでのミドルシュートの質が精度に欠けていたが、今シーズンはその質が向上。

 中でも21節のニューカッスル戦で見せたショートカウンターからのミドルは逆足でこれだけのキックが蹴れてしまうのかと驚きが隠せなかった。

 直近2シーズンの間で、マディソンはボックスの外から8ゴールを決めており、これはリーグトップの数字。FKを含めてミドルシュートの精度の高さは際立っていることが伺える。

 アシスト数自体は3つに留まっているが、依然としてチャンスを演出する能力は非常に高く、キーパスの数は79回でリーグ5位の好成績。アシスト期待値というスタッツで見れば、マディソンは5.02で少なくとも5アシストはしても全くおかしくない数字。アシストは自力で頑張れる範囲というのは限界があるし、決定機の数をみても数字はそのうち勝手に付いてくるだろう。

 地元メディアからチームが不振に喘いだ時は「マディソンは8月からオープンプレーでアシストを記録していない」と批判されていたが、これは上述した通り少なくとも1月以降はエンデディの離脱により、ビルドアップをサポートする目的でマディソンが頻繁に深い位置まで降りてくる為に、オープンプレーでは必然的にゴールからの距離が遠くなっているだけの話である。

 そして今シーズンはチーム方針とはいえ、守備もサボらず前にプレスを駆けたり、しっかり戻って守備対応している所も評価してあげたい。

 実績自体は十分イングランド代表に選ばれてもおかしく無いレベルだが、ここまでの出場は1試合のみと十分な出番を得られてはない。ただ招集後に体調を崩して代表を離脱したり、代表ウィーク直前に怪我するなど自業自得の部分があるのも事実なのでここから是非頑張ってもらいたい所。

 リーグ中断でマディソンとの契約延長の話は一時はストップしたものの、練習再開後は契約延長の話が裏で進んでいて、今はその最終段階。報道によってバラつきもあるが給与面でも中々の高待遇を貰えるらしく、額だけで言えばチームの中でもトップクラスの週給を貰うことになりそうだ。

 本人は子供の頃からman utd ファンらしいが、恐らくシーズン開幕前には新契約が正式に発表され、どこに移籍することもなくレスターでの3年目を迎えるだろう。

ユーリ・ティーレマンス

評価:B-

 昨シーズンの冬にモナコからレンタル移籍で獲得し、13試合で3ゴール、4アシストと驚異的な数字を残したティーレマンス。元々買取OPはついていなかった為、夏に粘り強い交渉の結果完全移籍で獲得。当初移籍金は£40mと噂されていたがこれは事実ではなく、実際は£32m+ボーナスで収まっている。

 イングランドに来て豆料理を好んで食べたり、レスターでの生活を「色々なコミュニティや文化があり、落ち着いて生活できる」と言ってくれるのは嬉しい限りである。

 ただ今シーズンは調整ミスなのか、オーバーウェイトの状態で開幕を迎えたせいで、キレがなく不用意なボールロストが目立つように。しかも自陣で危険なロストをする為、時にカウンターでピンチになることもしばしばあった。

 そこでロジャースはその体重を減らそうと、ティーレマンスをリーグ戦以外でも格下相手のカップ戦での起用を増やしたりと様々な工夫をしたが、ベルギー代表でも試合をこなしていることがあり、今度は疲労が重なってしまい特に1月はパフォーマンスが低下。デニス・プラートに変わってベンチを温めることが増えていった。

 ただそれが良い方向に働き始めたかは分からないが、徐々にではあるが体のキレとコンディションは上がってきた印象。事実リーグ戦再開後はエンデディとの2ボランチを組みながら攻守において躍動。特に攻撃面ではマディソンをケガで欠くチームの中で、自身でボールを奪ってからの切れ味鋭いスルーパスで幾度となくチャンスを演出した。

 個人的にはIHでプレーするよりも、2ボランチの一角としてプレーした方が、相手のファイナルサードまで無尽蔵に出てプレスをかける機会も減って90分スタミナが持ちやすいし、配球面での視野の広さを生かすなら1列下のポジションで今後もやっていった方が良いのではないかと感じている。

 ローン期間中の活躍があまりにも素晴らしかった為、彼に対する期待値は非常に高く、今シーズンのパフォーマンスには納得していない人も多いのは事実だが、多くのサポーターは彼の本当の姿を知っている。

