見出し画像

【ニュースより】男性社員が育休取ったら100万円

某企業が男性社員が育児休業を取ったら100万円を支給するというニュースがあった。

その企業の男性社員の育休取得率(3か月以上の育休)がとても少ないために育休取得率を上げようとしてできた制度であるようだ。

どんなことでもそのカテゴリーの”率”を上げるために「下駄をはかせる」ことはあるのはわかるので、男性社員に積極的に育休を取らせるために作られたであろう制度であることはわかる。

さて、私は社労士なので労働関連諸法令からちょっと考えてみたい。

そもそもこの100万円はどういう位置づけなのだろうか。
給与として支払われるものなのか。それとも慶弔金?

給与だとしたら国から支給される育児休業給付金はその分減額されるので、会社としては払い損ではないだろうか。
社員は育休給付金額は変わらないから損ではないが、100万円もらい損ねるということになる。

慶弔金の扱いだとして、社会通念上相当とされる金額よりはるかに上回るため、税金は徴収されるが、税金はとりあえず置いておいて、慶弔金は特に法律で支払わなければならないわけではないのでもちろん支払う必要はないし、支払うのであればどのような人に、いつ、どのようなときに支払うのか決めるのは会社側の自由で、金額や対象者については会社が(就業規則に)定めればいいことではある。

が。

対象者を性別で分けている(ように見受けられるが)のは良いのだろうか。
性別による労働条件の差別的取り扱いは労基法3条で禁止されているのだが。

労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的な取扱いをしてはならない。

労働基準法第3条

また別の見方から、同一労働同一賃金に反しないだろうか。

厚生労働省が出している同一労働同一賃金のガイドラインに福利厚生についての記述がある。
具体的に慶弔見舞金については触れていないが、福利厚生に関して正社員と待遇差を設けてはならないので、慶弔見舞金についても正社員同様に支払う必要はあると考えるのが妥当ではないか。

同一労働同一賃金については、正規の社員と非正規(パートなどの短時間労働者)の社員との待遇について不合理や差別的な取扱いを禁止しているのであるが、当然、正社員同士でも同じ職務を行っているのに待遇に差があることはあってはならないと考えるのが自然だ。

ここで育児休業を取った”男性”社員(女性社員の配偶者が育休を取った場合も支給するそうだが)のみに100万円を支給するのはこの同一労働同一賃金に反しないと言えるのであろうか。

詳しい支給要件は部外者には知りようがないので、あくまで推測の話ではあるが、ただ「下駄をはかせる」だけが理由なのだとしたら、根拠としてはちょっと弱い気がするな。。。


余談ですが。

ところでこの企業さん、ワークライフバランスについてけっこう法定以上の制度を設けていますね。独自の休暇とかもあるし。
社員一人一人が働き”続けられる”環境を作ろうとしているのは制度からなんとなくわかりました。

追記 2023.06.26
どうやら、同一労働同一賃金に関して私の認識が少し違っていたようなので、こちらに参考として弁護士さんが書かれたnoteを置いておきます。(類推適用をするかしないかの問題ではあるが)

同一労働同一賃金の規定は、「パート・有期・派遣」対「無期雇用・直接雇用」という構図であり、「無期雇用」対「無期雇用」の待遇差は問題としていないのです。

堀田陽平さんのnoteより。下記参照のこと


≪Profile≫伊藤社会保険労務士事務所
東京都社会保険労務士会 所属
特定社会保険労務士 伊藤 綾子
2005年4月 渋谷区にて事務所開設
2011年11月 豊島区に事務所移転
★組織改革支援★組織・人材活性化支援★
伊藤からの質問「どういう組織をつくりたいですか?」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?