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みんなで作るプレミアリーグ通信簿 〜トッテナム編〜

はじめに

読者の皆さん、いかがお過ごしだろうか。筆者のライである。今シーズンはコロナウイルスパンデミックの影響で世界中のリーグが中断、または中止となってしまう奇妙なシーズンになった。幸いプレミアリーグでは中断は3カ月にとどまり6月中旬に再開、リバプールがプレミアリーグ初優勝を決めたり、ワトフォードは三度の政権交代を経験するなどいろいろな意味で記憶に残るシーズンだったと思う。

さて、話は4月下旬にさかのぼる。週刊LFCマガジンのDan. (小津 那)さんから「みんなでつくるプレミアリーグ通信簿」なる企画のお誘いをいただいた。自分が応援するチームの選手、監督をコメントと共にS(非常に良い)からD(非常に悪い)の5段階で評価するというものだ。長年「真面目に文章を書く」という行為から遠ざかっており、こういったレビューを書くのも初めてで少しばかり不安に思ったが、非常に興味をそそられた。というわけで、拙い文章ながら自らが応援するトッテナム・ホットスパーFCの2019/2020シーズンを評価させてもらった。評価するのは21名の選手と二人の監督。特に、21名の選手のうち強く印象に残った選手にはMVP, Great, Good, Bad, Worstのタグを利用し追加で評価していく。記事の最後に軽い自己紹介も含んでおいたので私のことを知らない人はぜひ目を通してほしい。

GK

ウーゴ・ロリス

評価: B

ノースロンドンダービー(アウェー)のロングシュートに対するセーブやホームのサウサンプトン戦で見せたFKセーブ、ホームレスター戦のアジョセ・ペレスのボレーに対するセーブなどから見て取れる通り人間離れした反射神経はいまだ健在。2月に行われたマンC戦でもペナルティをセーブしている。しかしながら今シーズンも判断ミスや足元のミスからファンの不安をあおるシーンが見られた。ホームでサウサンプトンを迎えた一戦で見せた謎のフェイントミスからの失点はまさにそのうちの一つだ。今季は10月上旬から1月下旬まで負傷離脱しており、復帰後、特にリーグ再開後はキャプテンとしての一面を見せる場面が目立った。総合評価としてはB評価が妥当だろう。

パウロ・ガッサニーガ

評価:B

10月上旬のブライトン戦で試合開始早々肘を脱臼し離脱を余儀なくされたロリスに代わって投入されたアルゼンチン人GK。ファンからはスパーズのイケメン軍団筆頭と認識されており、皆から愛されている選手。昨シーズンはカップ戦を主戦場とし、驚きのセービングを見せていたが今季は活躍の場をリーグ戦へ移した。アウェーのリバプール戦ではスーパーセーブを連発し、モリニューで行われたウルブス戦の終盤でもボールをゴールライン上から搔き出すようなセーブを見せるなどトッテナムの今シーズンの成績に多大なる貢献を果たした。しかしながらチェルシー戦での謎の飛び蹴りやウルブス戦での防げたはずの失点など、せっかくの好印象に傷をつける場面もあった。ロリスの復帰後はベンチスタートになってしまったが、ゴールが決まるといち早く喜んだり、セレブレーションに駆けつけたりするなどクラブ愛を見せた。総合評価はB。

DF

トビー・アルデルヴァイレルド

評価:B

ファンに愛されるベルギー人CBコンビの一人。今シーズンはプレー時間がクラブ1位で、ポチェッティーノ前監督、モウリーニョ監督の両名から厚い信頼を置かれていた。衰えのせいか身体能力が昨シーズンに比べ低下しており、何気ないパスから失点につながる状況を作り出してしまったり、フライパスで裏に抜けられた時に対処が追い付かないなどといったアジリティ、リアクション面の低下が目立った。しかしそのロングフィード精度は未だリーグ屈指で、ボーンマス戦では自陣から2つのゴールを作り上げた。リーグ再開後は一時ダイアーにポジションを奪われるもののスタメン復帰後には安定したパフォーマンスを見せ、新スタジアム初のノースロンドンダービーでは決勝弾となるヘディングも決めるなど印象に残る活躍を残した。しかし、33試合に出場していながらクリーンシートが僅か7つにとどまっているという点を考慮するとA評価には少し物足りないと言えるだろう。

