伊藤ららか

エッセイ。ひそかに小説も書いています

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【エッセイ】貝を拾う

家族で海水浴に来た。 梅雨も明けていない海は人もまばらだ。子どもたちはきゃあきゃあとはしゃいで早く海に入ろうと私を誘う。砂浜を歩くと、砂がざらざらと足にまとわりついた。 足を海に入れるとひんやりと冷たい。思い切って深いところまで進むと温かく感じるのが不思議だ。水は驚くほど透明で底まで見通せる。ところどころに白っぽいものが沈んでいるのがよく見えた。 「ママ、あれ取って!」 娘に頼まれて、私は大きく息を吸った。海中に潜って砂を探る。すべすべした平たいものが手に触れた。

    • 初めてのセルフジェルネイル

      私は思いつきで行動することが多い。 直感型と言えば聞こえは良いが、つまり考えなしなだけである。 先月の思いつきは「自分でジェルネイルできるようになろう!」だった。 私のことをよく知る友人(彼女はセルフジェルネイルが得意である)に「UVライト買っちゃった」とLINEしたところ、帰ってきた返事がこれである。 つまり私はものすごく不器用なのだ。 彼女は火傷やアレルギーの危険性まで私にとくと説明してくれた。ありがたいことである。 これはそんな不器用なミドサ

      • ジブン手帳days2025購入

        来年度の手帳を何にしようか考えて早数ヶ月。 今やってるバレットジャーナルを継続してもいいのですが、やっぱりこの手帳シーズンの波には乗っかりたい! とはいえ1日の枠に縛られるのが苦手なので、そんな自分でもうまく使える手帳をあれこれ検討していました。 そこで、今年はジブン手帳daysに挑戦してみることに決めました。 先ほど店頭で購入し、ホクホクの気分です。 色はレッドにしました。 1日1ページの手帳は数ある中、私がジブン手帳daysを選んだ理由はふたつあります。 1

        • 【エッセイ】ノート愛

          子どもの頃、新しいノートを買ってもらうたびにわくわくしていた。 このノートを自分の手でどのように使っていこうかと思うと、わーっと叫んで転げ回りたいような気持ちになった。 それから数十年経って、私は今もノートが大好きだ。 新しいノートを買おうと思ったとき、多くの人が思うのが、「果たしてこれを使い切れるのだろうか」ということではないだろうか。 お手頃なのはまだしも、高級なノートだと数千円もする。 使い切れないとモヤモヤするしお金ももったいない。 私も何度もノートを使い

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        【エッセイ】貝を拾う

          ついオドオドしてしまうあなたへ

          Aさんは強い人が苦手だ。 緊張してつい言葉が詰まってしまうし、言いたいことを言うことができない。 それどころか人のペースに呑まれて自分が何を言いたいかすらわからなくなってしまう。 パートナーも友達もいる。 だが遊びの誘いをかけるのは苦手だ。 断られるのが怖いのだ。 相手の気持ちを考えすぎてしまうせいで断るのも苦手で、つい無理をしてしまう。 たまにすごく嫌な人に会うことがある。 嫌な人はぱっと見て嫌な人だとわからないのが怖い。 学生時代の

          ついオドオドしてしまうあなたへ

          ノートとペンとサンマルク

          わたしには週に一度の楽しみがある。 その日は浮き足立ちながら子どもに晩ご飯を食べさせ、なるべく早く家事を済ませてしまう。 忘れ物がないようにしっかりチェックをして、お気に入りの黒いリュックを背負う。 だいたい18時半頃だろうか、夫に子どもを頼んで家を出る。 夜の始まる空気のにおいを感じながら徒歩15分の道のりを歩く。 仕事帰りのサラリーマンとは反対方向に、なるべく早足で、ずんずんと進んでいく。 目的地はわたしの愛してやまないサンマルクカフェだ。

          ノートとペンとサンマルク

          【エッセイ】高熱と夏休みとせっかちと

          みなさんはお盆の時期をどう過ごされただろうか。 私は布団で寝込んで過ごした。 最初は息子だった。 咳が出たと思ったらあれよあれよと高熱が出た。 次に夫に同じ症状が現れた。 検査キットで検査をしたら新型コロナ陽性が出て、「ああこりゃ私もかかるな」と諦めた。 その夜私も熱が出た。 熱が出るとうまく眠れなくなる。 寝てもすぐ起きてしまうし、ぜんぜん寝た気がしない。 祭り囃子を聴きながらうつらうつらとまどろんでいたら、あ、とあることを思い出

          【エッセイ】高熱と夏休みとせっかちと

          【エッセイ】秘密基地の魔法

          確か小五の夏の終わりのことだ。 あのとき、私たちは仲間だった。 同じ町内に住む同級生の女の子は私を含めて6人いた。 私たちは特段仲がいいわけではなかった。 いじめっ子もいればいじめられっ子もいたのだ。 どういうわけだか忘れたが、その日は珍しく全員で遊んでいた。 「山を探検しよう」 誰かがそう言い出した。 探検という言葉に惹かれてみんな賛成した。 私たちが住んでいたのは田舎だったから、山は選び放題だ。 その中のひとつに狙いを定めて、道なき道を登っていった。

