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10.「九州電力」の再生可能エネルギーへの取り組み

 「九州電力」は、火力発電が50%程度で、原子力発電+水力発電(揚水を含む)が48%である。
 再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱、バイオマス)比率については、地熱発電の比率が1.3%であり、他の大手電力会社よりも多い


10.1 九州電力グループの現状

 2019年4月、九州電力の送配電事業部門が、法的な発送電分離の措置により「九州電力送配電」に分社化された。
 2023年2月、九電グループの再生可能エネルギー事業を「九電みらいエナジー」へ統合すると発表し、2024年4月には地熱発電を統合、水力発電ほかも順次に統合すると発表した。
 現在、グループ全体の持株会社、およびエネルギーサービス事業統括本部(火力、販売)と、原子力発電本部を抱える事業会社であるが、2023年5月、純粋持ち株会社体制への移行を検討していると報じられた。

 2021年4⽉に策定した「九電グループ カーボンニュートラルビジョン2050」において「電源の低・脱炭素化」と「電化の推進」を柱に、国内事業について2030年の温室効果ガス排出量の65%削減(2013年度比)、2050年までに「実質ゼロ」を公表している。

 「再エネの主力電源化(再エネ+蓄電)」を掲げ、国内外における再エネ開発増強:2025年400万kW、2030年500万kWを公表している。
 2022年2月で、再エネ開発量は、水力(128.7万kW、揚水を除く)、太陽光(9.4万kW)、風力(20.7万kW)、地熱(55.3万kW)、バイオマス(40.6万KW)で合計254.7万kWとしている。

 「原子力の最大限の活用」を掲げ、2023年5月、PWR型の川内原発1号機(出力:89万kW、1984年運開)、2023年8月、2号機(出力:89万kW、1985年運開)2024年2月、PWR型の玄海原発3号機(出力:118万kW、1994年運開)が営業運転を開始。2024年7月、4号機(出力:118万kW、1997年運開)が再稼働し、計画した全機の再稼働を達成した。
 一方、玄海1号は2015年4月、玄海2号は2019年4月に運転終了して廃炉処理中で、2054年の完了予定で、1号の廃炉費用は385憶円と報じられている。
 将来的には、安全性に優れた次世代軽水炉、SMRや高温ガス炉等を導入し、水素製造への原子力の活用を検討する。

 「火力のCO2排出の実質ゼロ(火力+新技術等)」を掲げ、2030年までの非効率石炭火力のフェードアウトをめざす。
 
2022年4月に石炭火力の川内発電所、2026年3月に石油火力の豊前発電所2号機(出力:50万kW)、同年6月に、石炭火力の苅田発電所新1号機(出力:36万kW)を廃止する。
 廃止後、石炭火力発電所は松浦1、2号機(70万kW、100万kW)と苓北1,2
号機(70万kW×2)、LNG火力発電は新小倉3,4,5号機(60万kW×3)、新大分1,2,3号機(72万kW×3)の4カ所となる。

 石炭火力のバイオマス混焼は、2010年から苓北1号機(SC、70万kW)、2号機(USC、70万kW)、2013年から石炭火力の松浦発電所1号機(SC、出力:70万kW)、2号機(USC、100万kW)で進めている。
 2030年までに水素1%混焼とアンモニア20%混焼の技術を確立し、
グリーン水素とアンモニアの製造・混焼を進め、将来に混焼率の向上と専焼化を検討し、CCUS/カーボンリサイクルの技術適用、森林吸収やクレジット活用等も検討する。

 ところで、2023年3月、公正取引委員会は、中部電力、中部電力ミライズ、中国電力、九州電力、九電みらいエナジーに対し、独占禁止法違反での規定に基づき排除措置命令及び課徴金納付命令(総額1010億円)を行った。
 電力小売りの全面自由化が進められる中で、相互エリアでの営業活動を自粛する密約が、主導した関西電力のリークで発覚した。

10.2 「九州電力」エリアの電源構成

 資源エネルギー庁統計によれば、九州電力は、国内総発電設備の約5.9%を保有する国内六位の電力会社である。火力発電設備は50.3%、原子力発電設備は25.9%、水力発電設備(揚水を含む)が22.5%で、その他の再生可能エネルギー(地熱)は1.3%である
 非化石電源比率(原子力+再エネ)は49.7%であり、調整電源である揚水発電分を差し引くと35.3%である。

図19 九州電力の電源構成 出典:資源エネルギー庁統計

 九州電力グループ全体の2022年2月時点での再エネ開発量は、一般水力(128.7万kW)、太陽光(9.4万kW)、風力(20.7万kW)、地熱(55.3万kW)、バイオマス(40.6万KW)で合計254.7万kWであると公表しており、総出力は1702.4kWに達する。

 その結果、九州電力グループとしては、火力発電設備は47.2%、原子力発電設備は24.3%、水力発電設備(揚水を含む)が21.1%で、その他の再エネ(太陽光、風力、地熱、バイオマス)は7.4%である
 非化石電源比率(原子力+再エネ)は52.8%であり、調整電源である揚水発電分を差し引くと45.1%となる。

10.3 再生可能エネルギー開発の取り組み

 2020年3月、「エネルギー供給構造高度化法」で中間目標値が設定された。年間販売電力量が5億kWh以上の電気事業者に対し、「2030年度に非化石電源比率を44%以上」という目標が定められたのである。

 2021年4月、経済産業省の総合エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第31回)が開催され、電気事業連合会が主要電力会社の再生可能エネルギー開発の取り組みを報告している。

 九州電力グループとして、「再エネの主力電源化(再エネ+蓄電)」を掲げ、国内外における再エネ開発量を、2025年400万kW、2030年500万kWをめざすと公表している。
 残念ながら再エネ開発量を国内と国外で分離していない。また、2030年までの非効率石炭火力のフェードアウトについても、何時までに、どの程度を休廃止にするかを明らかにしていない。

図20 九州電力グループの再エネ開発に向けた取り組み 出典:電気事業連合会

 以上から、「九州電力グループ」は、現時点で他の大手電力会社に比べて再生可能エネルギーの導入比率が高く、2022年2月時点で非化石電源比率(原子力+再エネ)は52.8%であるが、調整電源である揚水発電分を差し引くと39.3%となり、2030年の中間目標には未達である。

 現時点で、第6次エネルギー基本計画でめざしている国内の再生可能エネルギー発電量は目標未達であるため、九州電力グループとして、国内の再エネ開発量の増設への寄与を明確に示してもらいたい。
 また、2050年の温室効果ガス排出量の「実質ゼロ」を掲げているが、これに関して具体的な動きを示す段階にきているではないか? 

 次に火力発電比率の高い、国内総発電設備の約6.3%を保有する国内四位の電源開発について、詳しく再生可能エネルギーの導入事情を観てみよう。                     
                            (つづく)

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