ヤン・フェルトンゲン

評価:C

C評価の同選手は2012年夏にトッテナムに加入してから長い間チームを支えてきた一人。4月24日に33歳の誕生日を迎えるなどサッカー選手としてはキャリア終盤にとらえられる年齢ということもあり今シーズンは出場機会が低下。本職であるCB以外にも左サイドバックとして起用される事もあった。GKミシェル・フォルムと同じく最終節後に契約満了での退団が公式に発表されたフェルトンゲンだが、限られた出場時間の中でもインパクトを残している。雨降るモリニューで見せたAT勝ち越しヘディング弾とスライディングセレブレーションはファンの心に焼き付いている光景であることは言うまでもない。更にはホームでボーンマスを迎えた試合、3-2で迎えた試合終盤にシソコのミスから裏に抜け出したウィルソンにPA内でスライディングを決め、同点弾を防いだ。このタックルのお陰でスパーズは勝ち点3を確保。非常にタイトな結果となった今シーズンを考えるとクラブのヨーロッパリーグ出場権確保に大きな影響をもたらした。この様に良いシーンも浮かぶが、総合的な印象は決して良くない。長年の相方、アルデルヴァイレルド同様スピードが落ち、足の速い選手に対する対応が明らかに追いついていない。過去の素晴らしいパフォーマンスを知っているからこそ、今季は期待外れといった思いが強いのかもしれない。契約を延長しなかったことはファンに衰えた姿を見せずにレジェンドとして退団できることを考えるとベストオプションだったのかもしれない。

ダヴィンソン・サンチェス

評価:B

2017/2018シーズンにアヤックスから当時のクラブ記録となる4200万ユーロの移籍金で加入したサンチェス。いまだ24歳と若く、世代交代要員として将来的にはスタメンの位置を確固たるものにすることが期待されている。特筆すべきはそのフィジカル。代表戦でもネイマールをタックルとともに電光看板に突き飛ばすなどインターネットで話題になったがそのフィジカルはリーグ戦でも発揮されており、相手を背負いながらも微動だにせずボールをプロテクトするシーンが多くみられた。今季はボーンマス相手にゴールを決めたものの直後にVARがハンドボールの判定を下しノーゴール。まれに見ている側を心配にさせるプレーもあるが、それも守備面の評判が良いモウリーニョ監督の下で少しずつ修正されて来ているように見える。B評価。

ジャフェット・タンガンガ

評価:A | GOOD |

今シーズン良い意味で驚かされた選手の一人だ。トッテナムのユース育ちで、ホームのリバプール戦でプレミアリーグデビューを果たした。モウリーニョ監督がトッテナム監督に就任した時にコーチに「彼はクリスティアーノ・ロナウドをマークした男だ、彼の存在を世界に示さなくては」と言ったことはファンの間では有名な逸話だ。守備の鬼であるモウリーニョのお眼鏡にかなった若手DFはリーグデビュー戦でフィルミーノのシュートをライン上でブロック、そして自慢のフィジカルでマネとサラーを抑え込むなどし、その後の試合でも大活躍。リーグ戦のみならずカップ戦でもその実力を示した。左サイドバックとして出場したワトフォード戦では多少不満の残るパフォーマンスだったものの、CBとして出場すれば安定したハイレベルのディフェンス、右サイドバックとして出場すれば本職がCBとは思えない程の推進力を見せた。ファンからはレドリー・キングの再来になることを期待されているが、このままのペースで成長、活躍していけば決して夢ではないだろう。出場試合数は少ないものの、出場時のパフォーマンスを見ればA評価は納得だろう。

