3.関西電力の非化石電源比率
国内二位の電力販売量である85.39億kWh(2024年5月実績値)を供給する関西電力の電源構成、非化石証書の使用状況、CO2排出係数を観てみよう。
2022年、関西電力は非化石電源比率の目標は未達成と評価されている。
経済産業省の制定する「電力の小売営業に関する指針(2024年4月)」に基づき、算定・公表された結果である。
3.1 電源構成
ただし、関西電力は、再エネECOプラン、再エネECOプランプレミアムなど再エネ由来のCO2フリー電力を一部販売しており、再エネ100%メニューの販売には「非化石証書(再エネ指定あり)」の購入が必須である。
以下には、再エネ100%以外のメニューの電源構成および非化石証書の使用状況を示している。
全機が再稼働している原子力の27%、再エネの水力(3万kW以上)の7.9%、水力(3万kW未満)の1.6%、太陽光の0.6%、風力の0.0%、バイオマスの0.0%は、実質的な非化石電源比率で合計37.1%に達する。
ただし、0.0%とは四捨五入による切り捨ての結果である。
FIT電気の3.8%は、調達する費用の一部が再エネ賦課金により賄われており、「この電気は再生可能エネルギーとしての価値を有さず、CO2排出量については、火力発電なども含めた全国平均の電気のCO2排出量を持った電気として扱われる。」とただし書きが付けられている。
卸電力取引所から調達した18%には、水力、火力、原子力、FIT電気、再生可能エネルギーなどが含まれ、その他の2.4%には、他社から調達したが発電所が特定できないもの等が含まれている。
一方、石炭18.9%、LNG他19.3%、石油0.4%であり、自前の火力発電の合計は38.6%である。
以上から、関西電力の扱う電力の実質的な非化石電源比率は、37.1%+3.8%=40.9%と高い。卸電力取引所とその他の調達合計20.4%の中にも、再エネと原子力が含まれているようであるが、その割合は明確ではない。
3.2 非化石証書の使用状況
関西電力の「非化石証書(再エネ指定)」は4.8%である。これに加えて「非化石証書(再エネ指定なし)」を15.6%分を使用している。
「非化石証書(再エネ指定あり)」とは、大型水力や卒FITを対象とし、「非化石証書(再エネ指定なし)」とは、原子力発電による電気である。
実質的な非化石電源比率は40.9%と高いにも関わらず、資源エネルギー庁が課した目標値に従い、「非化石証書」の使用は20.4%に留めた。
そのため、40.9%-20.4%=20.5%分は、「再生可能エネルギーとしての価値やCO2ゼロエミッション電源としての価値は有さず、火力発電なども含めた全国平均の電気のCO2排出量を持った電気として扱われる」と、ただし書きが付けられている。
この20.5%分には、「非化石証書」を購入しなかったためCO2排出量は多めに計算されることになる。実際に非化石電源比率が高くても、対応する「非化石証書」を購入しない限り、CO2排出量の計算には反映されない。
関西電力は、「当社は再エネ指定の非化石証書の購入により、実質的に再生可能エネルギー電気の割合の向上をはかります。」と締めくくっている。
非化石証書を販売した利益は、再生可能エネルギーを固定価格で購入するために使われるので、広い意味で再エネ普及に貢献できる。しかし、この仕組みは、関西電力が再エネをさらに増強する推進力になるのであろうか?
3.3 2023年度のCO2排出係数
電気事業者の自主的な取り組みとして温暖化ガス排出量の削減目標は、「2030年に温暖化ガス排出係数を0.37kgCO2/kWh以下」である。
これに対して、関西電力は、2023年度のCO2排出係数(調整後排出係数)は0.401kgCO2/kWhで、現時点ではCO2削減目標はクリアできていない。
「非化石証書」を20.5%分購入しなかったためであり、結果として東京電力よりもCO2排出係数は高くなっている。この仕組みは何かがおかしい?
ただし、調整後CO2排出係数とは、固定価格買取制度(FIT)に基づき国から配分された環境価値(余剰非化石価値相当量)や調達した非化石証書の環境価値等による調整を反映した後のCO2排出係数である。
次に、国内三位の電力販売量である77.89億kWh(2024年5月実績値)を誇る中部電力ミライズが公表している電源構成、非化石証書の使用状況、CO2排出係数を観てみよう。 (つづく)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?