 初めてプレミアのフルシーズンをこなす事はまして代表でも試合に出ているのなら尚更厳しいはず。今シーズンの反省を活かしてもらえれば来シーズンは大いに活躍を期待出来るだろう。

 リーグ再開後のパフォーマンスを見るに評価を変えようか迷ったが、元々の期待値を含めてB-止まり。

デニス・プラート

評価:A | GOOD |

 ロジャースが夏にマディソンとティーレマンスに次ぐ中盤の獲得を強く熱望しており、結果移籍市場最終日にサンプドリアからプラートを獲得したのだが、これが大当たり。

 シーズン序盤はマディソンとティーレマンスの座を中々奪う事は出来ず、交代要員やカップ戦での出場に限定されていた。だが、シーズンが進むにつれて中盤ダイアモンドのフォーメーションでマディソン、ティーレマンス、エンデディと同時起用されたり、1月からは不振のティーレマンスに変わってスタメンに抜擢されることも増えた。

 守備対応も上手くピンチになればBoxの一番奥深くまで戻り、体を張ってピンチの芽を摘み取る事が出来るのは、セリエAで3年プレー+サンプドリアでアーセナルのトレイラと2年間コンビを組んでただけあるなとつくづく感じさせられる。

 攻撃でもチャンスになれば常にBox内まで後方から飛び込んで攻撃に絡む事が出来る。攻守両面であちこち色んな所に顔を出すのでこういう気が利く選手はキチンと評価してあげたい。マディソンとティーレマンスは異なり、box to boxタイプなので2人とは違った変化をもたらすことができる。

 さらにIHのポジションだけでなくボランチもこなすことが出来るのもプラス要素。27節のマンチェスター・シティ戦ではエンデディ、メンディ怪我、チョードリー出場停止と本職ボランチ3枚全員欠場という中でボランチでスタメン出場。支配され続ける中で5-3-2の中盤3枚で両サイドにスライドをする体力的にもタフで非常に難しい展開となったが、一切バテることなく交代する85分まで試合を安定させてくれた。

 セリエAからプレミアの移籍は守備者にとってスピード面で相当な変化を強いられると想像するが、これに不自由なく適応し本人も「うまく適応し、改善できている」と話しており、適応能力の高さも伺える。

 プラートを取っていなかったらより大きな不振になっていたのではないかと思うと心の底から獲得して良かったと思える素晴らしい補強だった。

FW

アヨセ・ペレス

評価:B-

 昨シーズンの段階でスペイン行きの噂がかなり上がっていたが、レスターの野心のあるプランに魅力を引かれ、レスター移籍を決断。ただその移籍1年目出来を評価するのはかなり難しいかもしれない。

 まずそもそも昨年の段階から右ウイングの補強が必要だったレスターにおいて、ロジャースはとにかく「ゴールに絡める選手」を求めており、そこを重視した結果、昨シーズン12ゴールを記録したペレスを取ってきたと推測するが、問題は彼の適正ポジションが9番のポジションなこと。

 この事実は本人も認める所で「動きや守備時のポジションはまだまだ学ぶことがある」と語っている。右ウイングとして使われることが主だったが、サイドに張ってそこからスピードで剥がせる選手でもないし、ましてや本職のポジションではない彼に純粋なウインガーの働きを求めても難しい部分がある。

 その結果試合で消えてしまったりすることがあるが、適正ポジションで使われてる訳ではないので、全てが彼の責任とは言えない部分もある。ただ2~3試合に1回のペースで足元の収まりが異常なまでに悪くなる時があり、度々ボールロストして流れを悪くするのは是非改善してもらいたいポイント。

 リーグ戦再開後はチームが3バックに変更したことで、中央のポジションを務める事が増えたが、やはり中央だと明らかにプレーの質が上がるのは事実。ペレスが得意とするライン間でボールを受ける動きは個人的にはチームトップクラスだと思っているが、この動きは中央のポジションを取れば取るほど、良さは生きるのだろうなと常々思う。