ダニー・ローズ

評価:D | WORST |

長年トッテナムに仕えてきた左サイドバック。10年ほど前のリーグデビュー、アーセナル戦で見せたスーパーボレーはファンの間で伝説となっているが、そんな彼だからこそ不満だ。ファールも多く、不必要な場面でイエローカードをもらうことが多かった。それはどうやらニューカッスルへローン移籍した後も変わらないらしい。11月にモウリーニョ監督が就任してからは同監督との不仲をメディアに強調、チャンスを与えられることすらなかったと不満をさらけ出すも監督に「大事な試合で活躍するチャンスを与えたが、彼はそれをつかめなかった」と公にコメントされ、その後半年間の期限付き移籍でニューカッスルに加入した。トッテナムの素晴らしい時代、歴史を築いてきた一人であるが故に彼が去るのをつらく感じるファンもいるだろうが、報道によればチームの雰囲気を落とし、ピッチ上の貢献も少ない。夏の売却候補筆頭で間違いないだろう。

ベン・デイビス

評価:B

ファンからの批判も多いが、個人的に好印象を持っている選手の一人だ。今季は負傷でリーグ戦12試合を欠場。しかし出場すればトップクラスではないもののディフェンスに安定感を与えた。モウリーニョ監督就任直後は前線に上がらない戦術で攻撃時にはCBと3バックを構成していたが、リーグ再開後は積極的なオーバーラップからチームにワイドなエリアでのオプションを与えた。先ほども触れたように、好印象こそ残していているがトッテナムがタイトルを狙い、次のレベルに昇るためにはデイビスのままでは無理があるという意見には賛成せざるを得ない。これらを考慮するとB評価が妥当なのではないかと思う。

セルジュ・オーリエ

評価:B

ファンからはネタ枠として認識されているオーリエ。多彩なゴールパフォーマンスにSNSに投稿されるロッカールームでのダンス、熱唱、ファッションセンスなどピッチ上、ピッチ外でも常にファンにエンターテインメントを届けているプロ意識の塊。このような認識を受けているオーリエだが攻撃面での評価は高い。ワンタッチで上げるクロスは異常に精度が高く、ピンポイントで選手に合う素晴らしいクロスだ。ウェストハム戦では素晴らしい軌道を描くピンポイントなクロスからケインのヘディング弾をお膳立てするなど、攻撃面での貢献度が非常に高い。ゴール面では正式な記録に残るものはカットインから決めたホーム・ウルブス戦でのゴールだけだがパレス戦でもファン・アーンホルトのオウンゴールを誘発し、レスター戦でもVARで無効になってしまったもののゴールを決めている。課題はディフェンス面だ。スタッツを見る限りでは74%のタックル成功率などトップクラスのサイドバックと並ぶ程の好成績なのだが、軽率なプレーや集中力のなさが目立つ。ボールの軌道を読み違えた結果クリアを意図したヘディングはむしろ相手の都合のいい場所に落ちてしまったり、攻撃時に高い位置を取りすぎて守備に戻れなかったりすることが多々あり批判を浴びる。ホームで行われたサウサンプトン戦では開始31分で2枚イエローカードをもらい退場になるなど、守備面では全体的に少々不満の残るパフォーマンスとなった。7月には弟のクリストファーが僅か26歳で射殺されるつらい事件があったにも関わらず本人の意思でスタメンとしての出場を継続、ファンやチームメイト、監督そしてメディアから称賛を浴びた。ディフェンス面ではC評価だが、攻撃面での貢献を考慮すると総合評価はBに値するだろう。

MF

ハリー・ウィンクス

評価:B

幼少期からトッテナムのアカデミーに所属し、本人もトッテナムのファンであるというトッテナムボーイ。今シーズンはイングランド代表で10番を背負い代表初ゴールも決めている。そんなウィンクスはファンの中で評価が真っ二つに分かれている選手である。筆者は彼のパフォーマンスを正当に評価し、B判定を与えようと思う。ホームで行われたブライトン戦では、残念ながらVARによりオフサイド判定になったが、質の高いスルーパスからケインのゴールをアシストした。パスの成功率は90%と高く、チームに足りていないピッチの至る所にボールを分布する能力を備えている。更にはシュートブロック、タックル、インターセプトの数も多くポゼッションの回復にも非常に貢献している。攻撃に回るというよりは守備の印象が強いが実際にはディフェンス陣と攻撃陣の橋渡し役といったところか。ウィンクスの役割、そして能力を正確に把握したときにのみ彼のチーム内での重要性は認識されるだろう。

