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8.「北海道電力」の再生可能エネルギーへの取り組み

 「北海道電力」と「北陸電力」は、火力発電が55%程度で、残り45%が原子力発電+水力発電(揚水を含む)である。

 いずれも、再エネ(太陽光、風力、地熱、バイオマス)の導入は、構成比率が1%にも満たず、導入には消極的なようである。詳しく再生可能エネルギーの導入事情を観てみる。


8.1 北海道電力グループの現状

 2019年9月、「北海道電力」と「ほくでんサービス」は、電力小売り事業を行う「北海道電力コクリエーション」を設立。
 2020年4月、北海道電力の送配電事業部門が、法的な発送電分離の措置により「北海道電力ネットワーク」に分社化された。
 2023年10月、「北海道電力」が電力小売り事業を行う「北海道電力コクリエーション」を吸収合併。
 そのため、現在「北海道電力」はグループ全体の持株会社、および原子力事業統括部、火力部、水力部、再エネ開発推進部、販売推進部を抱える事業会社となった。

 ほくでんグループは、2050年の北海道における「エネルギー全体のカーボンニュートラル」の実現に最大限挑戦するとし、2030年の環境目標(発電部門からのCO2排出量の2013年度比半減以上)達成に加え、長期的に「発電部門からのCO2排出ゼロ」をめざすとした。
 また、電化拡大やグリーン水素の利活用などにより、電力以外のエネルギーも含め、北海道のカーボンニュートラルの実現をめざすとしている。

 「火力発電の脱炭素化」では、2030年までに経年化した石油・石炭火力の休廃止を進めており、石油火力の伊達発電所1,2号機(70万kW)休止、石炭火力の奈井江発電所1、2号機(各17.5万kW)と砂川発電所3、4号機(各12.5万kW)の2027年3月末廃止を発表した。
 
一方で、2030年までに水素・アンモニア・木質バイオマスの混焼検討と2050年までの拡大・専焼化、2050年までのCCUS事業化を示した。

 また、「安全性確保を前提とした泊原発の活用」を掲げ、2011年3月の福島第一原発事故の影響を受けて停止中の、PWR型の泊原発1号機(出力:57.9万kW、1989年運開)、2号機(出力:57.9万kW、1991年運開)、3号機(出力:91.2万kW、2009年運開)の2030年までの早期再稼働をあげている。
 しかし、現時点で1, 2, 3号機の再稼働に向けた審査申請を行っているが、見通しは立っていない。これまでの安全対策工事費は2千億円以上に上り、新防潮堤の工事費を加えると4千億円を超える見通しである。

 また、「再エネ電源の導入拡大」では、陸上・洋上風力、地熱、太陽光、バイオマスの導入を進め、2030年までに30万kW以上の増設をめざす。また、再エネ導入拡大に向けて、北海道本州間連系設備の30万kW増設など広域送電網の検討への参画・整備を進めている。

 2022年7月時点で一般水力(172.33万kW、ほくでんエコエナジーと北海道電力ネットワ-ク分を含む)、揚水発電(80万kW)、2022年9月時点でバイオマス(0.056kW)、太陽光(0.9kW)、地熱(2.5万kW)、風力(0.025万kW)で総出力36.3万kWを表明している。 

 「北海道電力」の脱炭素化の実態は分かりやすい。カーボンニュートラルに向けた再生可能エネルギーの実効性を次に観てみる。

 ところで、2023年5月、経済産業省は、北海道電力と北海道電力ネットワークに業務改善要請を行った。一般送配電事業者において、漏えいを禁じられている新電力の顧客情報が、小売電気事業者側で閲覧可能となった例があり、送配電事業を持株会社とした弊害が露見したためである。

8.2 「北海道電力」エリアの電源構成

 2020年3月、「エネルギー供給構造高度化法」で中間目標値が設定された。年間販売電力量が5億kWh以上の電気事業者に対し、「2030年度に非化石電源比率を44%以上」という目標が定められたのである。
 政府は、化石燃料による発電を抑制し、再生可能エネルギーによる発電を促進するのが狙いである。

 資源エネルギー庁統計によれば、北海道電力は、国内総発電設備の約3.9%を保有する国内七位の電力会社である。火力発電設備は55%、原子力発電設備は25%、水力発電設備(揚水を含む)が20%で、その他の再エネ(太陽光、風力、地熱、バイオマス)は1%に満たない
 北海道電力は火力発電比率が55%と低いため、非化石燃料比率は45%に達しているが、調整電源である揚水発電分を除いた場合の非化石燃料比率は39%である。

図15 「北海道電力」の電源構成 出典:資源エネルギー庁統計

 さらに、北海道電力は子会社と関連会社を抱えている。2022年7月と9月時点の再生可能エネルギー発電設備は、一般水力が172.33kW、その他(太陽光、風力、地熱、バイオマス)の合計は3.481万kWであり、総出力は844.6万kWである。 

 「ほくでんグループ」としては、火力発電設備は55%、原子力発電設備は25%、水力発電設備(揚水を含む)が20%で、その他の再生可能エネルギーは0.41%で1%に満たない。
 非化石燃料比率(原子力+再エネ)は45.4%に達しているが、調整電源である揚水発電分を除いた非化石燃料比率は40%である。

8.3 再生可能エネルギー開発の取り組み

 2021年4月、経済産業省の総合エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第31回)が開催され、電気事業連合会が主要電力会社の再生可能エネルギー開発の取り組みを報告している。

 今後、「ほくでんグループ」では、陸上・洋上風力、地熱、太陽光、バイオマスをそれぞれ展開し、2030年までに30万kW以上の増設をめざすと公表している。
 再エネ30万kWの増設を仮定した場合、総出力は874.6万kWとなり、火力発電設備は53%、原子力発電設備は24%、水力発電設備(揚水を含む)が19%で、その他の再生可能エネルギーは3.8%となる
 非化石燃料比率は46.4%に達するが、調整電源である揚水発電分を除いた非化石燃料比率は37%である。

図16 ほくでんグループの再エネ開発に向けた取り組み 出典:電気事業連合会

 また、火力発電の脱炭素化に関しては、2030年までの経年化した石油・石炭火力の休廃止を進めており、具体的に石油火力の伊達発電所1、2号機(70万kW)休止、石炭火力の奈井江発電所1、2号機(合計:35万kW)と砂川発電所3、4号機(合計:25万kW)の2027年3月末廃止を発表している。

 石油・石炭火力の130万kWの休廃止を仮定した場合、総出力は744.6万kWとなり、火力発電設備は45%、原子力発電設備は28%、水力発電設備(揚水を含む)が22%で、その他の再生可能エネルギーは4.5%となる
 非化石燃料比率は54.5%に達し、調整電源である揚水発電分を除いた非化石燃料比率は44%となり、「2030年度に非化石電源比率を44%以上」の中間目標は達成できる。

 他の電力会社も、休廃止する火力発電所の計画を明確に示してもらいたいものである。

 次に火力発電比率の高い、国内総発電設備の約3.1%を保有する国内九位の北陸電力について、詳しく再生可能エネルギーの導入事情を観てみよう。                     
                            (つづく)

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