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無頼派と媚び るいざ・しゃーろっと様

 文学少年を自負するアレンはとあるサイトで販売されている本に興味を惹かれた。
 その小説の名前は『るいざ・しゃーろっとVR小説作品集 第1巻』というものだ。その本に惹かれたのは、るいざ・しゃーろっとという人物が無頼派を自称しているからである。
 『無頼派』とは、第二次世界大戦後にあった既成の文学に対する批判に基づいた作風の総称だ。もっと詳しくは細分化していくが、詳しく語ると長くなるので代表的な作者だけ羅列すると『太宰治』『織田作之助』『坂口安吾』などがあげられ、それらの作者は一度は誰かが耳にしたことがある作者だとアレンは考えていた。
 さてその無頼派を自称する、るいざという人物の小説はどのようなものか。アレンはワクワクと心を躍らせる。
 しばらく読み進めていくとアレンは徐々に落胆していった。まったく、この人物は無頼派を自称する割にまったく無頼派をわかっていない。
 まず、VRCの世界に媚びている。これが文章からありありと伝わってきたのだ。販売されているアバターの名前をそのまま使用して読者に容姿の想像を文章でさせず画像でさせている。これでは文章である意味がない。ラスクとアバター名を書いて読者に理解させるより、『奔放に跳ねた青い髪とくりくりとした瞳を持った可愛らしい少女』とぐらい書いて欲しいものだ。最低限これぐらいは書いて欲しかった。実に残念である。
 ほかにも様々なものがあったがこれ以降は個人の好みの問題だとアレンは飲み込んだ。何よりアレンが許せなかったのは最初に記述した落胆した理由である『無頼派』を自称している人物が『VRCに媚びている』ということである。
 無頼派は正統とされる文学に反し、俗世間におもねった、洒落や滑稽と趣向を基調とした江戸期の“戯作”の精神を復活させようという論旨である。近年の正統派文学といえばWeb発祥の『なろう小説』と呼ばれるものがあげられるが、るいざの作風はそれに近い作風を感じた。『なろう小説』を正統派文学と定義するのであれば、読者からの感想やPVを求めることなくただただ自分の書きたいものを書くというのが今の無頼派ではないかとアレンは考えた。
 すべての作品を一応読んだが、アレンはあまりにもるいざの作品から無頼派を感じることはなかった。アレンの求める無頼派小説家とは、るいざ・しゃーろっとという人物ではなかったのだ。
 アレンは一通り読んで、落胆しながら本を『済』というフォルダに入れた。

 *無頼派とされていたので作品を読んで意図的に批判的な内容で書いております。本人を攻撃する意図はまったくございません。

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