エリック・ラメラ

評価:C

今季もお約束の怪我でリーグ戦9試合からの離脱を余儀なくされたアルゼンチン人ウィンガー、あだ名はココ(Coco)。シーズン序盤こそマンC相手にゴールを決めたり、パレス相手にゴールを決めたりしていたもののその後は大きな結果を残せていない。カップ戦、欧州戦ではゴールに絡むなど活躍はしているが相手は格下。モウリーニョ政権下、特にリーグ再開後は後半から出場することが多く、ボールを保持したり前線へ運ぶ役割を任されているように見える。しかしながら試合終盤という事もあってかゴールへの直接的な関与は少ない。時々見せる南米人らしいドリブルは会場を沸かすもののパスのタイミングが周囲と噛み合わない事が多々あるため、ファンのフラストレーションがたまる事もまれではない。

エリック・ダイアー

評価:B

ポチェッティーノ政権下の16-17シーズンなどで素晴らしい活躍を見せていたものの、昨シーズンの怪我から復帰して以来いまいち当時のようなインパクトを残せていなかった。今シーズンは後ろ向きのパスが多く、アウェーのウルブス戦後に元トッテナムのジャーメイン・ジーナスにBBCが放送するMatch of the Dayでチームメイトへの信頼が足りない、周りを見ようとしていない、と批判されたことは記憶に新しい。後にモウリーニョ監督にCBでのプレーを求められると前向きのパスやロングボールが増加、チームに対する貢献が増えた。特にリーグ再開後はディフェンス面でも安定のプレーを見せ過去の輝きに復活の予兆が見受けられ、ファンからは実質的な補強とも評価された。シーズン終盤にはクラブとの契約を2024年まで延長、インタビューでもCBとしてプレーするほうが合っていると認め、そのポジションでトップを目指したいとも語った。今シーズンは前半のネガティブなイメージが残っているもののリーグ再開後に見せた安定感は一流。総合的な判断からギリギリのB評価を下すが来シーズンは完全復活して自信をもってB評価、もしくはA評価を与えられる活躍をしてくれる事に期待している。

ムサ・シソコ

評価:A

彼は前へ前へとボールを運んでくれる、トッテナムでも数少ない推進力の持ち主だろう。ファンからは愛され、ボール奪取能力やフィジカルも強いということもあり30才でありながらキープレイヤーの一人であることは間違いない。シュート能力が驚くほど低いことで有名なシソコだが、モウリーニョ監督就任直後のシュートトレーニングで枠内シュートを放つシーンが投稿されたことでモウリーニョ・マジックというフレーズがインターネットを飛び交った。その後インスタグラムで「いつゴールを決めるの?」と聞かれ「もうすぐ」と回答。その言葉は有言実行となりボーンマス戦、バーンリー戦とホーム2試合連続ゴールを達成した。今季は1月1日の試合で手術を必要とするけがを膝に負い戦線離脱を余儀なくされたが、リーグが中断されている間にトレーニングに復帰、再開後はスターティングメンバーに復帰した。時には山あり谷あり、といったシーズンだったが平均的なパフォーマンスはチームでも上位、故にA評価を与えることとする。

タンギ・エンドンベレ

評価:C

クラブ史上最高額の移籍金でリヨンから加入した期待の若手。今季は新しい文化と新しいリーグへの順応に苦しんだのか、彼のパフォーマンスに期待したファンは難しい感情を抱いているだろう。ピッチに上がれば自慢のドリブルとボールキープでインパクトを残すことは確かだ。デビュー戦ではアストン・ヴィラ相手に貴重な同点弾を上げると9月のサウサンプトン戦では先制ゴールを決めた。更にノリッジ相手にはラボーナクロスを上げ、マンC相手にはホーム、アウェーの両試合でリーグ屈指のドリブルや絶妙なスルーパスを見せつけ世界最高峰のチーム相手に素晴らしい活躍を収めた。しかしながら問題はピッチ外にある。なかなか維持できないのはコンディションのみならず体形。ウィンターブレイク後には丸々と太った姿が写真に収められ、モウリーニョ監督に栄養士をつけられた。さらに追い打ちをかけるようにリーグ中止直前のバーンリー戦ではハーフタイムにロ・セルソと交代させられ、試合後に公に批判された。更には代理人など、周囲がトッテナムを信頼しておらず、退団に追いやろうとメディアに虚実混交としたストーリーを流しているとも報じられている。インテルやバルセロナの関心も報じられているが、トッテナムに売却の意思はないと報じられているため今季の失敗を糧に来シーズンしっかりと才能を発揮してくれることを期待してC評価を与えたいと思う。

