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6.「中国電力」の再生可能エネルギーへの取り組み

 「東北電力」と「中国電力」のエリアでは、火力発電が65%程度と高く、 残り35%程度が原子力発電+水力発電(揚水を含む)である。

 いずれも、再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱、バイオマス)については、構成比率が1%にも満たず、導入には消極的なようである。詳しく再生可能エネルギーの導入事情を観てみる。


6.1 中国電力グループの現状

  2019年4月、中国電力の送配電事業部門が、法的な発送電分離の措置により「中国電力ネットワーク」に分社化された。
 そのため、現在「中国電力」はグループの持株会社、および3電源事業本部(火力、原子力、水力)と、販売事業本部を抱える事業会社である。

 中国電力は「2050年カーボンニュートラル」に挑戦し、エネルギーの脱炭素化を進め、小売事業と発電事業ともに2030年度のCO2排出量半減(2013年度比)を公表している。

 重点施策で「火力発電のトランジション」を示し、2030年までの非効率石炭火力発電の休廃止、2040年までに石炭火力のバイオマス/アンモニア(~20%)の混焼率拡大と2050年までの専焼化、2040年までにLNG火力の水素(~10%)の混焼率拡大と2050年までの専焼化を公表した。

 同様に重点施策として、2011年3月の福島第一原発事故の影響を受けて停止中の、BWR型の島根原発2号機(出力:82万kW、1989年運開)の2030年までの早期再稼働をあげている。
 現在、島根原発2号機は安全対策の工事計画認可を得て、2024年12月の再稼働をめざしている。建設中の島根原発3号機(ABWR、137.3万kW)は安全対策工事を2024年上期に予定しているが、稼働の見通しは立っていない。
 計画中の上関かみのせき原発サイトでは、関西電力と協力して2023年8月に「中間貯蔵施設」の建設に向け動きを始めた。

 また、重点施策として、2030年までに太陽光・風力を中心に「再生可能エネルギーの新規開発および蓄電池等の調整機能の導入・強化」を進め、2025年までに、水力はリパワリングを目標にあげている。

 「中国電力グループ」は、再生可能エネルギーの新規導入目標を2023年4月「Action Plan 2030」で示している。すなわち、2019年に水力発電を含めて約100万kWをベースに、2030年に130~170万kWをめざすとした。2022年度末の実績は約128万kWである。

 「中国電力」の脱炭素化の方針は分かりやすい。しかし、非効率石炭火力の休廃止では具多的な目標を示していない。次にカーボンニュートラルに向けた再生可能エネルギーの積み増しの有効性を観てみる。

 ところで、2023年4月、経済産業省は、中国電力に業務改善命令、中国電力ネットワークに業務改善勧告を行った。一般送配電事業者において、漏えいを禁じられている新電力の顧客情報が、小売電気事業者側で閲覧可能となっており、実際に閲覧されていたことが判明したためである。送配電事業の分離で持株会社とした弊害である。

6.2 「中国電力」エリアの電源構成

 2020年3月、「エネルギー供給構造高度化法」で中間目標値が設定された。年間販売電力量が5億kWh以上の電気事業者に対し、「2030年度に非化石電源比率を44%以上」という目標が定められた。

 資源エネルギー庁統計によれば、中国電力は、国内総発電設備の約3.9%を保有する国内七位の電力会社である。火力発電設備は64%、原子力発電設備は7.9%、水力発電設備(揚水を含む)が28%で、その他の再エネ(太陽光、風力、地熱、バイオマス)は1%に満たない
 非化石電源比率(原子力+再エネ)は36%で、調整電源である揚水発電分を差し引くと20%と低い

図11 「中国電力」の電源構成 出典:資源エネルギー庁統計

 中国電力は多くの子会社と関連会社を抱えている。2023年4月時点で公表されている水力発電を含む再生可能エネルギーの発電設備の総量約128万kW(詳細は不明)を加えると、総出力は1085万kWとなる。

 その結果、中国電力グループでは、火力発電設備は61%、原子力発電設備は7.8%、水力発電設備(揚水を含む)が27%で、その他の再エネ(太陽光、風力、バイオマス)は4.2%である
 非化石電源比率(原子力+再エネ)は39%で、調整電源である揚水発電分を差し引くと19%と低目である。

6.3 再生可能エネルギー開発の取り組み

 2021年4月、経済産業省の総合エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第31回)が開催され、電気事業連合会が主要電力会社の再生可能エネルギー開発の取り組みを報告している。

 今後、中国電力グループとして、カーボンニュートラルに向け、水力発電や風力発電などの導入に積極的に取り組み、水力発電を含む再生可能エネルギーを2030年までに130~170万kWをめざすと公表している。 

図12 中国電力グループの再エネ開発に向けた取り組み 出典:電気事業連合会

 最大の170万kWの導入を仮定した場合、総出力は1127万kWに増加し、火力発電設備は59%、原子力発電設備は7.3%、水力発電設備(揚水を含む)が25.8%で、その他の再生可能エネルギーは7.8%となる
 非化石電源比率(原子力+再エネ)は41%で、調整電源である揚水発電分を差し引くと22%と低く、中間目標の44%に達しない

 非化石電源比率を上げるには、火力発電設備の抑制が必要である。しかし、「中国電力」は、重点施策として「2030年までの非効率石炭火力発電の休廃止」をあげているが、何時までに、どの規模で休廃止を進めるのかを公表していない。 

 次に火力発電比率の高い、国内総発電設備の約2.0%を保有する国内十位の四国電力について、再生可能エネルギーの導入事情を観てみよう。                     
                            (つづく)


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