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「美容整形」手術で失敗?! 慰謝料は請求できる?│教えて!たける先生 #実務03

「美容整形」で失敗?!

近年「美容整形」に関するご相談が増えているように感じます。

その背景には、美容施術の回数の増加も関係しているのかもしれません。
全国美容医療実態調査によれば、全美容施術数の合計は、2017年には160万件、2018年には170万件、2019年には197万件と増加傾向にあり、2020年には148万件に落ち込みましたが、2021年には236万件にまで増加しています。
年代としては、20代が多いと言われているようです。

美容整形の場合、保険適用の対象外であるため、費用は高額になりがちです。
高いお金を払ったにもかかわらず、美容整形に失敗すると、せめてお金を返してほしいと感じるでしょう。

他方で「失敗」といっても、①手術後の形が思い通りにならなかった場合、②傷跡が大きく残ってしまった場合、③別の神経が動かなくなってしまった場合など、さまざまなレベルがあると思います。
特に、②③に該当する場合、弁護士に依頼することを検討してもよいでしょう。
もちろん、①の場合であっても争えるケースもありますから、まずは弁護士にご相談にいただくことが重要です。

美容整形の争い方

美容整形で失敗した場合、①債務不履行責任(民法415条)、②不法行為(民法709条)に基づいて、損害賠償請求をすることが考えられます。

もっとも、債務不履行や不法行為を追求する場合、医師側が「債務を履行していないこと」や「法的注意義務違反」があることを具体的に立証しなければなりません。
ここでは、何が「債務」であり、何が「注意義務」なのかを具体的に特定する必要があります。

ここでは、㋐手術それ自体の診察義務違反以外にも、㋑手術後の診断および治療義務違反、㋒医師が患者に対して正しい情報を提供したかという説明義務違反などが問題となります。

診察義務違反の注意点

㋐㋑診察義務違反については、たとえ美容外科医であっても、医師一般の義務が妥当すると解釈されています。

医師一般の義務として、身体に侵襲を加える手術行為を行うにあたっては、当該手術の要否及び適否を慎重に判断し、当該患者の体質、患部の状態等について十分な事前の検査を行い、医師としての高度の専門的見地から、当該手術の時期、方法、程度、範囲等を十分に検討して、手術を実施すべきであり、手術の施行後においても、細菌感染等に対する十分な予防措置を講ずるべき注意義務があることはいうまでもないところである。そして、右の義務はたとえ被告が美容外科医であり、手術の対象が健康人である場合であっても基本的に異なるところはない。

京都地判平成7年7月13日判時1558号104頁

この裁判例では、㋐として、二重手術後に「滅菌されたガーゼで遮眼」すべきであったか否かが争われました。
眼科医の意見では遮眼すべきとされていたのに対し、美容外科側は、遮眼すれば二重にならないと主張したことから、㋐の注意義務違反は認めませんでした。
そのため、上記㋐の義務は、必ずしも眼科などの特定分野の一般的な常識のみならず、美容外科医の立場も考慮されていることには注意が必要です。

もっとも、この裁判例では、原因が何であれ、瞼が膨張し腫脹の状況になった場合、速やかに抗生物質の投与したり、抜糸することが原則であるとして、たとえ美容外科医であっても、医師一般の義務としての治療行為を行うべきであったと認め、㋑の義務違反を認めました。

診察義務違反の限界

もっとも、㋐手術それ自体の診察義務違反については、どのような手術をするのかは一長一短があり、必ずこの手術をすべきであるとまではいえないという難しさがあります。
また、㋑手術後の診察義務違反についても、手術後の行為が原因となって損害が拡大したと立証するハードルも高いところです。

この限界を超えるための法理として代表的なのが、美容医療の特殊性から㋐㋑の診察義務のハードルを高くする法理や、㋒説明義務違反の主張となります。

美容医療の特殊性とは?

美容医療の手術の場合、通常の治療行為の場合と異なり、その処置を直ちに行うべき緊急性や必要性に乏しいところです。
だからこそ、美容クリニックは、大々的な宣伝を行って患者を誘引し、患者本人のコンプレックスに訴えかけようとします。
このような広告を見たからこそ、患者側は、より美しくありたいと考えるわけですから、手術においては、この患者の主観的願望を満足させることが目的となります。

こういった特殊性を踏まえれば、㋐の注意義務については、一般的な美的観点も含めた良好な仕上がりを提供する義務があるという法律構成をすることも可能です(東京地判平成15年7月30日判タ1153号224頁〔豊胸手術の切開位置〕)。

また、㋒説明義務の点についても、患者のより美しくありたいという主観的願望を満足させるという目的のために、手術前に、治療の方法・効果・副作用の有無等を説明し、患者の自己決定に必要かつ十分な判断材料を提供すべき法的義務があるといえます(広島地判平成6年3月30日判タ887号261頁〔隆鼻術〕)。
そのため、宣伝記事において楽観的な記載をしていた場合には、それらの記事に掲載されていない治療効果の限界や危険性について、患者の誤解や過度の期待を解消するように十分な説明をする法的義務があるとも判断されています(東京地判平成7年7月28日判時1551号100頁〔多汗症・腋臭治療〕)。

美容医療でトラブルにならないためには?

美容医療でトラブルにならないようにするためには、YouTubeやinstagram、TwitterなどのSNS上の動画や画像を見るにあたっては、誠実な情報発信をしているアカウントを中心に参考にするようにしましょう

また、医学的な知識を要するものですから、単なるインフルエンサーだけではなく、医師や看護師などの国家資格を有する専門家による情報発信が重要となります。

美容医療でトラブルは弁護士に相談を!

もし、あなたが美容医療のトラブルに巻き込まれた場合には、すぐに弁護士に相談をするようにしましょう。

せっかくお世話になった医師を訴えるのは気が引けてしまうかもしれませんが、治療費や慰謝料を求めることは、あなたの正当な権利です。

法律事務所Zでは、これまでも美容医療のトラブルを取り扱っております。私自身も美容医療を利用しており、富山医療問題研究会にも所属しておりますから、適切なアドバイスをすることも可能です。

もし、美容医療でトラブルがあるのであれば、当事務所までお問い合わせいただけますと幸いです。

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