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#1: 気圧座標,君の本心は?

イントロダクション

私は気象学の学習を一歩一歩やっています.今回ははじめてnoteに気象のことを書き不慣れな部分が多いです.今回は気象学の最初のほうで出てくる気圧座標系についてまとめたいと思います.まとめ方としては日ごろの気象の学習でも実践している教科書に書いてあることを自分の言葉で書き直していくスタイルをとっています.大学で言うとレポートに近い感じです笑.今回まとめることは自分の気象学学習の途中経過としての意味を持たせたいです.したがって完璧に体系化された知識ではなく,今持っている知識を組み合わせて書きたいと思います.今回述べたことで正しいことはもちろん,間違えていることも途中経過です.きっとこの途中経過は将来気象の学習でここに振り返ったとき大切な記録になっていると思います.

気象を学習している方に向けてですが,この記事を読んで,気象の学習の動機付けや,知識の整理や解釈のお役に立てていただければ幸いです.

気圧座標系の気持を知りたい…

私は気圧座標系に去年の夏出会いました.そのときは高度が気圧になることに違和感がたくさんあり,基本方程式系を導出する過程の行間を埋めるのに数時間かかったのが思い出です.しかし数式を処理することに精いっぱいになっていたので物理的意味はわかりませんでした.ひとつ印象的なのは,「音波が除去できる」.すべてがあたかも人為的な操作で君の気持すら感じられないまま気象予報士試験に合格しました.そしてに再開しました.別の教科書で.そして私は学部一年の教養数学,一般教養を使って再び君の気持を理解しようと努めました.しかしながらスムーズにいくことはなく,理解したと思ってさらに進むと間違えていて戻って,その繰り返しをしていました.
それを何度も繰り返したいま私は君の本心が見えた気がします.しかし今でも君の気持がすべてわかったとは断言できません.でもとりあえず書きまとめてみました.もしかしたら誤解もあるかもしれません.その時はどうか許してくださいっ!!

今回はダイアローグモノローグを交えて書いていこうと思います.これから書くことは私が独学の時,自問自答したことがベースになっています.自問自答したことをダイアローグモノローグとして書きまとめました.登場人物は自分の推しであるぽむぅ,すなわち上原歩夢さんとぽむぅの幼馴染,高咲侑さんです.

密度は厄介

ダイアローグ:「密度計」

高咲侑と上原歩夢は学食で気圧座標系を導入するモチベーションについて疑問を持ち話し合っている.


教科書読んでいたら突然「気圧座標系」というものが出てきて,今までの気圧傾度力が高度傾度力みたいになっちゃってさ.もうぜんぜん何やっているかわからなくてトキメかなくなっちゃった.しかも高層天気図を見ていると高度が高い,低いを,気圧が高い,低いと言っていて慣用的みたいでなんか本質的な関係性がつかめないよ.なんで気圧座標系を導入するか,そして気圧と高度の関係性について教えてよ~
歩夢
気圧座標系は実は侑ちゃんが今までやっていた高度座標系と比べて気象を考えるところでメリットがあるんだよ.ねえ侑ちゃん,気圧計や温度計,風向風力計ってあるでしょう.じゃあ「密度計」ってあると思う??

うーんすぐには思いつかないなあ,密度か… 密度って1㎥の空気の重さのことでしょ,じゃあ同じ大きさの箱に空気をいれて重さを量ればいいんじゃない?
歩夢: 
その空気の重さってどうやって量るの?

あ,たしかに,なんとなくだけどその容器をはかりの上にのせればいいんじゃない?そして測定結果から容器の重みを引けばいいんじゃない?
歩夢
そうすると実は測定結果は0kgになっちゃうよ.よく考えて,その容器の上に空気がのっかっているから密度は量れていないよ.

容器の中を真空にしたときと入れたときの質量差から空気の密度を求めればいいんじゃない?
歩夢:それだと大掛かりになっちゃうよ~

このように密度を測定することは難しいです.また密度は状態方程式からその点における気圧および気温から算出することが可能です.
しかし密度はただ量ればよいものではなく,理論的に計算する際厄介になります.
たとえば高度座標系(厳密にはジオポテンシャル高度)における地衡風は次の式で与えられます:

$$
\vec{u_g} = \frac{1}{f \rho} \hat{k} \times \nabla p
$$

ただし$${\nabla = \left(\frac{\partial}{\partial x}, \frac{\partial}{\partial y}\right)}$$である.以後もこのように使う.

$${\hat{k}}$$は鉛直上向きの単位ベクトルとします.ここで仮定としてコリオリパラメータ$${f=f_0=const.}$$とし,発散を取ると,

$$
\nabla \cdot \vec{u_g} = \frac{1}{f_0} \nabla \cdot \hat{k} \times (\frac{1}{\rho} \nabla p)
$$

ここでもし$${\rho}$$が定数ならば次のことができてすっきりします.

$$
\begin{align*}
\nabla \cdot \vec{u_g} &= - \frac{1}{f_0 \rho} \hat{k} \cdot \nabla \times\nabla p
\\ &= 0
\end{align*}
$$

ここで$${\nabla \cdot \hat{k} \times = - \hat{k} \cdot \nabla \times}$$と$${\nabla \times \nabla = 0}$$を使いました.
そして$${f_0}$$平面上の地衡風は非発散であることが示された!!!やったぁ!!

というより,これは密度を定数としたときであり,実際は密度は時間と空間を変数とする函数であり,密度に対して微分演算が必要となります.
実際,$${f_0}$$平面上の高度座標系において地衡風は非発散でありません!!

このようにして密度は厄介です!
さて今から厄払いをしようと思います.

まずは気圧傾度力を気圧座標版に翻訳しよう

そもそも気圧座標系の独立変数は

高度座標系の独立変数は水平方向でそれぞれ東西,南北方向の$${(x, y)}$$または球面座標での経度と緯度の$${(\lambda, \varphi)}$$です.今回は単純化のため前者を考えます.一方鉛直高度はジオポテンシャル高度の$${z}$$です.我々の目的は鉛直座標に用いている高度$${z}$$を気圧$${p}$$に変換することです.気圧場は次のような函数です:$${p=p(x, y, z, t)}$$.
ここで気圧座標の重要な仮定がひとつあります!!:その名も静水圧平衡です!!

$$
\left(\frac{\partial p}{\partial z}\right)_{x,y,t} = - \rho g
$$

右辺は常に負であるため,気圧$${p}$$は$${z}$$の単調函数です.これは気圧座標が高度座標と一対一に対応されることを保証しています.
これにより気圧座標系において$${z=z(x,y,p,t)}$$が成立します.

いま気圧の全微分を等圧面において行いましょう.それを$${(dp)_p}$$と書くと

$$
(dp)_p = \left(\frac{\partial p}{\partial x}\right)_{y,z,t}(dx)_p+\left(\frac{\partial p}{\partial y}\right)_{x,z,t}(dy)_p+\left(\frac{\partial p}{\partial z}\right)_{x,y,t}(dz)_p+\left(\frac{\partial p}{\partial t}\right)_{x,y,z}(dt)_p
$$

ここで$${(dp)_p}$$は等圧面での演算のため0です.いま$${(dx)_p}$$で両辺を割り整理すると,$${x,y,t}$$が等圧面において互いに独立変数であるため,$${\left(\frac{dy}{dx}\right)_p}$$と$${\left(\frac{dt}{dx}\right)_p}$$は0となります.しかし$${z}$$に関しては等$${p}$$上では変化します.

