25 NIJYU-GO

25 NIJYU-GO(2014年:日本)
監督:鹿島勤
配給:東映
出演:哀川翔
:小沢仁志
:温水洋一
:高岡早紀
:寺島進
 
東映Vシネマ25周年記念として、豪華キャストを集めて制作されたアクション作品。一人一人のキャラクターは十二分に活かされているが、脚本とか演出とか、そしてストーリー等など制作側にひねりと努力が欲しい。
ある事務長が大金を押領し逃亡。事務長は馴染みの女に残った25億円をもちかけて一緒に海外へ逃亡しようと夢を見るが、女は暴力団に事務長を売っていた。暴力団は中国黒社会との新麻薬の取引のため大金が欲しいので全部かっさらおうと画策。一方地元署の悪徳刑事二人は報道で事務長と横領された大金を知る。事務長が暴力団に匿ってもらおうとしたところ謎の殺し屋が襲撃。偶然事務長を確保した悪徳刑事たちと、暴力団に半グレどもや女も巻き込んで隠された25億円の争奪戦が勃発。さらにはマトリや中国黒社会も抗争に加わり、カオスの戦いが繰り広げられる。
どうしても製作費の安さを感じてしまう。そこにある建物やセットを使って製作費を抑えていると思われる。銃撃戦も派手に弾着を見せるものの、弾着の火花や飛び散る鮮血がしょぼい。派手さを出せばいいアクションというわけではないが、ガンガン撃っているのに少々迫力に欠ける。
演出も中途半端。前半はコメディが差し込まれたが、主要人物一人が死んでからやっとシリアスな展開に移る。後半には登場人物が大量に死んでいくので最初っからシリアスな展開にすればストーリーが終盤へと盛り上がったはず。中にはちゃっちい死に方した人物もおり、あまり気分がいいモノではなかった。
そしてせっかくR-15指定なんだから、登場人物みんなもっと身体を張ってほしかった。アクションシーンは意外に少なく、25億円を追うような疾走感もない。さらにはVシネマお約束の濡れ場も淋しい。バイオレンスとエロスをかきまぜて、ギラギラした人間の性根を見せてくれるのがVシネマのはず。
なのでキャストもイケてる人もいればイケていない人もいる訳で、ストーリーのとっ散らかりと相まって混乱する。主役の悪徳刑事の哀川翔の演技はコテコテのVシネマ。カッコつけたセリフに聞き取りにくい甲高い声。でもこれがいい。長い年月をかけて自分のキャラクターに演技を摺り寄せ昇華した裏付けがあるので観ていて納得してしまう。その相方は寺島進。はしゃぎっぷりに撮影現場が楽しいんだろうなと感じる。その対抗の暴力団組長は泣く子も黙る小沢仁志。相変わらずの凶悪な顔面だが、こっちの方が主役を喰う存在感。拳銃や短ドスを取り出すけど、やっぱりこの人のケンカは素手ゴロが熱い。その実弟の小沢和義が「お兄ちゃん」と連呼するのが微笑ましかった。この兄弟おもしろいな。大金を横領した事務長は温水洋一。悪党どもに振り回される情けない役だが、女の胸に顔をうずめていた時の変態顔は狂気を突き抜けた。その事務長を唆す女は高岡早紀。いかにも金にがめつい小悪そうな女を演じていたが、岩佐真悠子と二人もっと身体を張ってほしかった。不純な気持ちで言ってるんじゃないですよ、決して、本当に。その他、正体がつかめない警察署長には今は亡き大杉漣。悪徳刑事たちの上司に嶋田久作。暴力団側には本宮泰風や石橋蓮司など。波岡一喜はマトリとして潜入中。小沢和義との対決は友情と憎しみが混然となってこの作品一番のドラマと思う。半グレにはよく知っている役者はいなかった。その他、金子昇・鈴木砂羽・笹野高史・木村祐一・初音映莉子・袴田吉彦等々、チョイ役でもいろんな意味で錚々たる顔ぶれ。だが残念なのが最後に出てくる中国黒社会のボスの竹中直人。一言だけ中国語をしゃべるが、あとは全部流ちょうな声のいい日本語。中国人の意味がない。最後に敵の方向が急ターンしたので、いるかなぁこの人と非常に残念に思う。
ストーリーの拙さと展開の変節、登場人物が煩雑等々が癇に障る個所がたくさんあった。25周年記念といっても予算が潤沢にはなかったんだろうと推測する。しかし一人一人の登場人物を見ると、役者自身のキャラクターを活かして、役者が自分の個性を発揮しようと考えながら動いているのは、制作サイドの演出の押し付けがなく視聴していて楽しい。やはりVシネマは俳優自身の演技の瞬発力を見られるのでおもしろい。

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