デレ・アリ

評価:C | BAD |

2016/17シーズンには37試合で18ゴール7アシストを記録した、楽しさにあふれたスター選手の面影はもう少ない同選手。モウリーニョ監督就任直後は絶好調で、昔のデレが復活したとファンを喜ばせたが最近はまた沈んでいる。低調の理由としてはケインやソンフンミンの負傷によって本来のポジション(トップ下)から外れてプレーすることを求められるため、という説が有力だ。リーグ再開後はハムストリングを負傷してしまい5試合を欠場。その間にトップ下を必要としない4-4-2のシステムを習得したチームだが、来シーズンのスパーズで彼がどう起用されるかは見どころだ。

ジオヴァ二・ロ・セルソ

評価:A | GREAT |

夏にレアル・べティスより期限付き移籍で加入した彼だが、モウリーニョ監督に高評価をもらい冬に完全移籍での加入となった。シーズン序盤にはプレミア初挑戦という事もあって苦戦している姿が目立ったものの代表で負った怪我から復帰後に出場のチャンスを得ると素晴らしいパスセンスやドリブルなどで自らをアピール、ファンを一気に魅了していった。長いことゴールに直接絡めなかった同選手だが、リーグ再開後のエバートン戦で相手DFキーンのOGを誘発すると、ニューカッスル戦では初アシスト、最終節のクリスタル・パレス戦でもケインの先制点をアシストした。出場時間を重ねるごとにプレミアリーグに順応していることが明らかであり、来シーズンはゴールとアシストを量産することが期待される。

ライアン・セセニョン

評価:D

昨夏期待とともにフラムから2500万ポンドの移籍金で加入したイングランドの次世代を担う若手。フラムではキープレイヤーを務め、35試合2ゴールの記録を残したがトッテナムでは出場機会の確保に苦しんでいる。。左サイドバック、ウィングバックのみならず左サイドハーフやウィングとしてもプレーできるセセニョンだが、本人は一番自然にプレーできるのは左ウィングバックであると主張。チャンピオンズリーグでこそバイエルン相手に強烈なボレーを決めたもののリーグ戦ではいまだインパクトを残せておらず、現在のパフォーマンスでは獲得に要した移籍金が膨大なインフレに思えるほど。まだまだ若く未来はあるので将来的にはデレのように支払った移籍金がバーゲンと思えるような活躍をしてほしいところ。よって現状はD判定が適切だろう。

ルーカス・モウラ

評価:C

昨シーズン、アヤックスで起こした奇跡でファンの好感度が爆発的に上昇したブラジル人ウィンガー。ブラジル人らしく個人技で1vs1のドリブル勝負やDF間の狭いスペースを縫うように通り抜けるのが好き、というのが伝わってくるプレースタイルで、さらには跳躍力もあり空中戦でも活躍、そして時には頭でゴールを決めている。リーグ中断前はドリブルにこだわるが故にボールを失うシーンが多く見受けられたが、リーグ再開後はパスからのチャンスメイクや守備面の貢献も増えた。しかしながらゴールは12月のウルブス戦が最後で、昨シーズンはハダーズフィールド戦で見せたハットトリックなどを含めた10ゴールを決めていただけに今シーズンの数字上の貢献度は少しばかり物足りなく感じる。