したがって

$$
-\left(\frac{\partial p}{\partial x}\right)_{y,z,t} = \left(\frac{\partial p}{\partial z}\right)_{x,y,t}\left(\frac{dz}{dx}\right)_{p}
$$

となります.
ここで$${z=z(x,y,p,t)}$$を思い出し,$${p}$$上で全微分して$${(dx)_{p}}$$でわると,

$$
\left(\frac{dz}{dx}\right)_{p}= \left(\frac{\partial z}{\partial x}\right)_{y,p,t}\left(\frac{dx}{dx}\right)_p + \left(\frac{\partial z}{\partial y}\right)_{x,p,t}\left(\frac{dy}{dx}\right)_p+\left(\frac{\partial z}{\partial p}\right)_{x,y,t}\left(\frac{dp}{dx}\right)_p+\left(\frac{\partial z}{\partial t}\right)_{x,y,p}\left(\frac{dt}{dx}\right)_p
$$

ここで再び同様の理由によって,

$$
\left(\frac{dz}{dx}\right)_{p}= \left(\frac{\partial z}{\partial x}\right)_{y,p,t}
$$

したがって

$$
-\left(\frac{\partial p}{\partial x}\right)_{y,z,t} = \left(\frac{\partial p}{\partial z}\right)_{x,y,t}\left(\frac{\partial z}{\partial x}\right)_{y,p,t}
$$

ここで静水圧平衡の仮定$${(\frac{\partial p}{\partial z})_{x,y,t} = - \rho g}$$を代入し,左辺を高度座標系での気圧経度力$${-\frac{1}{\rho}(\frac{\partial p}{\partial x})_{y,z,t}}$$の形に合わせると

$$
\begin{align*}
-\frac{1}{\rho}\left(\frac{\partial p}{\partial x}\right)_{y,z,t} &= - g\left(\frac{\partial z}{\partial x}\right)_{y,p,t} \\
&= - \left(\frac{\partial \Phi}{\partial x}\right)_{y,p,t}
\end{align*}
$$

またy方向も同様の手順によって

$$
\begin{align*}
-\frac{1}{\rho}\left(\frac{\partial p}{\partial y}\right)_{x,z,t} &= - g\left(\frac{\partial z}{\partial y}\right)_{x,p,t} \\
&= - \left(\frac{\partial \Phi}{\partial y}\right)_{x,p,t}
\end{align*}
$$

これら2つをまとめると

$$
- \frac{1}{\rho} \nabla_z p = - \nabla_p \Phi
$$

を得ます.ここで$${\nabla}$$の下の添え字はそれぞれの座標系における演算であることと固定された変数を意味しています.
したがって気圧座標において気圧傾度力はジオポテンシャルの勾配で表現されます.
気圧座標系における水平方向の運動方程式は次の式で与えられます:

$$
\frac{D \vec{u}}{Dt} = - \nabla \Phi - f \hat{k} \times \vec{u}
$$

ここでラグランジュ微分$${\frac{D}{Dt}}$$は高度座標のときのラグランジュ微分$${\frac{D}{Dt}=\frac{\partial}{\partial t}+\vec{u} \cdot \nabla+w \frac{\partial}{\partial z} }$$のアナロジーとして

$$
\frac{D}{Dt}=\frac{\partial}{\partial t} + \vec{u} \cdot \nabla + \omega \frac{\partial}{\partial p}
$$

と定義します.ここで$${\omega=\frac{Dp}{Dt}}$$は鉛直p速度であり,鉛直流の大きさを示しています. 例えば$${\omega > 0 }$$のとき$${p}$$が下層ほど大きいため,下降流を示しているため高度座標の鉛直流の指標である$${w=\frac{Dz}{Dt}}$$とは正負が逆であることに留意する必要があります.

両者の近似的な関係は静水圧平衡(気圧座標系の仮定)から直ちに導くことができます:

$$
dp = - \rho g dz
$$

この両辺をdtでわると

$$
\begin{align*}
\frac{dp}{dt}=&-\rho g \frac{dz}{dt} \\
\omega =& - \rho g w
\end{align*}
$$

(2022-08-24追加: 近似なし)

$${\frac{Dp}{Dt}}$$を高度座標で展開すると,

$$
\frac{Dp}{Dt} = \frac{\partial p}{\partial t} + \vec{v} \cdot \nabla p + \frac{\partial p}{\partial z}
$$

ここで$${\vec{v}=\vec{v_g}+\vec{v_a}}$$のように地衡風成分と非地衡風成分に分け,$${\vec{v_g} \cdot \nabla p=0}$$であることと,静水圧平衡の関係を適用すると,

$$
\frac{Dp}{Dt} = \frac{\partial p}{\partial t} + \vec{v_a} \cdot \nabla p - \rho g w
$$

を得ます.近似的に

$$
\omega \approx - \rho g w
$$

となります.


先ほど高度座標系での地衡風に発散をとったように,気圧座標系の地衡風に発散をとってみましょう.気圧座標系の地衡風は高度座標と同様,コリオリ力と気圧傾度力がつりあっている風です.ここで仮定として,コリオリパラメータ$${f=f_0=const.}$$とします.
地衡風は次の式で与えられます.

$$
\vec{u_g} = \frac{\hat{k}}{f_0} \times \nabla \Phi
$$

地衡風バランス

これで$${\hat{k}}$$は前回と同様に鉛直上向きの単位ベクトルとします..
いま地衡風に発散をとると

$$
\begin{align*} \nabla \cdot \vec{u_g} &= \frac{1}{f_0} \nabla \cdot (\hat{k} \times \nabla \Phi) \\
&= - \frac{1}{f_0} \hat{k} \cdot (\nabla \times \nabla \Phi) \\
&= 0
\end{align*}
$$

ここで高度座標の際と同様にベクトル解析の公式を使いました.
したがって気圧座標系における地衡風は非発散であることがわかりました.なおコリオリパラメータを一定であることを仮定しています.この事実は気圧座標系が基になっている準地衡風方程式系において核心的な役割を担います.(中の人は現在学習中,今後準地衡風方程式系についても投稿したいと思う)

連続の式 あたかも非圧縮性流体のようにふるまう

高度座標系における連続の式(質量保存則)を思い出してみましょう.

$$
\begin{align*}
\frac{\partial \rho}{\partial t} =& - \nabla \cdot (\rho \vec{u}) \\
\frac{D \rho}{Dt} =& - \rho \nabla \cdot \vec{u}
\end{align*}
$$

この式は次の式と同値です.