 結果としてリーグ戦は8ゴール、4アシストという成績だったが、良くも悪くも期待を裏切らず、期待値の範囲内に収束したなという印象。

 そして来シーズンはどこのポジションをやるにせよ、シティのベルナルド・シウバやマフレズではないが、2年目でよりチームにフィットし、活躍する姿を期待したい。

ハーヴィ・バーンズ

評価:B+

 チルウェルやチョードリーと同様にレスターアカデミー出身の若手プレーヤー。

 今シーズンは主に左ウイングのポジションで実質的にレギュラーの地位を確立。一時期パフォーマンスを落としたことと決定力はマイナスポイントではあるが、年明けから3月の中断期間までは公式戦12試合で6ゴール2アシストと大暴れ。リーグ戦の6ゴール中5ゴールが2020年になってから生まれたゴールである。

 特に年明けからは最初から中央寄りにポジションを取りつつ、そこから逆サイドからのラストパスを貰ってゴールを決めるシーンがかなり増えた。このプレースタイルでゴールを量産しているので、この動きにより多くの自信を得たのだろう。ペレスほど露骨ではないにせよ、バーンズも中央に置くと良い動きを見せるので、今後も中央で使ってみるのもいいかもしれない。

 そして意外と人を使ったりするのがうまく、特に今シーズンは時折みせるスルーパスが冴え渡り、アシスト数も8を記録。これを上回るレスターのプレーヤーはいない。逆足もそこそこ器用に使えるのもプラスポイントである。

 プレミアフルシーズンデビューとなった年に6ゴール、8アシストという成績を残せるなら、アカデミー育ちの選手としては順調なステップを歩んでいると言っていい。

 個人的な感想だがChampionsipの前半戦だけで9ゴール、6アシストと図抜けた成績を残せるなら、多少の波はあるにせよある程度はプレミアでも十分通用するのだなとバーンズで再認識させられた。そして彼の場合はLeague oneで半年ローン1回とChampionsipで半年ローン2回を経験し、どこでもコンスタントにスタメンでプレーしたのはやはり大きいなと感じさせられた。

 A評価にしようか迷ったが、出来ればシーズンを通して一貫性のあるパフォーマンスをして欲しいのとシュート精度を上げて欲しいという意味でB+止まり。

マーク・オルブライトン

評価:D

 今シーズンはバーンズとペレスが主にサイドのスタメンを張ることが増え、出番自体は減少傾向だが、守備でのハードワークさは30歳になっても衰えることはない。

 この手のオールドファッションタイプの選手は限界を感じることが一定の頻度であるのは事実だが、ロジャースはオルブライトンの守備での働きぶりを高く評価している。

 FAカップ5回戦のバーミンガム戦後にはチームがそれまで5試合勝利無しという不振が続いてた中で「彼はここ数週間で我々に足りなかった強度とテンポをチームにもたらしれくれた」とロジャースはオルブライトンを大絶賛。

 この試合で決勝ゴールをアシストしたこともあり、次のリーグ戦となる28節のヴィラではスタメン出場。古巣相手に2アシストとこれ以上ない恩返しでチームの勝利に貢献した。

 (自分の)評価が低い理由として、明らかにチームスタイルと彼のスタイルが噛み合っておらず、彼のオールドファッション的なスタイルだと上記で述べたように限界を多く感じること。今シーズンは彼の持ち味であるクロスも、基本的には空振りが多い。(チームにターゲットマンがいないのもあるが) 

 だが、チームにターゲットマンがいないのなら、マイナスやニア、ファーサイド方向にグラウンダーでアーリークロスを使い分けて入れるべきである。そうすればまだアシスト数も増えて、相手の脅威になりそうだが、ほとんど中央目掛けてのふんわりクロスしか蹴らないので、ワンパターンだなという印象である。

 (こういうクロスを使い分けて蹴ってくれるのが一番の理想形なのだが…)

個人的な意見だが、改善が見込めず、チームが今後も6位以内でフィニッシュを狙うのなら、彼とは決別して新しい選手を獲得すべき時のように思える。(CLを目指すなら尚更) ただ恐らくそうはならないので、ウイングとしてクロスのパターンを増やして、ハーフスペースの最深部にフリーランするなど新しい事を覚えてほしい所なのだが…

ディマリ・グレイ

評価:C

 開幕から2試合連続でリーグ戦のメンバーから外れるなど、レスター在籍5シーズン目でいきなり難しい状況に立たされたグレイだったが、途中出場で出番を得ると悪くないパフォーマンスを見せるように。