FW

ソンフンミン

評価:A | MVP |

トッテナムでケインに次ぐ火力を持つソンフンミン、長所はやはりスピードとドリブルだ。特に今シーズンはファン投票式の英Skyの「プレミアリーグ・ベストゴール決定戦」とBBC Match of the Dayの「シーズン最優秀ゴール賞」両方でバーンリー相手に決めた自陣からのソロゴールが見事1位に輝いた。左右両足でボールを自由自在に操り、もはや逆足など存在しないかのような同選手だが今季の欠点をあげるとしたら自己中心的にも思える判断ミスとラフプレーだろう。ソンのドリブル能力が素晴らしいことは誰の目から見ても明らかなことだが時にボールを持ちすぎてチャンスをつぶしてしまうシーンが見受けられ、昨季に比べて精彩を欠く場面が多かった印象だ。これはプレミアリーグという勝ち点のほんのわずかな差が大きな影響を持つ世界では致命的な欠点になりうる。そしてラフプレー。5月4日(昨シーズン)に行われたボーンマス戦で43分に一発退場、11月のエバートン戦ではレッドカードは試合後に撤回されたもののアンドレ・ゴメスに全治4カ月の怪我を負わせてしまい、12月に行われたチェルシー戦では62分にアントニオ・リュディガーの腹部をスパイクの裏で蹴り上げたとVARの審査の後退場処分になった。こういった欠点もあるものの今季はプレミアリーグ通算50得点、さらに2桁得点と2桁アシストのダブルを記録。これは今シーズンではデブライネ(MCI)、サラー(LIV)とソンしか記録しておらず、1992年のプレミアリーグ創立以来38人目、スパーズの選手としてはクリンスマン、アデバヨールとエリクセンに次ぐ4人目の快挙だ。ピッチ上で見せるクオリティは欠点をはるかに上回り、更にはスパーズサポーターが選ぶ「シーズン最優秀ゴール賞」、「シーズン最優秀選手賞」、「ジュニア・シーズン最優秀選手賞」と「サポーターズクラブ・シーズン最優秀選手賞」を独り占めしたことからもA評価、そしてMVPの評価は間違っていないだろう。

ハリー・ケイン

評価:A

トッテナムの絶対的エースで、サッカーファンならば絶対に耳にしたことがあるだろう選手。今シーズンはハムストリングの怪我から中断前の8試合を欠場。今シーズンはボールをもらおうと中盤へ下がる、サイドに回ってクロスからチャンスメイクをする、守備にも積極的に参加するなど純粋なストライカーの役割から外れた行動をする姿が多くみられる印象だったが1試合当たり0.62ゴールを記録するなどその得点力は出場した試合で十分に発揮されている。唯一の心配といえば怪我だ。控えのフェルナンド・ジョレンテ、フィンセント・ヤンセンの両者が退団した今シーズンはストライカーがケインの他に18歳のパロットしかおらず、来シーズンはパロットもミルウォールへ期限付き移籍をするため、バックアップの獲得が求められている。クラブもそれに気づいているようで冬の移籍期間にはクシシュトフ・ピョンテクやウィリアン・ジョゼなどの獲得を目指すなどという噂もあったが結局獲得に至ることはなかった。前述のように怪我で8試合、体調不良で1試合と合計9試合を欠場したリーグ戦だが得点ランキングでは18ゴールで6位についている。怪我なく来シーズンを終えられるならば得点王の有力候補であり、ファンのみならず本人もそうなることを祈っているだろう。

ステーフェン・ベルフワイン

評価:B

冬の移籍市場の閉幕間近にオランダの名門PSVアイントホーフェンより加入したオランダ人の若手ウィンガー。デビュー戦で昨季チャンピオンのマンC相手に胸トラップからボレーシュートをネットに突き刺すとウルブス戦でもこぼれ球をネットに押し込んだ。更にはリーグ再開後のマンUtd戦でも華麗なドリブルからゴールを決めるとホーム3戦連続ゴールを記録した。チームへの貢献はすでに素晴らしいもののプレミア初挑戦ということもあり、オランダで見せていたようなドリブル能力は未だ本領を発揮できておらず、これからの順応と成長が期待される。評価に関しては出場試合数が少ないこととプレミアに適応しきれていないということを考慮しAではなくB評価をつけさせていただく。