$$
\frac{D(\rho V)}{Dt} = 0
$$

この式はラグランジュ系では質量は変化しない,つまり流れに沿って質量は変化しないことを意味しています.これはラグランジュ系の公理です.
この式を気圧座標系で微分演算を実行し展開しましょう.簡単のため体積$${V=\delta x \delta y \delta z}$$とします.ここで気圧座標系の核心的仮定,静水圧平衡,$${\delta p = - \rho g \delta z}$$を使うと,

$$
\begin{align*}
\frac{D(\rho \delta x \delta y \delta z)}{Dt} &= \frac{D\left(\rho \delta x \delta y \left(- \frac{\delta p}{\rho g}\right)\right)}{Dt} \\
&= -\frac{1}{g}\frac{D}{Dt}(\delta x \delta y \delta p) = 0
\end{align*}
$$

となり,密度が消去された!!!やったあ厄払い成功!!
でもまだまだ計算は終わりません.いま微分を実行すると,

$$
\begin{align*}
0 &=-\frac{1}{g}\frac{D}{Dt}(\delta x \delta y \delta p) \\
&= -\frac{1}{g}\left(\frac{D\delta x}{Dt}\delta y \delta p + \frac{D\delta y}{Dt}\delta x \delta p +\frac{D\delta p}{Dt}\delta x \delta y \right)
\end{align*}
$$

ここで両辺に$${-\frac{g}{\delta x \delta y \delta p}}$$を両辺にかけると

$$
\frac{1}{\delta x}\frac{D\delta x}{Dt}+ \frac{1}{\delta y}\frac{D\delta y}{Dt} +\frac{1}{\delta p}\frac{D\delta p}{Dt} = 0
$$

ここでそれぞれ$${\frac{D\delta x}{Dt} \equiv \delta u, \frac{D\delta x}{Dt}\equiv \delta v, \frac{D\delta x}{Dt} \equiv \delta \omega}$$と定義し,$${\delta x , \delta y, \delta p \to 0}$$の極限をとると

$$
\frac{\partial u}{\partial x} + \frac{\partial v}{\partial y} + \frac{\partial \omega}{\partial p} = 0
$$

を得ます.なんとこれは「気圧座標系においては大気は非圧縮性流体とみなせる」ことを言っています.非圧縮流体とは速度場の発散がゼロの流体のことです.しかしこれは密度変化が無視できることをいっているわけではないことに注意しなければなりません.式の途中において密度は打ち消されたが,密度の変化そのものが消えたわけではありません.要するに密度は気圧座標でimplicitになったわけです. 密度の変化について述べた式は熱力学の式です.熱力学第一法則,例として

$$
c_v \frac{DT}{Dt} - \frac{p}{\rho ^2} \frac{D \rho}{Dt} = \dot{Q}
$$

(右辺の$${\dot{Q}}$$は非断熱加熱率)などです.

(補足: 流れとともに移動する空気塊の質量変化がゼロであるのはどのような時でも成り立ちます)
(補足:高度座標系の連続の式も同様の手順によって得られます)
気圧座標の連続の式を変形すると

$$
-\left(\frac{\partial u}{\partial x} + \frac{\partial v}{\partial y}\right) = \frac{\partial \omega}{\partial p}
$$

となります.これは端的にいうと水平収束/発散があれば鉛直流が発生することをいっています.

音波はどこに?

気圧座標において大気が圧縮流体として扱えることは大きいメリットです.
いま音波を考えてみましょう.音波は断熱的な圧縮の振動パターンが一方向に音速で伝播する波です.また媒質である気塊は波の伝播する方向に平衡に前後に動き,平均するとその場にとどまっています.
しかし気圧座標は圧縮性流体とみなせると言っているので音波は起こらないでしょう.実際,一方向の媒質を考えるので一次元の連続の式を書くと

$$
\frac{\partial u}{\partial x} = 0
$$

であり,$${u}$$はもはや波動解をもちません.
したがって気圧座標は音波を除去できます.
ここで気圧座標そのものが音波を除去することに貢献したわけではありません.気圧座標の連続の式を導出する際,ラグランジュ的に追跡した微小な直方体の質量を静水圧平衡の仮定によって密度が除去され,大気は非圧縮性流体の特徴を持つようになりました.したがって静水圧平衡は音波を除去する仮定でもあります.

再掲:

$$
\begin{align*}
\frac{D(\rho \delta x \delta y \delta z)}{Dt} &= \frac{D\left(\rho \delta x \delta y \left(- \frac{\delta p}{\rho g}\right)\right)}{Dt} \\
&= -\frac{1}{g}\frac{D}{Dt}(\delta x \delta y \delta p) = 0
\end{align*}
$$

密度変化はなくなったわけじゃない,implicitになった.

静水圧平衡,

$${\frac{\partial p}{\partial z} = - \rho g}$$

そのものは大気を非圧縮性流体にしたわけではありません.もしそうであれば$${\rho}$$は定数となってしまいますが,そうなると気圧は高度に比例することになってしまい観測事実と合いません.このような流体は浅水系と呼ばれ,地球流体のもっともシンプルな仮定です.このような流体は流れを二次元的に扱うことができ,もう一つは流体の厚みを考えればよいです.

話を戻しますと,そもそも大気は非圧縮性流体になったわけではなく,気圧座標の枠組みから見るとあたかも非圧縮性流体ぽく見えるわけです.気圧座標では密度変化がなくなったわけではなく,implicit(意味: 暗黙な,潜在的な)になっただけです.簡単に言えば,物的なことは変わっておらず,意識が変わったということです.

個人的になくなるimplicitになることの区別は気圧座標以外でも,気象学全体で重要だと思います.私たちはよく数式の操作で「消えた」といっていますが,それは物理的に消えたんでしょうか? それともその数式で見えなくなっただけでしょうか?
両者の区別はさらに気象以外の数学物理,そして実生活でもその区別はまた重要だと思います.

水平面?等圧面?鉛直方向

ダイアローグ: 水平感覚を失った高咲侑

数日後,高咲侑は気圧座標系について慣れつつあったが等圧面と水平面の区別がつかなくなっていた.そこで侑ちゃんは歩夢ちゃんと空き教室で自主セミナーを行っている


高層天気図をいくつか読んでいたんだけどそこに等高度線があるっていうことはその図で標高が違うということなんでしょ?でも教科書は水平方向の運動方程式と書いてあって,その運動方程式は水平方向と言っているから風は等圧面にいるんでしょ.そうなると等圧面は水平じゃないから…もうごちゃごちゃになってワカラナイヨー!!あと鉛直p速度も等圧面と垂直なの,それとも水平面と垂直なの,どちらかワカラナイヨー!!

歩夢
侑ちゃん,気圧座標での気圧傾度力についてもう一度考えてみようか.そのあと鉛直p速度の向きも考えてみようか?ねぇさっきの導出成分だけだったでしょ,ベクトル表記してみようよ.気圧傾度力の高度座標のとき気圧座標との関係を書いてみると

$$
- \frac{1}{\rho} \nabla = - \nabla \Phi
$$

だね.じゃあまず左辺を単位ベクトルを使って表現してみようよ.


えーとこうかなナブラの定義をちゃんと書くと$${\nabla = \hat{e_x} \frac{\partial}{\partial x}+\hat{e_y}\frac{\partial}{\partial y}}$$だから…

$$
- \left(\frac{1}{\rho} \frac{\partial p}{\partial x} \hat{e_x}+ \frac{1}{\rho} \frac{\partial p}{\partial y} \hat{e_y}\right)
$$

でしょ?