 特に11月はグレイのスーパーサブ的な活躍が目立つ試合も多く、彼の活躍がなかったら勝ち点を取りこぼしていた試合もあったかもしれない。

 またチームが年末の過密日程で前節からメンバーを9人入れ替えて戦った12月28日アウェーウェストハム戦ではリーグ戦約4ヶ月ぶりとなる先発出場。開始早々にPKを止められるものの、後半にシーズン初ゴールとなる決勝点を決め、シティとリバプールに連敗した嫌な流れを止めてくれた。

 リーグ再開後も途中出場でチームに大きな貢献を見せ、投入された30節のワトフォード戦、34節のアーセナル戦ではチルウェル、ヴァーディーのゴールをそれぞれアシスト。グレイがプレミアデビューをした2016年1月以降で彼は途中出場から8アシストを記録しているが、この数字を上回るプレミアリーグのプレーヤーは他にいない。

 今シーズングレイの途中出場における活躍は素晴らしかったし、そこで活躍するのは一向に構わないのだが、スタメンになるとまるで別人のようになってしまう一貫性の無さが大きなマイナスポイント。

 途中出場で活躍→次節スタメンで使ったらダメということがあまりにも多すぎたことで、それになんとなく察しがついたであろうロジャースはいくらグレイが途中出場で活躍しようとも、スタメンで使うことはシーズン終盤になるにつれてしなくなった。

 そして彼の契約年数が2021年までしか残っておらず、ニューカッスルやスパーズが関心を示しているという。

 一方で監督のロジャースはグレイの事を「間違いなくキープしたい選手」として名前を挙げており、彼の才能を評価している。

 グレイ自体にどれだけ残りたいという気持ちがあるかは不明だが、今後の行く末は彼の決断に全てかかっていると言っていいだろう。

ジェイミー・ヴァーディ

評価:S | GREAT |

 縦のスピードやゴールへの嗅覚、得点後の相手を煽るセレブレーションは33歳になっても衰えることを知らない。33歳での得点王はプレミアリーグ最年長記録。年齢的な事を考えれば今シーズンがキャリアハイと言っていいだろう。

 クロード・ピュエルのポゼッションスタイルには中々苦労し、自身もこのスタイルは適していない事を認めていたが、ロジャースは「サイドまでボールは追いかけなくていいし、降りてこなくてもいいからとにかくBOX内にポジションを取れ」とヴァーディにアドバイス。

 今年のゴール量産はこのようなアドバイスであったり、ピュエルと異なり英語を母国語とするロジャースとしっかりコミュニケーションが取れる事が大きな要素の1つであろう。

 そしてBOX内に留まる事が増えたこともあってか利き足ではない左足でのゴールも多く、左足で9ゴールを決めている。これは通算6シーズンプレミアでプレーした中でもトップの数字で、彼の得点パターンの多さも伺える。

 ヴァーディの相手の背後から「斜め」にスプリントする動きは彼の賢さが全面に現れており、この動きで一気に相手を剥がしてシュートまで持ち込むこともあれば、味方にもスペースを作り出しシュートチャンスを演出する。

 そんなヴァーディの事をロジャースは常に「リーグ最高のストライカー」と賞賛し、例えヴァーディがクリスマスから2月の終わりまでリーグ戦7試合連続無得点が続いても、「ヴァーディにチャンスを供給出来ていないチーム全体の責任」と擁護し続けた。

 ワンチャンスを必ずモノにし、得点パターンは豊富で、チャンスクリエイトも出来て、PKを蹴らせたらほぼ外さない。これを出来るのはレスターで間違いなく彼1人しかいない。

 そしてチャンスクリエイトという意味では興味深いデータがあり、リーグ中断前までのプレミアリーグでは26試合の出場で16回のキーパスだったのに対して、リーグ戦再開後の9試合だけで16回のキーパスを記録。これはイヘアナチョと2トップを組む機会が増えたことで、イヘアナチョがボックスに残りつつ、一方ヴァーディはサイドに流れてチャンスを演出するという形が幾度となく見られた。

 ただ1つ懸念材料を上げるとするなら1月以降臀部の怪我を3回もしたこと。小さな怪我ではあるがこれほど怪我をするヴァーディは過去になく、来シーズンELを戦う上では大きな不安材料。そして年齢的にもどこまでトップパフォーマンスを続けられるかは不透明。だからこそ夏の移籍市場から彼の後釜という意味での補強を検討していきたいところだ。