Managers

マウリシオ・ポチェッティーノ

評価:D

チャンピオンズリーグ決勝まで進んだ昨シーズンとは真逆の展開に。選手のプレースタイルに合わない新システム、4-3-1-2で挑んだ第1節の昇格組アストン・ヴィラ戦では試合終盤までビハインドの状態が続くなど気持ちのいいスタートは切れなかった。更に第3節、ホームでニューカッスルに勝ち点すべてを奪われる事態になりファンから選手・監督サイドへの疑問が浮上する事態に。その後はVARによるソンフンミンのミリ単位のオフサイド判定やキャプテン・ロリスの長期離脱など不幸なイベントの連続。第12節シェフィールド・ユナイテッド戦後のインターナショナルブレイク中に解雇された。残念ながら評価はD以外の何物でもないだろう。退任時の1試合あたりの勝ち点は1.17。

ジョゼ・モウリーニョ

評価:A

就任後はウェストハム、ボーンマス相手に連勝。マンUtd戦は負けてしまったものの翌週にバーンリー相手に5-0で快勝するといったいわゆる「解任ブースト」を見せた。サウサンプトン戦では相手テクニカルエリアに出向き相手の戦術ノートを堂々とのぞき込んだり、いきなり丸刈りになって記者会見に現れたりするなどトッテナムファンのみならず世界中のサッカーコミュニティーに笑いを提供した。首位リバプール相手には4-4-2で挑み、結果は敗北だったものの善戦。マンC相手にはエースであるケインを負傷で失った状況の中、モウリーニョらしい引いて守ってカウンターといったトッテナムが持つスピーディーな選手らを利用した戦術で見事勝利を収め、監督としての腕が衰えていないことをアピールした。相次ぐ主力の負傷と選手層の薄さからリーグ中断直前は苦戦を強いられていたが、リーグ再開後にはその問題も解消。リーグ再開後はノースロンドンダービーも含む9試合で5勝3分1敗とトップクラスの腕前を披露した。チームを14位から6位、そしてヨーロッパリーグ出場権の確保へ導いたことは素晴らしく、今のチーム構成を考えればA評価に値するといっても過言ではないだろう。就任後の1試合あたりの勝ち点は1.73。

おわりに

いかがだっただろうか。未熟な文章だったが以上が筆者のトッテナムの2019/2020シーズンに対する評価である。シーズンの内容が内容なだけに、S評価はどの選手にもつけられなかった。普段このような意見は一緒に試合を観戦する父と交換するが、文字として書き込むと新鮮で非常に楽しく感じられた。辛辣だったり、ぬるかったりと、全員と意見が一致することは無いと思うが、私の意見が皆さんに新しい視点や考えを提供できたなら本望だ。という事で今回はここまで。以下に筆者である自分と協力してくれた方々の紹介文が載っているので是非チェックしてもらいたい。それでは、最後まで読んでくれた皆さん、ありがとう。

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次回はワトフォード編!!

お楽しみに🦁

ライター紹介

ライ (LLIJJ) (Twitter - @plast1cmem0ry)
どこにでもいるただのティーンエージャー。幼少期より父の影響でトッテナムに触れる機会はあったものの、2018年ロシアWCを機にサッカーへの関心が増大。2018/2019シーズンより観戦をはじめ、今では試合の結果で機嫌が180度変化する人になってしまった。2019年夏よりTwitter上でスパーズ速報(@SpursinfoJ)という試合結果と移籍関連の情報を発信するアカウントを開設、運営している。
協力者紹介
Spuron (Twitter - @Torisanclub)
読み方はスパーロン。2018/19シーズンからスパーズサポーターになり、同シーズンのチャンピオンズリーグ準決勝、マンチェスター・シティ戦の2nd legからトッテナムと一生を共にすると決めた男。好きな選手は何人もいるが、一番はトビー・アルデルヴァイレルド。いつか現地観戦をして選手たちからサインをもらうことを夢見ている。
天丼 (Twitter – @bottlechoke)
スパサポ歴は5年未満でデレ好きの大学生。元々NBAのLA Clippersの熱烈なファンで、たまたま見たリーグ戦をきっかけに、同じ都市内に熾烈なライバル関係を持つこと、アンダードッグ的なキャラクター、チームカラーなど共通点のあるスパーズにのめり込んだ。今では現地メディアや選手のSNSに張り付くスパーズネトスト生活を送っている。


僕の昼食がちょっとだけ華やかになります