歩夢:うんあっているよじゃあこの式もう一度見て

$$
- \frac{1}{\rho} \nabla p = - \nabla \Phi
$$

侑ちゃん,この式でベクトルの向きでなんか言えることない?


うーん… $${\nabla p}$$と$${\nabla \Phi}$$で平行とかかな~

歩夢
うんそうだよ!平行だし,等式見たらわかるように向きも大きさも同じ.じゃあ右辺について考えてみようか.さっき考えた高度座標の単位ベクトルを使ったみたいにやってみようか.


じゃあこの続きをかいて…

$$
- \left(\frac{1}{\rho} \frac{\partial p}{\partial x} \hat{e_x}+ \frac{1}{\rho} \frac{\partial p}{\partial y} \hat{e_y}\right) = - \left(\frac{\partial \Phi}{\partial x} \hat{e_x}+ \frac{\partial \Phi}{\partial y} \hat{e_y}\right)
$$

であっている?

歩夢
そうだね,じゃあこの式ってさっきやった導出のどこかが根拠になっているんだよ,どこかわかる?

$$
\begin{align*}
-\frac{1}{\rho}\left(\frac{\partial p}{\partial x}\right)_{y,z,t} &= - g\left(\frac{\partial z}{\partial x}\right)_{y,p,t} \\
&= - \left(\frac{\partial \Phi}{\partial x}\right)_{y,p,t}
\end{align*}
$$

$$
\begin{align*}
-\frac{1}{\rho}\left(\frac{\partial p}{\partial y}\right)_{x,z,t} &= - g\left(\frac{\partial z}{\partial y}\right)_{x,p,t} \\
&= - \left(\frac{\partial \Phi}{\partial y}\right)_{x,p,t}
\end{align*}
$$

ん?

歩夢
じゃあこれに単位ベクトルを両辺につけて足し合わせたら何になるかわかる?


(ホワイトボードを指さしながら,これ?)

$$
- \frac{1}{\rho} \nabla = - \nabla \Phi
$$

歩夢
そうだよ,それぞれの式に単位ベクトルをよく見てみると,ちょっと書き方があれかもしれないけれど,$${x}$$方向について

$$
\left(- \frac{1}{\rho} \frac{\partial p}{\partial x}=-\frac{\partial \Phi}{\partial x}\right) \hat{e_x}
$$

とあと$${y}$$方向も別々に書けるんだよ.しかもこれは先生が導出したときに時に単純に両辺に$${\hat{e_x}}$$や$${\hat{e_y}}$$をつけただけ.つまり両辺で$${\nabla}$$は変わらないよ.


じゃあ気圧座標でも(ホワイトボードを指しながら)$${\nabla = \hat{e_x} \frac{\partial}{\partial x}+\hat{e_y}\frac{\partial}{\partial y}}$$になるということか,つまり単位ベクトルの方向は高度座標と変わらない,つまり水平面は気圧座標で等圧面になるわけではなくて,地理的な水平面ということで,いいよね?

歩夢
そうだよ,侑ちゃん,水平方向については解決したね.じゃあ鉛直方向について深めようか.ねぇ気象の教科書に書いてある鉛直方向ってどう定義されているかわかる??


えーと重力が働く方向の向き,つまり物が落ちる向きでしょ?
でも気圧座標では鉛直という意味は変わって等圧面と垂直を気圧座標にとっての鉛直といいんじゃないの?高度座標でいう鉛直って水平面と垂直な方向ということの類似で.だって鉛直$${p}$$速度って$${\omega = \frac{Dp}{Dt}}$$で,鉛直流は高度座標ではふたつの水平面を行き来する流れだったら気圧座標ではふたつの等圧面を行き来する流れということで.しかも高度座標だったらその距離って最短でしょ.鉛直向きが水平面に垂直だから.それと似ている感じに鉛直p速度も二つの等圧面を最速,最短で行き来する流れでしょう!

侑ちゃんが思っていること

歩夢
侑ちゃん間違えているよ,鉛直は鉛直だよ,重力の働く向きだよ.


え,気圧座標系にとっての鉛直って高度座標と同じなの!?

歩夢
同じだよ.侑ちゃん,今から説明してあげるからちゃんと見ていてね.
まず静水圧平衡を書いて…

$$
\frac{\partial p}{\partial z} = - \rho g
$$

そして両辺に,鉛直向きの単位ベクトル$${\hat{e_z}}$$をつけて…

$$
\frac{\partial p}{\partial z} \hat{e_z} = - \rho g \: \hat{e_z}
$$


えぇえ!!なんでそんなことできるの.

歩夢
侑ちゃん,高度座標系の鉛直方向の運動方程式で加速度を0と近似したのを静水圧平衡ということは覚えている?この式はわざと単位ベクトルをつけたの,とりあえず運動方程式をかくと:

$$
\begin{align*}
& \frac{Dw}{Dt} = - \frac{1}{\rho} \frac{\partial p}{\partial z} - g \\
& \to 0
\end{align*}
$$

だよ.


あ,そうだった.そして右辺を整理すると$${\frac{\partial p}{\partial z}= - \rho g}$$になるんでしょ.

歩夢
そうだよ.そしてこの式$${\frac{\partial p}{\partial z} \hat{e_z} = - \rho g \: \hat{e_z}}$$(ホワイトボードを指しながら)ちょっといじってみよう.

$$
dp \:\hat{e_z} = - \rho g \:dz\: \hat{e_z}
$$

そしてdtで割って

$$
\frac{dp}{dt} \:\hat{e_z} = - \rho g \:\frac{dz}{dt}\: \hat{e_z}
$$

$${\omega}$$を$${\frac{dp}{dt}}$$,$${w}$$を$${\frac{dz}{dt}}$$と定義して,あと上昇流が正になるようなるようにして…

$$
-\omega \: \hat{e_z} = \rho g \: w \hat{e_z}
$$

侑ちゃん,これでもうわかったでしょ?


あホントだ,鉛直p速度って鉛直向き,つまり重力の働く向きで気塊の速度を気圧で測ったものになるということか!ああ,ようやくわかったよ.

正しくは

歩夢
ふふ♪ ようやく解決されたね.あ,最後に侑ちゃんが言っていた気圧面の高層天気図で高度の高いところが高気圧,高度の低いところが低気圧の意味わかる?


等圧面は同じで高度の違いで高低が決まるということか,じゃあある高度で考えたとき,その等圧面が相対的に高度の高いところではその基準高度では… 気圧は下ほど大きいということだから高いということ,逆に等圧面で相対的に低いところは基準面では気圧が低いということかな

歩夢
侑ちゃん,あっているよ.授業で言っていたこともまとめると気圧座標では測りにくかったり計算に邪魔な密度が見えなくなって,気圧座標系では水平面と鉛直線は高度座標と向きが同じで高層天気図では高度が気圧に対応していることだね.
じゃあ今日はこれで終わりにしようね.

