【気象怪文書】成層圏突然昇温

成層圏突然昇温とは,各半球の冬季から春にかけて,成層圏の気温が急激に上昇する現象であり,数日間で20K温度が上昇しときには50K上昇することもあり,極大気温で成層圏の夏の気温を超えることさえある.成層圏突然昇温は,対流圏中の波数の小さいロスビー波が成層圏に鉛直伝搬し,砕波することで西向き運動量フラックスと熱フラックスが収束することで,冬季の西風を減速させ,(断熱的な)昇温が発生する.成層圏突然昇温はロスビー波が要因であるため,海陸コントラストや大規模山脈が多い北半球で発生しやすい.今回は北半球冬季における成層圏突然昇温について書こう.

偏西風:
大規模な山脈がある!蛇行するしかない!

ロスビー波:
(蛇行によって形成)かすぅぅぅ!

あるいは...

偏西風:
海陸の地理的境界だ!

ロスビー波:
(渦位による強制)かすぅぅぅ!

などロスビー波は大規模山脈による偏西風の蛇行や海陸コントラスト,そしてここでは挙げていないが熱帯地域での大規模対流活動によっても発生する.

ロスビー波:
さて成層圏に向かいます!

対流圏界面関所:
通れません!!

ロスビー波:

あれ?あれ壁があって上に行けない...

そう対流圏界面では温位の鉛直微分,すなわち安定度が急激に変わる.成層圏では対流圏と比較して温位は高度とともに急激に変化し,安定度が大きい.このためロスビー波の波数に関してロウパスフィルタが圏界面によって行われている.ここでいう波数とは,地球の緯線一周に沿って幾つ波があるかの量であり,明らかに周期境界条件のため波数は0以上の整数をとる.大気の状態によるが,圏界面によるロスビー波のカットオフ波数はおおむね2から3の間.つまり波数が3以上の短波長のロスビー波は圏界面にキャプチャされ成層圏に行くことはできない.一方,2以下の波長の長いロスビー波は圏界面のフィルタを乗り越え成層圏に鉛直伝搬することが許される.先程のロスビー波は残念ながらカットオフ波数より大きいロスビー波であって壁を乗り越えられなかった.しかし,一方のロスビー波に関しては

別のロスビー波:
私は波長が十分に長いから圏界面の壁を超えることは余裕だね!

対流圏界面関所:
どうぞー

ロスビー波:
やっぱりね!では短波長のよわよわロスビー波,じゃあねえー!対流圏にとどまっていてね!

ロスビー波は成層圏に突入した.冬の成層圏は西風場であり,ロスビー波の伝搬を許される.逆に東風となる夏ではロスビー波はそもそも成層圏を伝搬できない.

ロスビー波:
あれ?どんどん振幅が大きくなっている?!このままだと崩れてしまう!!

ロスビー波:
(砕波)

ロスビー波は砕波をした.砕波をすると波の活動度フラックスが収束し,西風平均流に対して東風減速,そして熱フラックスの収束により昇温が発生し,成層圏突然昇温に至る.

砕波したロスビー波に後続した波列があるが...

ロスビー波:
え?待って先に行っていたやつが砕波して背景場が東風になっちゃったよ!

ロスビー波:
ぎゃあ!臨界層がどんどん下がってきている!!

臨界層とは,ロスビー波の位相速度と背景風が一致する自由境界層であり,そこではロスビー波の分散関係式から波数が無限大にならざるを得ず成層圏に達するような大きい振幅のロスビー波は波長を収縮させ振幅が増大し砕波に至る.つまり,ロスビー波にとって死神なのだ!

ロスビー波:
うわあどんどん崩れていく!

連帯責任的に砕波するロスビー波と同時に昇温と西風減速は下方に伝搬していく.そしてそのドミノ倒しは対流圏界面付近で終える.こうして成層圏突然昇温は成層圏に伝搬できた長波長大振幅のロスビー波が砕波することで引き起こされる.

一方,対流圏にとどまった波長の相対的に短い波たちは...

ロスビー波:
成層圏に行けなかったが,振幅が大きい私が1番目立つから圏界面で代表しておくね!

圏界面ロスビー波は,フーリエ和の関係から振幅の大きい波成分が実際の天気図が卓越する波動となる.

ロスビー波:
あれ?振幅デカすぎて自分を保てない!!?

調子に乗った圏界面ロスビー波は振幅を大きくしすぎて非線型効果を目立たたせ自滅しそうになっている

ロスビー波:

(砕波)

???:
コポムゥ! コポムゥ!

ロスビー波が転生してコポムゥ!コポムゥ!鳴いている.彼女はなんだろうか??

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