ケレチ・イヘアナチョ

評価:A | GREAT |

 もしかするとロジャースが就任以降一番成長したのはイヘアナチョなのかもしれない。

 マンチェスター・シティから17年夏に移籍して以降中々活躍することが出来ず、特に昨シーズンはサイドで起用されたり、シーズンが進むにつれて結果を残せない中で使われ続けたが、段々自信を失っているようにも見えた。

 11月まではリーグカップの出場のみでそこで4試合4ゴールと試合に出れば点を取るような状態だったが、リーグ戦で1試合も使われることはなかった。

 ところが転機が訪れたのは12月1日のエバートン戦。1点ビハインドの62分から途中出場するとまずは67分にヴァーディのリーグ戦7戦連発となる同点ゴールをアシスト。そして94分には劇的な勝ち越しゴールを決め、チームのリーグ7連勝に貢献した。

 この試合以降はリーグでもスタメン起用が増加。ヴァーディと2トップを組んだり、ヴァーディが負傷時には代わりに1トップで出場し、最終的には公式戦26試合で10ゴール4アシストを記録。特にカラバオカップの準決勝アストン・ヴィラ戦の2試合ではチームの全得点を挙げる活躍を見せ、1人気を吐いた。

 身長が184センチもあり、前線の選手の中では背が大きいため、ロングボールを放り込んでも足元の収まりがかなり利くし、守備も中盤に下がってきて積極的にプレスバックをする姿はポイントが高い。

 そしてイヘアナチョはロジャースの事を以下のように絶賛する。

「ロジャースは環境と雰囲気、選手のメンタリティーを変えてくれたんだ。スタッフも含めて皆がハッピーさ。彼は良い友達であり、良いコーチ、良い人間だ。だからレスターにとってはこれ以上ない存在だよ。彼は自分を人間、選手として今まで以上に自分を優れたものにしてくれたんだ」

 出番が限られている中でもトレーニングで来たる時に備え常にハードワークを続け、限られたチャンスを逃さずに結果で明確な答えを示すその姿は素晴らしいという他の何者でもない。これが人間として成長させてくれた証なのかもしれない。

 フルシーズンで出ているわけではないが、ヴァーディがいない中でよくやってくれたし、練習ではハードワークをかかさなかった姿勢は素晴らしく、シーズン序盤あれほど使われなかったのは彼の責任でもないのでA評価。

 最後に個人的な意見だが、代表でもチームメイトのエンデディが「イヘアナチョがPKを外したことは見たことがない」と大絶賛するので、彼がPKを蹴る姿も見てみたい所である。

おわりに

 最後までお付き合いしてくれた方はありがとうございました。コンパクトにまとめようとしましたが、結局かなり長くなってしまい、見る側は相当大変だったと思います。お疲れさまでした。

 このような選手の評価を書いてみると、中々評価基準を設けて評価するのが難しい選手がいるのも確かですが、レスターファン以外の方にも参考にしてもらえればなと思っています。

 ですが自分の意見が全て正しいなど微塵も思ってないですし、選手の評価に関して言えば「この選手はもっと高くor低く評価されるべき!」というように色々な意見があって然るべきだと思っているので、異論があるなら大いに受け付けますし、このような機会はファン同士の意見が活発になって良いのかなと思っています。

 そして自分にこのような企画を提案してくれたDan.(小津 那)さんには感謝の思いでいっぱいです。自分が無理を言ってB+やB-などの評価方法を加えたいということに賛同の意を示してくれたり、一度提出した物を何度も再修正するという迷惑行為を繰り返しても快く受け入れてくれたのは非常にありがたかったです。この場で感謝申し上げます。ありがとうございました。

 後宣伝になりますが、レスター関連のブログを自分を含めた3人で運営していて、レスターに関する記事(地元紙の翻訳や試合分析など)を書いてたりしてるので良かったら覗いてみてください。

 最後になりましたが、みなさんの今後のプレミアライフに花が咲いていることを祈ってこの記事を締めさせて頂きます。ここまで読んでいただきありがとうございました。

 Picture Leicester city Gallery

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次回はマンチェスター・シティ編!!

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ライター紹介

オークウェル @Oakwell_lcfc                    イングランドフットボールをこよなく愛する20歳。 特にプレミア中下位クラブが大好物

僕の昼食がちょっとだけ華やかになります