私から一言:

これは私が気圧座標について再考した際,座標系がどうなっているかごちゃごちゃしたときに自問自答したことです.それをゆうぽむの会話に落としてみました.なんとなくやっていると気づかない議論ですが,じっくり考えてよくわからなくなって脱却するのに結構時間がかかりました.でてきた操作は単純なものがほとんどですがセミナーはこうしたものでなりなっていると思います(なお中の人は二人以上でセミナーをする経験があまりなく,ひとりでやっています.これぞ一人セミナーです)一人でセミナーしていてもダイアローグにすると意外と会話しているようにみえてすごいです.(独り言のレベルが高すぎる)

モノローグ:侑ちゃんのノート

侑ちゃんは気象の教科書に書いてある数式に対してひとりで解釈を与えトキメキ

気圧座標版静水圧平衡!!

気圧座標版の静水圧平衡なのになんでわざわざ高度座標,そして仮定であたええられているのが翻訳されるんだろう…

教科書の数式:

$$
\frac{\partial \Phi}{\partial p}=-\alpha
$$

さて行間を埋めていくか

$$
\frac{\partial p}{\partial z} = - \rho g
$$

まあまあちょっと考えてみるか.
この式はもともと高度座標系で定義されていたよね.
あ,こう考えればいいか:
高度座標で気圧傾度力を起こすのは気圧の勾配,つまり高度座標では気圧$${p}$$が「主役」.そしてそれを鉛直座標系に選ばれた高度$${z}$$で微分している…
じゃあアナロジーとしてしてこうしてみよう

その座標系で水平気圧傾度力を表現する主人公を,鉛直座標に選んだ変数で偏微分したのが静水圧平衡の式
高咲侑の解釈

気圧座標系の場合どうなるんだろう.まず気圧傾度力を起こす主役はジオポテンシャル$${\Phi}$$で,そして鉛直座標に選ばれた変数は気圧$${p}$$で,さて偏微分を実行していくか

$$
\begin{align*}
\left(\frac{\partial \Phi}{\partial p}\right)_{x,y,t} &=
g \: \left(\frac{\partial z}{\partial p}\right)_{x,y,t} \\
&= - \frac{1}{\rho} = -\alpha
\end{align*}
$$

(数式の横のメモ)

$$
\left(\frac{\partial z}{\partial p}\right)_{x,y,t}=1/ \left(\frac{\partial p}{\partial z}\right)_{x,y,t} = -1/\rho g
$$

ここで$${\alpha=1/\rho}$$は比容で,単位は$${[\mathrm{m^3\:kg^{-1}}]}$$だから,1kgの空気はどのくらいの体積が必要になるか表しているね,つまりどのくらい空気が膨らんでいるか.
よしこれでなんとか静水圧平衡の行間が埋められた.

うーんこの式はどのような意味をもつかわからないなあ.
まず$${ \frac{\partial \Phi}{\partial p} }$$について,右辺は常に負であるため高度に対応する$${\Phi}$$が高くなると気圧の$${p}$$が小さくなるね.これは当たり前だね.まあ書いてみればこうだからね

$$
\frac{\Phi (p+\delta p,x,y,t) - \Phi (p,x,y,t)}{\delta p} < 0
$$

うーんでも気圧の方向が高度と逆なのはめんどくさいので$${p}$$を$${-p}$$と置き換えるかあ… そうすれば

$$
\frac{\partial \Phi}{\partial (-p)} = - \frac{\partial \Phi}{\partial p} = \alpha
$$

$${\alpha}$$は常に正で両辺常に正になったね.比容は空気のふくらみに対応するから.たとえば断面積が一定な気柱を考えると$${\alpha}$$が大きいと$${\frac{\partial \Phi}{\partial (-p)}}$$は大きくなるから.これに「層厚」と名付けるか.いま状態方程式によって$${\alpha=\frac{RT}{p}}$$になるね.
じゃあ$${- \frac{\partial \Phi}{\partial p} = \frac{RT}{p}}$$を積分してみるか.まずこの式を次のように変形して…

$$
\partial \Phi = - RT \frac{\partial p}{p}
$$

積分範囲を$${p_1}$$から$${p_0}$$にして.あ,ただし$${p_1< p_0}$$っと,そして$${p_1}$$に対応する高度(ジオポテンシャル)を$${\Phi_1}$$,$${p_0}$$に対応する高度を$${\Phi_0}$$として.高度は気圧と向きが逆だから$${\Phi_1>\Phi_0}$$に注意して.簡単にするためにTを気層の平均気温$${\bar{T}}$$して,これは

$$
\bar{T} = \frac{\int_{p_1}^{p_0} T d \ln p}{\int_{p_1}^{p_0} d \ln p}
$$

と書けるね.
さて積分を遂行すると

$$
\int_{\Phi_0}^{\Phi_1} d \Phi = - R\bar{T} \int_{p_0}^{p_1} d \ln p
$$

ここで$${p_1< p_0}$$だから

$$
\int_{\Phi_0}^{\Phi_1} d \Phi = R\bar{T} \int_{p_1}^{p_0} d \ln p
$$

結果は高度差$${\Delta \Phi \equiv \Phi_1 - \Phi_0}$$とおくと

$$
\Delta \Phi = R \bar{T} \ln \left(\frac{p_0}{p_1}\right)
$$

!!,これって教科書の最初にあった層厚の公式そのものだ,そして層厚$${\Delta \Phi}$$は気柱の平均気温$${\bar{T}}$$に比例することがわかるね.この性質結構重要なんだよなあ.気象予報士試験で再三訊かれるからね.
一方で先ほど自分で名付けたほうの層厚

$$
- \frac{\partial \Phi}{\partial p} = \frac{RT}{p}
$$

おおむねその点の気温に比例するけれど.しかし右辺に$${p}$$があるため

$$
\frac{\partial \Phi}{\partial (- \ln p)} = RT
$$


としたら,その点の温度に比例することとなり積分結果としての層厚と性質が近くなるね.あと私が名付けた「層厚」は偏微分で定義されることを強調して「微層厚」として.これでなんとか解釈が与えられた.

註:ここで私より

しかし応用を考えると

$$
- \frac{\partial \Phi}{\partial p} = \frac{RT}{p}
$$

を微層厚としておくほうがいいです.(実際私の気象の学習で解釈を与える際こちらを微層厚,もしくは単純に層厚といっている)

熱力学の式


高咲侑は熱力学の式に対して解釈をふかめようとしていた.

…教科書は

$$
\frac{\partial T}{\partial t} + u \frac{\partial T}{\partial x} + v \frac{\partial T}{\partial y} - \sigma_p \omega = \frac{\dot{Q}}{c_p}
$$

ただし$${\sigma_p}$$は気圧座標における静的安定度で

$$
\sigma_p = \left(\frac{\alpha}{c_p} - \frac{\partial T}{\partial p}\right)
$$

と書いてあるなあ.なんか静的安定度でよくわからなくて
トキメカナイヨー!!!

まず式を追いかけてみるか,

まず熱力学の式第一法則を書くか:

$$
c_v\frac{DT}{Dt} + p \frac{D\alpha}{Dt} = \dot{Q}
$$

(註: ここで$${\dot{Q}}$$は非断熱加熱率を表しています.潜熱効果,熱放射などが非断熱効果です.また$${c_v}$$は等積比熱です.)