          【エッセイ】秘密基地の魔法

          【映画考察】モノノ怪 唐傘【ネタバレ含】

          これは「劇場版 モノノ怪 唐傘」を見た後、興奮覚めやらぬまま書き綴った文章である。 ネタバレを大いに含むのでこれから見る人はブラウザバックすることをおすすめする。 ちなみに私は2007年のTVアニメ「モノノ怪」を楽しく見ていたがその後はご無沙汰していて、今回の劇場版は前情報なしに見た。 他の考察どころか公式ホームページすら見ないまま書いているので記憶違いや解釈間違いがあるかもしれない。 数ある感想のひとつとして読んでいただけると助かる。  まずあらすじを振り返りたい

          【映画考察】モノノ怪 唐傘【ネタバレ含】

          【エッセイ】父にまつわる思い出たち

          幼稚園の頃だろうか。 お風呂に浸かっているときに、父から教えてもらったしりとり歌がある。 耳慣れない言葉ばかりだったが、語感が面白かったから幼い私は何度も繰り返して覚えた。 すずめ めじろ ろしあ あまんこく くろばたき きんたま またろうふ ふんどし しめた たかしゃっぽ ぽんやり りくぐんの のぎさんが がいせんす これが乃木さんのしりとり歌だということを、大人になってからはじめて知った。 そしてところどころ間違いがあることも。 正しくは、 すずめ めじろ 

          【エッセイ】父にまつわる思い出たち

          【エッセイ】6歳児ジェラピケデビュー

          先日、娘と買い物に行った。 用事を済ませ、帰ろうとしたときに私と娘の目はある店に惹きつけられた。 ジェラートピケである。 ジェラートピケといえば二十歳そこそこで小金持ちの女の子が、セルフォードのワンピースを脱いでローラメルシエのボディクリームを塗った後に着るルームウェアブランドである。 偏見が入っていて申し訳ない。 少なくとも毎日ドタバタのミドサー子持ち主婦の私にとっては別世界の店だと思っていた。 たまたま通りかかったジェラピケは大賑わいだった。 人だかりは覗き

          【エッセイ】6歳児ジェラピケデビュー

          【エッセイ】1998年、夏休み

          あの頃、夏の朝は早かった。 母に起こされ、眠い目をこすりながら起き出す。 めざましテレビの占いに急かされながら着替えて慌てて家を出ると、蝉の声がみんみんとうるさい。 家から一分の公園にはすでに子どもたちが集まり始めていて、ラジオからは男性が元気にどこかの街の朝を伝えていた。 20年以上前のことだ。 当時はまだ暑さも今よりきつくなかった。 一日中外にいてもまだ遊び足りなかった。 夏は私たち子どもの味方だった。 同級生のゆうちゃんとりかちゃんと、昨日見たテレビの話

          【エッセイ】1998年、夏休み

          【エッセイ】今、世界のどこかで

          小学一年生の娘は、ことあるごとに「今もどこかで戦争をやっているの?」と聞く。 きっかけは、テレビでウクライナの情勢を見たことだ。 病院に狙いを定めたミサイルによって、けがを負った子ども。涙を流す母親。 争いなど兄妹げんかくらいしか知らない娘にとってそれは衝撃だったようで、図書館で戦争に関する本を借りたり報道に興味を持ったりするようになった。 私は、正直に言うと戦争のことはあまり娘に教えたくなかった。 楽しいこととうれしいことだけに囲まれて育っていってほしいと思ったのだ

          【エッセイ】今、世界のどこかで

          【自己紹介|エッセイ】ときめく自分を探してみた

          一昔前の話だ。自分探しという言葉が流行した。 おそらく就職活動に向けて自分を見つめ直したい人が多かったのだろう。 私はその風潮に懐疑的だった。 だって自分はここにいるのだ。どこかに旅行しても新しい勉強をしても、新しい自分は見つからないだろう、と思っていた。 月日は流れ、30代になった私は自分探しをしている真っ最中だ。 きっかけはnoteを書きはじめたことだ。 自分が書く傍ら他のクリエイターさんの投稿を頻繁に見るようになって、noteには自己紹介をする文化がある

          【自己紹介|エッセイ】ときめく自分を探してみた

          【エッセイ】けえさんの活躍と、ふるさとについて思うこと

          あなたは、「けえ【島育ち】」さんをご存じだろうか。 チャンネル登録者数70万人に迫る勢いの人気YouTuberだ。(2024年7月22日現在) 新潟県の佐渡ヶ島出身であることを武器にし、佐渡あるあるをネタにしたコントを中心に、400本以上の動画を投稿している。 今年の3月に佐渡で開催したイベントは大盛況を博し、しかも利益の全額を佐渡市に寄付したそうだ。当時大学4年生の若者にそうそうできることではないだろう。 子どもを中心に人気があるようで、我が家の子どもたちもけえさんの

          【エッセイ】けえさんの活躍と、ふるさとについて思うこと

          【エッセイ】こわいものにふた

          夏祭りに出かけた。県内でも有名な祭りなだけあって、見回す限り人、人、人。老若男女が楽しそうに露店を行き交っている。りんご飴をかじりながら神社の方まで歩いて行くと、おどろおどろしい看板が目に入った。若い女性のきゃあっと叫ぶ声が耳をつんざく。私はつつつ、と歩道の端に寄ってそちらを見ないことにする。そう、お化け屋敷である。 夏となると心霊番組やら肝試しやらが流行るのはどうしてなのだろう。私は大のこわいもの嫌いである。子どもの頃、ホラー系のテレビ番組を母が見ていると私はソファの後ろ

          【エッセイ】こわいものにふた