この式をこれらで変形して…

$$
\begin{align*}
& \frac{D}{Dt}(p \alpha)=p \frac{D \alpha}{Dt}+\alpha \frac{Dp}{Dt} \\
& p \alpha = RT \\
& c_v+R = c_p
\end{align*}
$$

代入してみると

$$
\begin{align*}
c_v\frac{DT}{Dt}+\frac{D}{Dt}(p\alpha)-\alpha\frac{Dp}{Dt} &= \dot{Q} \\
c_v\frac{DT}{Dt}+R\frac{DT}{Dt}-\alpha\frac{Dp}{Dt} &= \dot{Q} \\
c_p\frac{DT}{Dt} -\alpha \frac{Dp}{Dt} &= \dot{Q}
\end{align*}
$$

となります.熱力学の第一法則の別表現が出てきた~.教科書もここからスタートしているみたいだね.

(:$${c_p}$$は等圧比熱です.ここで$${c_pT}$$はエンタルピーと呼ばれ,等圧変化ならば非断熱加熱とエンタルピー変化は等しくなります.ときどき顕熱と呼ばれます)

あ,$${\frac{Dp}{Dt}}$$が鉛直p速度の定義そのものだ!!したがって熱力学の式は

$$
c_p\frac{DT}{Dt} -\alpha \omega = \dot{Q}
$$

あとは教科書通り,ここで両辺を$${c_p}$$で割り,ラグランジュ微分を展開して…

$$
\begin{align*}
\frac{\partial T}{\partial t} + u \frac{\partial T}{\partial x} + v \frac{\partial T}{\partial y} + \omega \frac{\partial T}{\partial p} -\omega \frac{\alpha}{c_p} &= \frac{\dot{Q}}{c_p} \\
\frac{\partial T}{\partial t} + u \frac{\partial T}{\partial x} + v \frac{\partial T}{\partial y} - \left( \frac{\alpha}{c_p} - \frac{\partial T}{\partial p} \right)\omega &= \frac{\dot{Q}}{c_p}
\end{align*}
$$

うーん$${\omega}$$のところ,静的安定度だ!でも静的安定度ってなんか別の表現ないかな?

いろいろメモ書くこと20分…

温位$${\theta}$$を対数をとって気圧$${p}$$で偏微分して.
まず温位は次のように定義されていたね.

$$
\theta = T \left( \frac{p_o}{p} \right)^{R/c_p}
$$

これを$${p}$$で対数微分をとって

$$
\frac{1}{\theta} \frac{\partial \theta}{\partial p} = \frac{1}{T} \frac{\partial T}{\partial p} - \frac{R}{c_p}\frac{1}{p} \frac{\partial p}{\partial p} + \frac{R}{c_p}\frac{1}{p_0} \frac{\partial p_0}{\partial p}
$$

ここで$${\frac{\partial p_0}{\partial p}}$$は$${p_0}$$は定数なのでゼロである.なんか静的安定度の定義に寄ってきたから最後に両辺に$${-T}$$をかけて

$$
- \frac{T}{\theta} \frac{\partial \theta}{\partial p} = \frac{R}{c_p}\frac{T}{p} - \frac{\partial T}{\partial p} = \frac{\alpha}{c_p} - \frac{\partial T}{\partial p}
$$

これで静的安定度の$${\sigma_p}$$の別表現ができて,こっちのほうが本質的だね.$${\sigma_p =- \frac{T}{\theta} \frac{\partial \theta}{\partial p}}$$は正であるとき安定であり,0であるとき中立,負であるとき不安定だね.例えば正のとき$${p}$$が高くなる$${\theta}$$は低くなって,言い換えれば高度が高くなるほど温位が高い状態にあるね.これを熱力学の式に代入すると

$$
\frac{\partial T}{\partial t} + u \frac{\partial T}{\partial x} + v \frac{\partial T}{\partial y} - \sigma_p \omega = \frac{\dot{Q}}{c_p}
$$

こうして気圧座標系における熱力学の式の行間が埋まった.(ため息)
ここで$${\nabla =\left(\frac{\partial}{\partial x}, \frac{\partial}{\partial y}\right)}$$を用いると,

$$
\frac{\partial T}{\partial t} = - \vec{u} \cdot \nabla T + \sigma_p \omega + \frac{\dot{Q}}{c_p}
$$

ここで式の解釈を与えてあげると,左辺は温度の局所変化で,右辺は第一項は水平温度移流,第二項はあとで考えるとしようか.第三項は非断熱効果だね.

第二項は鉛直方向の温度移流ですが,第一項とはちょっと性質が違うかも.
$${\sigma_p =- \frac{T}{\theta} \frac{\partial \theta}{\partial p}}$$の絶対値が大きいとき,ある二つの等圧面との間に等温位線が集中しているね.もし正ならば上空ほど温位は高く,負ならば上空ほど温位が低い状態.そこに鉛直流$${\omega}$$がかけられているから鉛直流で温度変化の強さがわかって,安定度はどのくらい鉛直的な情報が伝わるかの係数だね.$${\sigma_p \omega}$$が正のとき,これは温度上昇に寄与するね.この場合,$${\sigma_p}$$と$${\omega}$$が両方とも正の時は上層から温位の高い空気がやってくるとき,もうひとつのケースで$${\sigma_p}$$と$${\omega}$$が両方とも負の時で,下層から温位の高い空気がやってくるときだね.
一方$${\sigma_p \omega}$$が負のときで,$${\sigma_p}$$が正かつ$${\omega}$$が負のときで下層から温位の低い空気がやってくるとき,もうひとつは$${\sigma_p}$$が負かつ$${\omega}$$が正のときで上層から温位の低い空気がやってくるとき,どちらもその点で温度が下がるね.


この熱力学の式において,次の仮定をします.
(1) 定常状態$${\frac{\partial}{\partial t}=0}$$
(2) 安定度が正 $${\sigma_p > 0 }$$
(3)断熱的 $${ \dot{Q} = 0 }$$

このとき次の式を得ます.

$$
- \omega = \frac{-\vec{u} \cdot \nabla T}{\sigma_p}
$$

この式はおおむね暖気移流のあるところには上昇流があり,寒気移流があるところには下降流があることを言っています.仮定はつよいですが目安として使える式です.


さて,オイラー形式で熱力学の式が与えられたから,ラグランジュ形式でも熱力学の式を与えるとするか…えーと

$$
\frac{DT}{Dt} = \frac{\alpha}{c_p} \omega + \frac{\dot{Q}}{c_p}
$$

この式ってラグランジュ的な温度変化は断熱的な変化と非断熱的な変化に分けられることを言っているね.
うーん$${\frac{\alpha}{c_p}}$$ってなんか意味がありそうだな
いま非断熱項を無視し全微分$${\frac{D}{Dt}}$$を変分$${\delta}$$に置き換えて

$$
\delta T = \frac{\alpha}{c_p} \delta p
$$

両辺を$${\delta p}$$で割り,変分を限りなく小さくすると

$$
\frac{\partial T}{\partial p} = \frac{\alpha}{c_p}
$$

となって$${\frac{\alpha}{c_p}}$$の意味がわかった~.これは高度座標系における乾燥断熱減率$${\Gamma=\frac{g}{c_p}}$$に似ているね.ここでこれを$${\Gamma_p = \frac{\alpha}{c_p}}$$と定義してみよう.だけど高度座標系の乾燥断熱減率は定数に対し,こちらは$${\alpha}$$が場だから定数ではないね.そして$${\Gamma_p}$$は常に正だね

さっきの熱力学の式で非断熱効果を復活させて代入すると

$$
\frac{DT}{Dt} = \Gamma_p \omega + \frac{\dot{Q}}{c_p}
$$

この式を解釈すると,左辺は温度のラグランジュ的変化を示しているね.右辺第一項は,$${\omega}$$が正,つまり下降流のとき正で,つまり断熱昇温を示していて,一方$${\omega}$$が負のとき,つまり上昇流のとき負であり,断熱冷却を示しているね.そして右辺第二項は非断熱効果だね.

ちょっとよりみち: θについて

途中この式が出てきて気になってるんだけど

$$
\frac{DT}{Dt} = \frac{\alpha}{c_p} \omega
$$

この式はさっきの変形でこう書けたね

$$
\frac{\partial T}{\partial p} = \frac{\alpha}{c_p} = \frac{RT}{p c_p}
$$

これを次のように変形して

$$
\frac{dT}{T} = \frac{R}{c_p} \frac{dp}{p}
$$

これを左辺は$${T}$$から$${T_0}$$,右辺も対応して$${p}$$から$${p_0}$$まで積分して,ここで$${T < T_0}$$,$${p < p_0}$$だから

$$
\ln \left(\frac{T_0}{T} \right) = \frac{R}{c_p} \ln \left(\frac{p_0}{p}\right)
$$

両辺に$${\exp}$$をとって

$$
\frac{T_0}{T} = \left(\frac{p_0}{p}\right)^{R/c_p}
$$

これは温位$${\theta \equiv T_0}$$になるね.

$$
\theta = T \left(\frac{p_0}{p}\right)^{R/c_p}
$$

これで温位の式が得られた~

(註:温位の式において$${p_0}$$は通常1000hpaが選ばれます.つまり$${\theta}$$は気圧$${p}$$のところで気温が$${T}$$の空気が断熱的に1000hpaのところへ動かされたときの気温です.)

二つの平衡のコラボ:温度風

ダイアローグ:温度風ってナニー!!

高咲侑と上原歩夢は後日空き教室で自主セミナーをしている.

: 
温度風って二つの風のベクトルの差でしょ?それってどこに温度要素があるの?

歩夢
温度風の定義ってなにか覚えている?ちゃんとたどっていけばその理由が解るはずだよ?


だから二つの風のベクトルの差なんでしょ~

歩夢
侑ちゃん,その風って厳密にはなにかわかる?


わかんないなあ…

歩夢
その風って地衡風だよ,違う高さの地衡風のベクトルの差が温度風といいんだよ


へえ地衡風の差なんだ.そこからどうやって温度と結びつけるの?

歩夢
それを導くためにちゃんと数式でやろう.数式であるとわかるよ.


えええ!また数式,もう疲れたよお.

歩夢
あと一息だから,それ終ったらもう終わりだから.がんばって侑ちゃん!


ありがとう歩夢,じゃあがんばってついていくね

歩夢
じゃあまず地衡風ベクトルを気圧で偏微分して…


え?偏微分??ベクトルの差なんでしょ?

歩夢
温度風はベクトルの差として定義できるけれど偏微分ととして温度風と定義できるだよ.むしろ偏微分の温度風から積分してベクトルの差のほうの温度風を求めるほうが温度風の本心がわかるよ.だって積分は任意性があるけれど微分のままだとただ一つだもん.


そうなの!じゃあその続きやって

歩夢
うん!まず気圧座標系の地衡風を書くと….

$$
\vec{u_g} = \frac{1}{f} \hat{k} \times \nabla \Phi
$$

そしてこれを$${p}$$で偏微分すると,コリオリパラメータ$${f}$$は$${p}$$に依らないから

$$
\frac{\partial \vec{u_g}}{\partial p} = \frac{1}{f} \hat{k} \times \nabla \left(\frac{\partial \Phi}{\partial p}\right)
$$


あ,これって$${\frac{\partial \Phi}{\partial p}= - \frac{RT}{p}}$$使えるんじゃない?

歩夢
そうだよそれを代入すると

$$
\frac{\partial \vec{u_g}}{\partial p} = - \frac{R}{fp} \hat{k} \times \nabla T
$$

じゃあこれを積分しようか,


なんで$${p}$$は外に出せるの?

歩夢
気圧座標系の$${\nabla}$$は$${p}$$を固定していて定数扱いできるんだよ.


そうだった!じゃあ続きやって

歩夢
わかった.変数分離でやるんだけどこの式こうなるんだよ

$$
\partial \vec{u_g} = - \frac{R}{f}(\hat{k}\times \nabla T) \frac{\partial p}{p}
$$

これを$${p_1}$$から$${p_0}$$まで積分して,あただし$${p_1 < p_0}$$として対応する地衡風はそれぞれ$${\vec{u_{g1}}}$$と$${\vec{u_{g0}}}$$で,$${\vec{u_{g1}}}$$が上層で$${\vec{u_{g0}}}$$が下層の地衡風だよ.そして$${p_1}$$と$${p_0}$$の間の気層の平均気温を$${\bar{T}}$$とすると積分すると

$$
\vec{u_{g0}} - \vec{u_{g1}} = - \frac{R}{f} (\hat{k}\times \nabla \bar{T}) \ln \left(\frac{p_0}{p_1}\right)
$$

ここで左辺が下層の地衡風-上層の地衡風になっていて,温度風の定義に合わせるため符号を逆転させて

$$
\vec{u_{g1}} - \vec{u_{g0}} = \frac{R}{f} (\hat{k}\times \nabla \bar{T}) \ln \left(\frac{p_0}{p_1}\right)
$$

となって温度風が数式で得られたよ!左辺を$${\vec{u_T}}$$と書いてみよう.


あ~ここで温度が関係するのか,気層の平均気温の勾配が温度風を発生させているわけといて,いいかえれば気層の層厚の勾配が温度風を発生させているということなのか.歩夢が書いた式の下に付け加えると,あれうまくいかない!?
こうしてみるか:ちょっと式戻って

$$
\frac{\partial \vec{u_g}}{\partial p} = \frac{1}{f} \hat{k} \times \nabla \left(\frac{\partial \Phi}{\partial p}\right)
$$

そして

$$
\vec{u_{g1}} - \vec{u_{g0}} = \frac{\hat{k}}{f} \times \nabla (\Phi_1 - \Phi_0)
$$

つまり層厚を$${\phi' \equiv \Phi_1 - \Phi_0 }$$としてみて,歩夢が定義したのを使うと

$$
\vec{u_{T}} = \frac{\hat{k}}{f} \times \nabla\phi'
$$

とすっきりしたね.そう考えてみると温度風は層厚風と呼ぶのもありかもしれないね!

歩夢
侑ちゃん,私それにはきづかなかったよ.
さっき私が偏微分としても温度風を定義できるといったよね.こう定義すればいいんだよ

$$
\vec{u_T}' = \frac{\partial \vec{u_g}}{\partial p}
$$


うーんこれだと積分の結果としての温度風と逆になっちゃうんだよなあ
温度風は下層と上層の地衡風のベクトル差にあわせると,$${\frac{\partial \vec{u_g}}{\partial p}}$$だと上から下に評価しているから$${p}$$を$${-p}$$にかえて,下から上に評価するように変えれば整合性があうと思う.改めてこう定義すればいいと思う

$$
\vec{u_T}' = - \frac{\partial \vec{u_g}}{\partial p}
$$

歩夢
あ,そうだね.こうすれば積分版の温度風と結果が一致するね.いままで出した数式を侑ちゃんが考えた定義に合わせれば

$$
\begin{align*}
\vec{u_T}' &= - \frac{1}{f} \hat{k} \times \nabla \left(\frac{\partial \Phi}{\partial p}\right) \\
&= \frac{R}{fp} \hat{k} \times \nabla T
\end{align*}
$$

になるね.


なんか温度風についてまとまった気がするね.だけどよく聞かれるのが,地衡風が上層に向かうと時計回りに変化するとき,暖気移流,逆に反時計回りに変化するとき寒気移流と聞くんだけど,どういうことなの?そして温度風と関係あるの?

歩夢
これは図を使ったほうがわかりやすいと思う.温度移流は二つの等圧面の地衡風の平均風によってもたらされるんだよ.
まず暖気移流の時こんな感じだよ:

地衡風は上層に向かって時計回りに回転するとき,平均風は温度の高いところから低いところから行っているね.これは暖気移流だね.

そして寒気移流のときこんな感じだよ:
逆に地衡風が上層に向かって反時計回りに回転しているね.平均風は温度の低いところから高いところへ行っていて,寒気移流だね.

そして温度風は実は気層の平均気温の等温線と平行に吹いているんだよ.だから温度風は温度を移流するわけではないよ.実際この式をもう一度見て

$$
\vec{u_T} = \frac{R}{f} (\hat{k}\times \nabla \bar{T}) \ln \left(\frac{p_0}{p_1}\right)
$$

$${\nabla \bar{T}}$$って等温線に対して垂直なんだよ.そして$${\hat{k} \times}$$は$${\nabla \bar{T}}$$の方向を90°反時計回りに回すんだよ.そうなると$${\vec{u_T}}$$は等温線と平行だよ.


地衡風が鉛直方向にどう回転するかと温度移流って図に書くとわかりやすいね.
あと温度風って気層の平均気温の等温線と平行に吹いて,一切温度移流は起こさないんだね.私,ずっと温度風って温度移流の風だと思っていたよ(笑).

歩夢
温度風という名前をみると温度を運んできそうなイメージがあったり,温度風と温度移流って名前が似ていて混乱するよね.


まあ温度風ってなにかわかったし,温度風と温度移流の違いもはっきりしてたくさん解決できたよ.

歩夢
侑ちゃんっていろいろ考えすぎなところがあってときどき力が入りすぎて混乱することが多いけれど,こうやって私が侑ちゃんの疑問を解決するの,
侑ちゃんの安心した顔がみられて好きだよ.また侑ちゃんがなんか悩んでいたら解決してあげるよ.


ありがとう歩夢,また今度学習やそのほかのことで詰まったらまたこうして話し合って解決しよう.こういうのって小さいころからずっとつづいていてやっぱり安心するんだよ.

歩夢
侑ちゃんありがとう!また今度一緒に学習してお互いに理解を深めていこうね!

私からひとこと

温度風平衡は気象の二大平衡である地衡風平衡と静水圧平衡と層厚の公式を組み合わされてできています.(なお静水圧平衡と層厚の公式は同質)地衡風では主人公のジオポテンシャル(気圧に対応)が静水圧平衡で鉛直座標の気圧で偏微分し,状態方程式を使うとあらびっくり,突然温度が出てきます.温度風の主人公は温度になります.ここで地衡風平衡と温度風平衡の式を並べてみましょう.

$$
\vec{u_g} = \frac{1}{f} \hat{k} \times \nabla \Phi
$$

$$
\vec{u_T}' = \frac{R}{fp} \hat{k} \times \nabla T
$$

もしくは

$$
\vec{u_{T}} = \frac{\hat{k}}{f} \times \nabla\phi'
$$

形がそっくり,そして主人公が違う,さらに地衡風と温度風は結び付けられています.地衡風平衡と温度風平衡は静水圧平衡のもとで同類の現象と捉えても差し支えありません.

ダイアローグ:ある夜のこと…

上原歩夢はチャットアプリで高咲侑から次の画像を受け取った.

侑ちゃん
ねぇこれよくわからないけれど

これって等式成り立たなくない?

確かに、私もわからないよ…

今度説明するから少し考えさせて

(2022-08-24 追記)

ダイアローグ:翌日の朝

歩夢
昨日の夜,侑ちゃんが出した質問の答えられたよ.


教えて~

歩夢
今朝,鉛直p速度と鉛直z速度の関係ってこうなっていたことに気づいたの

$$
\omega = \frac{\partial p}{\partial t} + \vec{v_a} \cdot \nabla p - \rho g w
$$

侑ちゃんの図の場合,この風は完全に非地衡風となるんだよ.


どうして?

歩夢
地衡風は気圧傾度力の向きに直交するからなの.でもこの図の風って完全に気圧傾度力の向きと平行じゃない?そうするとこの風って100%非地衡風なの.
上の関係式に当てはめると,非地衡風によって低い気圧が移流されていて移流項は符号に気を付けて

$$
-\vec{v_a} \cdot \nabla p < 0
$$

になるの.そして定常状態を仮定すると

$$
\frac{\partial p}{\partial t}=0
$$

だから 

$$
\omega = 0 = \vec{v_a} \cdot \nabla p - \rho g w
$$

となって十分ありうる結果になるね.


ありがとう,歩夢!

補足:この記事書いているとき私の中にふと浮かんだ疑問です.少し考えたがわかりませんでした.おそらく非地衡風の効果で等式が成立するようになっていると思います.逆に,この式は近似式なのでこの場合に誤差が大きくなって等号が破綻すると考えることができるかもしれません.こちらは今後の学習で解決していきたいと思います.
追記:2022-08-24 鉛直p速度と鉛直z速度の関係を改めて導出した結果うまく説明がつきました.非地衡風による気圧移流の効果を忘れていました…

さいごに

気圧座標系の本心がみえてきましたでしょうか.ところどころ解釈の間違いがあるかもしれませんが,これも途中経過なのでそのままにして,間違いをを訂正したのを別で書きたいと思います.今回触れた気圧座標系の発展として準地衡風方程式系があります.現在,準地衡風方程式系について学習をしています.知識が整理されてきたら途中経過として再びまとめたいと思います.そのときはまたよろしくお願いいたします.

ご精読ありがとうございました!

参考文献:

  • 田中博[著].  地球大気の科学. 初版. 共立出版, 2017. pp120-125

  • ジョナサン E. マーティン[著], 近藤豊, 市橋正生[訳]. 大気力学の基礎 中緯度の総観気象. 初版. 東京大学出版会, 2016. pp79-86 (この教科書をベースにまとめました)

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